グローバル系大学特集学部長インタビュー
文理融合は世界の潮流
グローバル社会で活躍する自由度の高い学びとは~獨協大学~
大学Times Vol.54(2024年10月発行)

「語学の獨協」の伝統を誇り、外国語教育に定評のある獨協大学。現在は外国語学部言語文化学科から2007年に独立・設置した国際教養学部言語文化学科が注目されている。リベラルアーツ教育を当初から導入、データサイエンスをはじめとした文理融合の学びを実践し、時代の要請に柔軟に対応する多彩な教育プログラムを展開している。さらに次年度より本格始動する「海外実践プログラム」など同学部の目指す最新のグローバル教育について、二宮哲学部長に話を伺った。

獨協大学 国際教養学部長 二宮 哲(にのみや さとし)
国際教養学部 言語文化学科教授(スペイン語学)
グローバル社会で活躍するための4つの「学びの核」
①英語+1言語の同量学習
国際教養学部は元々外国語学部にあった教養科目を独立させて設置しました。語学教育は英語に加え、中国語・韓国語・スペイン語の中から1言語を選択肢し、複数の言語を同じ時間数をかけて学びます。日本語を含めた3言語を自在にスイッチして使い分ける力を養い、日本と環太平洋地域の文化・社会に関する学際的な知識や技能を身に付けます。
②1年次と4年次に必修の哲学
本学校法人の創設者・西周(にしあまね)は明治時代の哲学者であったことから、学生が哲学を学ぶ伝統があります。哲学を通じて、“大学の学び”の姿勢を身に付けることが目的の一つです。リベラルアーツ教育の特徴でもある“議論を通じた相互理解”をより深めるには、内省や自己の内面を見つめることが重要となるため、入学後の1年次と振り返りの4年次の必修としています。毎年実施する学生アンケートでも「哲学の授業があって良かった」と半数以上が回答を寄せていることから、学生にとっても学びの効果が機能していると分析しています。
③いまを生きる教養を磨く「10研究科目群」
学生は自分の将来やキャリアを見据えて、約300に及ぶ授業科目を自分で組み立てることが可能となります。それは魅力でもある反面、入学時に将来に対する明確なビジョンがないと履修がバラバラになりかねません。そこで本学部では研究科目群として以下を掲げています。
スペイン・ラテンアメリカ研究/中国研究/韓国研究/日本研究/言語教育研究/グローバル社会研究/教育科学研究/人文学研究(2024年度から)/認知・行動科学研究(2024年度から)/データサイエンス研究(2024年度から)
学生は以上の10研究から2つを選択してそこから30単位以上を取り、あとは自由に履修しますので、自由度が高くユニークなバリエーションで学ぶことができます。特に今年度からは人文学研究、認知・行動科学研究(心理学など)、データサイエンス研究が加わり、より学際的な学びが可能となりました。昨今は経済界からも大学教育における文理融合を求めており、その要請にも応えています。学生にとっては卒業後の仕事の可能性が広がり、多彩な将来像を描くことができるでしょう。
④演習(ゼミナール)
1年次より基礎演習、2年次より演習(ゼミナール)が始まります。約30の演習と、10研究科目群を連携してそれぞれの分野を専門的に学び、卒業論文の作成へと繋げていきます。

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海外インターンシップが単位認定に
「海外実践プログラム」スタート
次年度より、2年生を対象とした選択制の新カリキュラムが始まります。「海外実践プログラム」では、外の世界で自分の力を試してみて、その結果を大学に持ち帰る、サイクルとしての学修を可能とするカリキュラムを形成しました。
2つの内容を計画しており、その一つは、海外学習として半年間海外へ行き、身に付けた語学を活かして実際に企業や団体で働くことを、単位として認定するというものです。現在はオーストラリア、ニュージーランド、スペインでの就業先を用意しており、今後は韓国、台湾でも実施する予定です。本カリキュラムはまず、事前学習として海外生活での心構えや語学力レベルの判断、ビジネスの語学教育を行います。スペインでは観光庁事務所や四つ星・五つ星ホテル、街の観光事務所など、オーストラリアとニュージーランドではさまざまな企業でインターンシップを行う予定です。
もう一つはインターネットを利用した海外の大学と共同で行う課題解決型授業「COIL(コイル)」です。英語を使う東南アジアの大学の学生と、共通の問題(環境問題など)を英語で議論します。異言語・異文化の学生たちがどこまで協働できるかのチャレンジです。
海外インターンシップを通じて、これまで大学の授業等で身に付けた知識や教養が、「海外で使える喜び」を学生たちには持ち帰ってほしいと期待しています。学生のうちにビジネスの現場で通用するという、何物にも代え難い体験を通して「語学を勉強して良かった」と強く実感できるでしょう。そしてこのムーブメントは、後輩たちにも繋がっていくと確信しています。昨今の円安から費用面の負担もありますが、本学では新たに留学のための奨学金を拡充するべく、現在調整中です。

プログラミングも“言語”
語学と親和性の高いデータサイエンスの学び
本学では経済学部発・全学部共通の「情報科学教育プログラム」がスタートし、カリキュラムを履修、単位認定した学生には文部科学省の「数理・データサイエンス・AIプログラム」のリテラシーレベル認定のオープンバッジを受けられるようになりました。このプログラムには国際教養学部の先生方が多数取り組んでおり、これまで本学部で実施していたデータサイエンスの履修カリキュラムがシステムとして整った形となりました。就活学生のアピールとしても有用となります。
データサイエンスは生活に組み込まれた文理融合の学問であり、IT・データサイエンス人材は経済界でも広く求められています。実はプログラミングも “言語”ですので、語学の好きな学生がデータサイエンスを学ぶのは親和性が高く、外国語の大学教員にはかねてよりプログラミングに親しんでいる人も少なくありません。大学卒業後にSE(システムエンジニア)として就職した人は、理系・文系に関わらず活躍しています。今やITの知識がグローバル教養であり、大学入試の段階で理系・文系を決める必要もないので、国際教養学部こそ、今の時代にマッチした学び場であることを知っていただきたいです。本学部で語学とデータサイエンスを学んでから、また別の専門分野を学ぶという進路も広がっていくでしょう。なお、本学では2025年度入試より情報科目が必須の「共通テスト利用入試 情報」を新設致しました。
自由度の高い学びから4年間で柱を1本持ってほしい
高校生には、さまざまな興味をそのまま持って本学部へ入学してほしいです。出来ないことに拘るのではなく、語学にプラスして興味のあることを生かしたい学生にはピッタリな学部です。バリアがなく、学びの自由度が高いので、自分の意思を持っている学生は最高の4年間が送れるでしょう。もしも今、興味のあることがあまりないとしても、さまざまな分野の専門知識が豊富な先生方が一人ひとりの適性を鑑みて導きますので、偏った見方にならない教養を身に付けることができる学部です。きっかけが「K-POP」や「スペインサッカー」でもOKです。本学は学生をしっかり指導して育て上げる大学ですので、先生方は是非、本学部への進路を後押ししていただけると幸いです。