【特集】国際性豊かな優秀なパイロットを! 期待される大学の養成課程|大学Times

大学Times Vol.6(2012年9月発行)

【特集】ベテランパイロットの定年退職やLCC(格安航空会社)台頭でパイロットが不足 パイロットの養成に大学が本格的に始動

国際性豊かな優秀なパイロットを! 期待される大学の養成課

競争倍率は300倍以上?!
ANA(全日本空輸(株))自社養成パイロット

日本でエアラインパイロットになる方法は5通りといっていいだろう。(表1)

表1エアラインパイロットになるにはチャート

防衛省出身と株式会社立の航空会社は学校ではないので、ここでは触れないことにする。ANAのパイロット自社養成採用枠も学校ではないが、前項で触れたので、簡単に説明するが、大学を卒業し、採用試験にパスしたら、まず地上勤務を1・2年経験した後、2年以上の学科および実地訓練を受けて副操縦士になるというコースである。高い授業料を払わないどころか、給料をもらって訓練してもらえるのが大きな利点だ。ANAの採用担当者に伺ったところ、4年制大学卒業であれば、理系、文系は問わないとのこと。身体や能力面でもさほど高いハードルは設けていないそうだが、昨年の倍率は300倍以上であるなら、合格はかなり難しいといっていいだろう。

学費は安いが、2年制の学卒以上が要件
【航空大学校】

次は、最もポピュラーなルートである航空大学校だ。この学校は国土交通省管轄の独立行政法人立であり、国からの援助が出ているため、学費は大変安く抑えられている(年間1,268,680円〜1,318,680円 他寮費別途)。

しかし、入学資格が短期大学卒、または専門学校卒、または大学教養課程(2年)修得以上と定められているため、その分の学費はかかる。

航空大学校は大学ではないので、学士としての資格は取れないため、大学を卒業してから入学する学生も多くいる。宮崎と帯広、仙台の3つの場所で訓練を受ける。全寮制で、訓練期間は2年。募集人数は72名だが、訓練機の数量の都合上、入学者を5月、8月、11月、翌2月の4回に分けて入学する。

ここ数年で、業界で注目を浴びているのが、大学のパイロット養成課程だ。現在、東海大学、桜美林大学、法政大学、崇城大学、千葉科学大学の5校が設置している。なかでも、航空会社に卒業生を送る実績を上げている2校を取り上げた。

コミュニケーション力と英語力のあるパイロットを養成
【桜美林大学】

桜美林大学 宮崎 邦夫教授

東京の町田市にある桜美林大学が、他のパイロット養成課程を持つ大学と大きく違うのは、他の大学では工学部系に設置されたコースであるのに対し、文系のビジネスマネジメント学群の中のコースであることだ。もともと、語学教育に力を入れている当学はキャビンアテンダント等を多く輩出し、航空会社とはつながりがあり、航空業界の発展に貢献できる人材の育成を目標に、2008年にフライトオペレーションコースが設置された。

このコースの大きな特徴は、2年次の秋学期から4年次春学期末までの約2年間ニュージーランドへ渡航し、パイロットライセンスを取得してくることだ。しかしながら、学費は実質約605万円、更に全寮制のため、寮費、ニュージーランドへの渡航費、飛行訓練費、現地での寮費、その他諸々はかかるだろう。しっかりしたカリキュラムの中で、学士としての教養とエアラインパイロットの資格を修得でき、さらに、ニュージーランドでの厳しくも充実した訓練生活を送れる。また、4年次春にはニュージーランドと日本のパイロットライセンス、さらに大学の卒業単位まで修得できるため、就職試験に慌てずに備えられるそうだ。

今年初めての卒業者は全員がライセンスを取得、7割以上がエアラインへの就職を果たしたという。もちろん、パイロット希望で入学したが、残念ながら適性がなかった場合もある。渡航するための英語力TOEFL525点以上の点数が取れなかった場合やニュージーランドへの渡航後の訓練において空中感覚やとっさの時の冷静な判断力の欠如と判断されてしまった時だ。その場合は本人の意思を尊重し、他学群などへの転学なども可能である。

「これからの時代、JALやANAなどの大手に就職するばかりではなく、LCCや海外の航空会社からの抜擢で、能力を活かした働き方もあります。その場合、必要なのが高い英語力とコミュニケーション能力です。わが校はその力をしっかりつける教育を誇っています」と桜美林大学の宮崎教授の談である。

ANAの全面協力のもと就職実績を誇る
【東海大学】

東海大学 利根川 豊教授

東海大学も桜美林大学と同様に海外へ留学して、ライセンスを取得するカリキュラムを組んでいる。大きく違う点は、米・ノースダコタ大学(UND)への留学が約15ヶ月であること、また、日本では全寮制ではないということだ。15ヶ月で短くないのかとの質問に、「UNDが、現地の学生に行なっている正規のパイロットライセンスを取るためのカリキュラム(12ヶ月)に則って行なっているので、決して無理はありません。後の3ヶ月で日本の事業用操縦士、計器飛行証明の免許を取得できます。」というのが利根川教授の説明である。

学生手作りのシミュレーションシステム(東海大学)

飛行訓練も大変であるが、その前の学科のハードさも半端ではない。月曜から金曜まで1限から4限までびっちりと詰まったカリキュラム。土曜や夏休みなども夜遅くまで資格試験の対策に取り組んでいる。普通の大学生の生活では考えられない厳しさだ。しかし、仲間との厚いスクラムにより、試練を乗り越えていく。東海大学のパイロット養成課程は、私大では先駆者であり、提携のANAを始め、多くの航空会社からの信頼を得ている。
学費は実質約574万円、留学訓練費を入れて、1,200万円程度とのことだ。

「パイロットは特殊な人がなるものではありません。空を飛びたい、飛行機を操縦したいという熱い気持ちがある人は是非、飛び込んできてください。」と利根川教授は語る。

大学の養成コースは企業にとって、自社養成パイロットのように養成費がかからず、また航空大学校より実質2年早く卒業して入社するため、即戦力として期待されているようだ。学費面での負担は他学科に比べ、大きいと思われるが、将来性を考えれば決して高いとはいえないのではないだろうか。

各校、奨学金制度も充実しているそうだ。興味のある学生は進んで問い合わせてみてほしい。