【特集】薬学部の現在と未来 調剤薬局、製薬メーカー及び大学に聞く薬学部6年制初の卒業生 その期待度と採用状況|大学Times

【特集】薬学部の現在と未来 調剤薬局、製薬メーカー及び大学に聞く
薬学部6年制初の卒業生 その期待度と採用状況

平成18年度より薬剤師国家試験受験資格が大学6年制の薬剤師養成課程を修了した者に与えられることになり、多くの大学が薬学部を4年制から6年制へと移行した。6年制移行前後の薬学部総定員数を比較してみると、移行後の定員はおよそ13,000人(移行前の約1.4倍)。その結果、新卒薬剤師の供給過多(就職率低下)、大学間の競争による淘汰・定員充足を起因とする質の低下につながると懸念されてきた。しかし、薬剤師の主な就職先である、調剤薬局、製薬メーカーの今年度の新卒者採用状況はその予測と反し、“新卒薬剤師はいまだ引く手あまた"というのが現状のようだ。

本特集では、調剤薬局大手「日本調剤」、外資系製薬メーカー「ノバルティスファーマ」の人事・採用・教育担当者にインタビューし、平成23年度の採用状況や6年制となった薬学部に期待することなどについて話を伺った。また、大学側の視点・取り組みとして「星薬科大学」からもコメントをいただいた。

全国の薬剤師数の推移と各従業者の割合

調剤薬局業界の動向 日本調剤株式会社 人事部部長岩元樹氏 調剤薬局業界の薬剤師需要は増加傾向今後10年間は薬剤師の売り手市場が続く

― 今年の新卒者の採用状況について教えてください

岩元:弊社では今年250名の薬剤師を募集しました。しかし、近年の薬剤師不足を受け、実際には募集を下回る人数しか確保できていないのが現状です(2011年9月時点)。

ここ数年で薬科大学や薬学部を新設する大学が増え、薬学部を設置している大学の数は、以前は46校でしたが現在は74校にまで増えています。在籍する学生数は9,300人程度となります。この薬科大学・薬学部の増加により、「薬剤師は余る」と予想されていましたが、現状ではそのようなことは全く見られません。調剤薬局業界は今後、大手の参入や吸収合併などにより、薬局の軒数が減少することも考えられます。しかし、出産・退職などによる薬剤師不足(薬剤師の6〜7割は女性)など、様々な要因を考慮に入れた結果、「今後10年間は薬剤師不足が続くのではないか」というのが私の見解です。

薬剤師の主な就職先として、病院、製薬メーカー、調剤薬局などがありますが、薬局を就職先に選ぶ新卒者は3〜4割程度。この2年間は新卒の薬剤師がいなかったため、地域差もありますが、薬剤師は不足気味でした。病院や製薬メーカーなどでは、薬剤師の中途採用を増やしたところもあったようで、今年に関して言えば、新卒の薬剤師は売り手市場と考えられます。

日本調剤株式会社 薬剤本部 教育情報部 次長・薬剤師 弓削吏司氏

― 新卒の薬剤師がいなかった2年間は、御社ではどのような対応をされましたか?

弓削:弊社は全国で調剤薬局を展開しているため、薬剤師の確保が必要不可欠です。この2年間においても、新規に薬局を出店し続けていたことから、中途採用などで対応していました。しかし、地域によっては薬剤師が不足しているという状況にあります。会社説明会などでよく耳にするのですが、調剤薬局は「薬局で調剤するだけ」というイメージがあるようで、新卒者にあまり魅力を感じてもらえないことがあります。しかし、弊社の場合、ある一定のエリアの調剤薬局を統括しマネジメントするセクションや店舗を立ち上げる際にも薬剤師が携わることがあり、薬剤師の業務は多岐にわたります。さらに、老人ホームと契約し高齢者へ配薬する院外処方箋の調剤管理業務を展開していたり、今年1月には在宅医療にも本格参入しました。日本調剤池尻大橋薬局に無菌調剤室(クリーンルーム)を設置。従来の調剤薬局やドラッグストアでは扱うことができなかった、注射製剤などを調剤できる施設として稼働しています。

― 薬学部が6年制になったことで、御社ではどのようなことに期待をされていますか?

岩元:これまでの4年制卒業者では、実際に就職して現場に出てから、流通している薬の名前について覚えることになり、研修や現場などで薬についての指導をしなければならない状況でした。しかし、6年制では在学中2ヶ月半におよぶ薬局実習があるため、流通している主な薬品の名前について既に理解していることが多く、現場で即戦力として活躍できる人材を確保できるようになったと思います。

― 6年制初の薬剤師国家試験は、問題数が多くなり、広範囲の出題や足きりもあるなどの情報がございますが、御社での採用に影響はありますか?

岩元:これまでの経験からの数字ですが、12月に150名の内定を出したとしますと、薬剤師国家試験に合格できなかったなどの理由で内定を辞退された方は、最終的に約20〜30人ほどでした。ですが今年に限っては、薬剤師国家試験の合格率が予想できないため、最終的な入社者数の想定が難しい状況です。

さらに、従来の内定時期は、製薬会社が秋から1・2月、我々のような薬局やドラッグストアは4〜5月、病院が9〜12月という順番でした。しかし、来年度から企業の倫理憲章により、就職活動の開始時期が2ヶ月後ろ倒しになるため、製薬会社の内定時期が変わってくる可能性があります。

― 御社ではジェネリック医薬品の取り扱いをはじめ「医薬分業」にも力を入れていますが、どのような薬剤師を求めていますか?

弓削:ジェネリック医薬品の提供は広い意味での「医薬分業」に繋がると言えます。医薬分業は、処方箋を元に薬剤師と医師とで、安全性を確認(ダブルチェック)した薬を提供できる利点があります。そこで薬剤師は、ジェネリック医薬品に対する豊富な知識を持ち、医師と相談しながら先発医薬品をジェネリック医薬品へと変換するコミュニケーション能力が必要になります。

「医師に疑義照会してもいいのか?」とよく聞かれますが、疑義照会は薬剤師の当然の業務です。また、ジェネリック医薬品の使用に否定的な医師がいるのも事実ですが、ジェネリック医薬品への代替を提案することで、許可してもらえるケースもあります。薬の安全性の確認は勿論ですが、薬代を安価に抑えたいという患者さんの要望に応えるために、医師や病院側に積極的にアプローチするのも薬剤師の務めです。

6年制になったことで学ぶことができるようになった、医薬品、医療の基礎知識、加えて実習を通して身につくコミュニケーション能力は、薬剤師として働く際の大きな強みになるでしょう。6年制の新卒者は、是非その知識・経験を活かしていただきたい。そして、新しい視点を発揮しながら業務を行っていただける人材としても大いに期待しています。

用語解説

無菌調剤室(クリーンルーム)
主に自宅療養している患者に対して、抗がん剤などの輸液療法のための注射薬の調剤を行う設備。

ジェネリック医薬品
後発医薬品とも呼ばれ、新薬(先発医薬品)の特許が切れた後に販売される、先発医薬品と同じ有効成分、効能・効果を持った医薬品のこと。

疑義照会
医師の出した処方箋に疑問がある場合、薬剤師が医師に確認を行うこと。

MR
メディカル・リプレゼンタティブ(Medical Representative)の呼称。日本語では医薬情報担当者。主に医薬品メーカーにおいて、医薬品の安全性や品質などに関するデータを収集することが主な業務。

CRO
受託臨床試験機関(Contract Research Organization)。主に製薬会社が新薬を制作する際に業務を委託する外部機関。

SMO
治験施設支援機関(Site Management Organization)。医療機関と契約し、治験業務を代行・支援する。