【特集】小論文・志望理由書作成指導へのアドバイス(第1回/全3回連載)|大学Times

【特集】小論文・志望理由書作成指導へのアドバイス(第1回/全3回連載)
『頭がいい人、悪い人の話し方』の著者でも知られる、小論文指導の第一人者・樋口裕一先生から小論文・志望理由書作成指導のアドバイスをいただきました。今号は連載の2回目です。
多摩大学経営情報学部教授 樋口裕一

小論文作成の実技指導

前回説明した「型」を用いて書けば、とりあえず形式は整う。 だが、言うまでもなく、それだけでは高レベルな小論文にはならない。 もっと気をつけなければならないことがある。 今回はそれについて解説しよう。

1 小論文作成上のNG集

①道徳やきれいごとに逃げてはならない
「思いやりが大切」「愛情を持つべきだ」というような道徳的な文章は、「良い子の作文」でしかない。小論文というのは、ある現象を分析し、その背景を探るものであって、道徳的なことを書く場ではない。

②感情的になってはならない
「許せない」「かわいそう」「すばらしい」など感情的なことを書くべきではない。あくまでも冷静の論じることを忘れずに。

③弁解・言い訳をしてはいけない
「これまで考えたことはなかったが・・・」「私には言う資格はないが・・・」「よくわからないが・・・」などと書くべきではない。たとえ、これまで一度も考えたことのない問題でも、まるでずっと考えていたかのように書くのが小論文のルールだ。

④お手紙調・エッセイ調・テレビの投書風の文体はいけない
小論文はあくまでも「よそゆき」の文体、つまり新聞のような文体で書かなければいけない。流行語や略語、?や!などの記号は原則として使わない。

⑤決めつけるのでなく、裏付けを示す
決めつけるのではなく、なぜそう考えたのか、説明を加える必要がある。「環境が破壊されている」と書いたら、どのように破壊されているのかを字数に応じて書く必要がある。「日本の教育は画一的だ」と書いたら、どのような点でそうなのかを説明するのが原則。そうしてはじめて、説得力が生まれる。

⑥羅列しないで、一つか二つに絞って詳しく説明する
800字程度の小論文なのに、「私は、・・・に賛成だ。その理由は、第一に・・・。第二に・・・。そして・・・。また…。最後に・・・」というように、問題点や理由をいくつも並べてしまう文章を書く人が多い。だが、それでは説得力がない。欲張らずに、一つか二つの事柄に絞って詳しく説明するほうが読んでいる人は納得する。

⑦「です・ます」調と「だ・である」調を混ぜてはいけない
原則として、小論文は「だ・である」を使う。「です・ます」では、どうしても浅い感想文になってしまう。

⑧長すぎる文は書いてはいけない
一文が六十字を越すときは要注意。一文が長いと、どうしてもだらだらした文になるし、場合によっては文法的な係り結びがおかしくなったりする。

2 原稿用紙の使い方

原稿用紙も勝手に書けばよいというものではなく、いくつか決まりがある。

①文字は楷書で書く
必ず楷書(学校で習った文字)で書いて、草書などのくずし字は避ける。

②書き出しと段落の初めは必ずひとマスあける
二百字以下の要約問題など、「文章」とみなされない文では、段落分けの必要もないし、最初のマス目を開ける必要はないが、二百字以上の文章の場合、たとえ要約問題でも、書き出しと段落の初めは、必ず一マスあける。それをあけないと、原稿用紙の書き方の基礎も知らないと見なされてしまう。

③ひとマスに原則として1字を埋める
句読点(。、)や括弧類も1マス分をとる。

④行の最初に句読点や閉じ括弧をつけない
句読点(、。)や閉じ括弧(」)が行の最初にくるときは、前の行のマス目の下に加える。この規則を知らない人が多いので注意。

⑤制限字数は絶対厳守
小論文試験では、字数は厳密に守らなければならない。「千字以内」とあれば、必ず千字以内に書く。ただ、無理に千字書かなくても、八十パーセント以上書いていれば許容範囲。「千字程度」という場合には、プラス・マイナス十パーセントが望ましいが、二十パーセント程度は許容範囲。なお、「OO字」というときには、ごく特殊な場合を除いて、句読点や括弧、それに段落変えによって生じた空白も字数に加える。

3 メモのとり方

課題を出されたら、すぐに文章を書きはじめる人がいる。だが、それで優れた小論文が書けるはずがない。実際に書きはじめる前に、しっかりとメモを取ってこそ、深くて論理的な文章になる。試験時間から書くのに必要な時間を引いた残りの時間のほとんどをメモに費やすべきだ。ふつうの人が400字を下書きなしで書くのに30分ほどかかるので、試験時間90分、制限字数800字だとすると、30分間メモを取って、そのあと60分で文章作成するのが標準だ。

①まずはイエス・ノーの形に
前回説明したように、イエスかノーかを問う問題提起を作って、それを論じると論理的でまとまりのある小論文になる。たとえ、設問が、「○○について」「○○はなぜか」となっていても、「□□は正しいか」「□□は望ましいか」などといったイエスかノーかを聞く形式の設問に変えてしまう。課題文やデータについて論じるよう求められている場合も、その課題文やデータから得られる何かの指摘や主張に対してイエスかノーかを答える。

②イエス・ノーの両方の立場から考える
何について論じるか決まったら、次に考えを深める。本やネットで調べることができる場合には、両方の側の意見を探してみる。
たとえイエスかノーかの態度が決まっていても、すぐにその立場からだけ考えずに、反対意見も十分に考えてメモをとることが大事だ。これが、小論文を説得力あるものにする秘訣といってもいい。 ⇒下記の問題提起の3原則参照

③構成する
メモをながめながら、イエス・ノーのどちらの立場で書くかを考える。「理由・根拠」で作った表を見て、説得力のありそうな方を選ぶと良い。イエス・ノーの根拠のなかでもっとも説得力のあるものを原則として1つ選んで、それを第3部の「展開」に書くように全体を構成する。そして、次に、そうやって作った問題提起と展開の橋渡しをうまくする。そのためには、反対意見をうまく利用して、「確かに・・・・だ。しかし、・・・」というパターンを作るのがコツだ。そして、それぞれの段落で書くことを箇条書きにする。実際に書くときには、それに説明や具体例を加えて肉づけしていく。
実際の試験では、下書きをすると時間不足になることが多いので、ふだんから下書きをしないまま書く練習をしておく必要がある。

問題提起の3原則

【プロフィール】

樋口裕一(ひぐちゆういち)

1951年、大分県生まれ。多摩大学経営情報学部教授。通信添削による小学生から社会人までの作文・小論文の専門塾「白藍塾」塾長。2004年刊行の「頭がいい人、悪い人の話し方」(PHP新書)が250万部を超える大ベストセラーに。そのほか 「ホンモノの文章力」(集英社新書)、「読むだけ小論文」(学研)など著書多数。