【学生寮特集】住居費が断然安い。それだけにとどまらない!最近の学生寮を選択する“付加価値”を探る。|大学Times

大学Times Vol.26(2017年10月発行)

【学生寮特集】住居費が断然安い。それだけにとどまらない!最近の学生寮を選択する“付加価値”を探る

保護者にとって地元から離れ、別の地域の大学へ進学となると、大学への学納金に加え、住居に充てる費用の捻出は大変な負担である。特に都市部の大学となると物価も高く、家賃の相場も必然的に高くなる。そこで選択肢のひとつに上がるのが、大学の学生寮。親世代の認識は学生寮というと、住居費は安いが「プライベートがない共同生活」「規則が厳しい」といったイメージがあるが、現在の学生寮はどのように進化しているのだろうか。また、賃貸アパートと比べ、どのようなメリットがあるのかを検証してみたい。

自宅外の大学生の平均家賃は5万6,662円
公立大学の寮費は4,700円?!

まず、最近の大学生の住宅事情について調べてみた。全国大学生活協同組合連合会による全国の国公立および私立大学30大学の学部生10,155名を対象にした「第52回学生生活実態調査(2016年度)」によると自宅生は4,616名(45.5%)、自宅外生は5,539名(54.6%)で自宅外生がやや多いが大差はないようだ。また、自宅外生のうち寮住いは317名(5.7%)、アパートが3,153名(56.9%)、マンションが1,659名(29.9%)、学生会館が153名(2.7%)、その他191名(3.4%)である(表1)。自宅外生のうち87%近くが民間のアパートやマンションに住んでいることがわかる。

では、東京・首都圏の大学生の平均家賃はいくらぐらいだろうか。統計では(表2)一番多いのが5万円台(34.6%)、次いで、6万円台(34.3%)、3番目は4万円台(21.8%)で、全体の平均家賃は5万6,662円となり、前年度と比較しても134円高いようだ。

表1

ここ数年は物価の変動は少ないとはいえ、都心の家賃負担は上がっている。賃料を5万円とするとそれ以外の食費、光熱費、電話代、交通費、教養娯楽費等を含むと11万5,000円余になる。2016年度の仕送りの平均額が7万610円なので、アルバイトや奨学金で埋めても生活はぎりぎりということになる。(全国大学生活協同組合連合会2016)

表2

「狭い」「質素」「厳しい」から
自由で楽しいをコンセプトにした学生寮へ

そこで学生寮の形態によって異なる住居費を比較してみた(表3)。ひとくちに学生寮といっても、国公立大学、私立大学が設立・運営しているもの、大学が企業に委託して運営しているもの、また、企業や民間団体が学生向けに広く募集している学生会館とさまざまな形態がある。

寮の設備、個室か相部屋か、食事の有無、光熱費やインターネット契約料金を含むか否か、など条件がそれぞれ違うため、一概に比較はできないが、大学直営の特に国公立の大学の学生寮は安価といえるだろう。

表3

一昔前までは、学生寮というと「安くて質素」「部屋が狭くて古い」「門限や規則が厳しい」などのイメージがあったが、現代の大学生のニーズやライフスタイルに合わせ、様変わりしている。個室の学生寮が増えており、トイレやシャワールームも部屋に完備しているところもある。また、門限を設けておらず、限りなく民間のワンルームマンションに近い学生寮もあるようだ。

最近、若者の間でシェアハウスといって一軒の家を数人で借り、キッチン、風呂、トイレを共有し、リビングを交流の場として使用するというライフスタイルが流行している。学生寮はまさにその原点ではないだろうか。一人暮らしではあるが、独りの寂しさはないということである。

学生寮と賃貸住宅との違いは?
生活の乱れが少ないというメリットも

では、具体的に学生寮のメリットを挙げてみてみよう。

①生活費を安くあげられる
上記に述べたように、総合的に民間の賃貸住宅と比べ、格段に生活費を安く抑えることができる。ベッドや机、椅子、クローゼットが備え付けの寮は多い。冷蔵庫やコンロが付いている寮もあり、賃料だけでなく初期費用も抑えられる。

②病気のとき頼れる人がいる
病気をしたときに、寮長(館長)、同寮の友人が気遣ってくれる。

③宅配便を受け取ってもらえる
宅配ボックスがあるマンションなら問題はないが、一人暮らしにとって宅配便の受け取りには不便を感じるもの。寮なら管理人や寮長(館長)などが預かってくれる。

④友だちを作りやすい
初めての一人暮らしはいろいろと不安。隣に誰が住んでいるかわからない賃貸住宅と違い、相部屋の学生や先輩など学生同士の交流があり、友だちは作りやすいだろう。寮によっては、新入生歓迎会や季節のパーティ、DVD上映会、スポーツ大会などのイベントを開催するところもある。

⑤セキュリティが高い
最近の学生寮はオートロック、カードキー、監視カメラなどを設置し、セキュリティは高い。女子寮は管理人を常駐させているので、保護者も安心である。

また、以前と比べ自由度が増したとはいえ、学生寮には団体の規律などがあり、アパートの一人暮らしに比べ、生活の乱れは少ないだろう。その点でも保護者にとって安心度は高い。

学生寮は人格形成と教育の場
注目される国際寮の“付加価値”

ここまでは、学生寮の表から見えるメリットであったが、本来大学が学生寮を設けている背景には、教育の場としての意義を持っている。寮生活を通じて各人が協調性や自立心を養い、寮生同士が深い友情を築き、お互い切磋琢磨し、より良い刺激を受けることにより人格形成に大きく関わってくるからである。

特に今注目されているのが、留学生を受け入れる国際寮の存在だ。国際寮は、日本全国、世界各地から集まった多様な価値観を持つ国際色豊かな学生たちが、共に学び、生活することにより、相互理解を深め、グローバル社会で活躍するために必要なコミュニケーション能力等を涵養するとともに、幅広い人間関係を形成することが期待されている。

全国大学生活協同組合連合会の調査結果では、純粋な大学の学生寮の利用者は昭和45年当時、9.2%とおよそ10人に1人くらいであったが、その後ワンルームマンションの普及につれ、平成24年には2.6%にまで減少。しかし、ここ数年大学側は教育の場としての学生寮の意味を再認識し、少しずつではあるが増加傾向にある。

しかしながら、まだまだ学生数から見れば、学生寮の数は少ない。また、それほど厳しいわけではないというが、入寮の審査もある。合格後、資料を集め、しっかり検討したいところではあるが、寮の申込締め切りは意外と早く、国公立大学では入試日前に締め切りというところもある。入寮希望者は、受験前からしっかり調べておく必要がありそうだ。

自主性を重んじた生活スタイル
グローバル環境と快適な学びの環境を提供
〜東京農工大学〜

檜寮の全景

「学生に良好な居住及び勉学の環境を提供するとともに、共同生活を通じて充実した学生生活を資することを目的」とした東京農工大学の学生寮は、昭和41年に設置された。現在、小金井と府中の両キャンパスに隣接した学生寮は男子375名、女子102名を受け入れ可能である。

平成28年、4つ目の寮となる檜寮が府中キャンパス隣接地に完成。居室はすべて個室。東京農工大学は夜間まで研究に勤しむ学生が多いため門限を設けず、自主性を重んじたスタイルをとっている。
また、この学生寮は留学生も多く、グローバルな交流も期待でき、コミュニケーションを楽しめるだろう。

檜寮のチェックポイント

リベラルアーツを学び実践する教育の場
〜国際基督教大学(ICU)〜

国際基督教大学(ICU)

ICUの学生寮は自然豊かな緑に囲まれたキャンパス内にあり、今年4月に開寮した2棟を含め、10棟設置されている。ここでは全学生の30%以上にあたる約900名が生活している。これほどの多くの生が寮を希望するのは、住居費が安いという理由だけではなさそうだ。それが証拠に自宅が通学可能な立地にあっても、敢えて寮を選ぶ学生がいるということである。ICUの学生寮の魅力を探ってみた。

ICUの学生寮の特色

●世界で必要とされる素養が身につ
ICUの学生寮は育った環境、年齢、性格、考え方、さらには言語、文化、宗教も異なる留学生と日本人学生が共に暮らす『教育寮』。お互いの違いを認め合い、協力してさまざまな問題の解決を試みる経験は、大きな成長となる。

●一生涯の仲間と出会える
さまざまな価値観を持つ、国内外からの学生との4年間に及ぶ共同生活の中で、共に学び、苦楽を分かち合う先輩や友人たちとの交流は一生の宝となるだろう。

●寮運営は学生が主体
各寮もしくはフロアの定員は30人〜40人程度。寮のルールは寮生内での十分な議論のもとに大学側と協議を行い、決定する。

●教室・図書館まで徒歩3分
すべての寮がキャンパス内にあり、教室や図書館を始めとする大学施設を存分に活用できる。

●満足度の高い寮生活
入寮した多くの学生は、途中で退寮することなく、卒業まで充実した寮生活を送る。各寮では定期的に寮の同窓会が開催され、多くの卒業生も集まってくる。

―Message―

国際基督教大学(ICU)

―大学近辺には、学生向けアパートやマンションが多くあると思いますが、なぜ学生寮を選ばれたのですか?
私は福岡県出身で初めての東京暮らしで不安もあり、学生寮なら安心ということと、経済的に負担が少ないという点から選びました。

―学生寮というと規則や制約が厳しいという印象がありますが、どうですか。また、知らない人と同室になるということに不安はありませんでしたか?
2人部屋だったので、最初はプライベートがなくなるのではという不安はありました。でも自分のスペースは守られる広さで、窮屈な印象はありませんでした。また、規則といっても社会生活では当たり前のことなので、厳しいという印象はありません。

―学生寮の良い点はどんなことですか。
寮内は学年も違い、興味・関心や学んでいる分野もそれぞれ違いますが、試験のことや自分一人では解決できなかった分野のこともみんなで情報を共有できます。また、私は高校時代まであまり社交的ではありませんでしたが、寮生活を経験することで、さまざまな人と会話をする機会を持つことができ、積極的にコミュニケーションをとることができるようになったと思います。また、ICUは留学生や帰国子女の学生も多いため、互いにさまざまな文化や習慣を理解することで貴重な体験となるはずです。

キャンパス内に2タイプの学寮を完備。安心で快適な学生生活を
〜東京女子大学〜

東京女子大学

東京女子大学では、親元を離れて学ぶ学生のために、キャンパス内に2つの寮を完備している。同大の学寮は単なる宿舎ではなく、共同生活を通して人間形成ができる教育寮としておかれている。それぞれの寮では寮監が寮生と起居を共にして、助言を与えている。

楓寮は1984年より伝統を引き継ぐ1人部屋の寮。1人部屋ではあるが、一人暮らしとは異なり、寮生委員会が中心となって寮生が協力し合い、共同生活を運営している。

また、桜寮は2018年に創立100周年を記念する事業の一環として2016年4月に開寮。
留学生を積極的に受け入れ、日本人学生と共同生活を行う中で日常的な国際交流が行われる場となることが期待されている。最新設備を整えた新しい学寮である。

東京女子大学