大学Times Vol.25(2017年7月発行)
国際化に対応した能力を持った人材が年々、求められるようになっている現代社会。大学ではそれを見すえ、学生たちにどんな理念でどのような教育を行っているのか。秋田の地から世界へと国際教養教育を発信している国際教養大学の鈴木典比古学長が語ってくれた、国際教養に関するお話をここに載せる。
本学が各方面から高い評価を受けている国際教養教育は、いま全世界の大学が目指している21世紀の潮流といえます。そもそも「教養(リベラルアーツ)」とは、古代ギリシャの教育原理である「自由な人間になるための全人的技芸‐アルテス・リベラーレス(artes liberales)の修得」が起源です。それから2500年を経た今日、世界の教育界は再び教養教育、それも「国際教養(インタナショナル・リベラルアーツ)」を指向しています。
これから到来が予想されるグローバル知識基盤社会は、知力・体力・倫理観等全てにおいて優れた人材を必要としています。「グローバル社会で活躍できるような、多様な能力を持った人間を創造するために、これまでの自分を形作ってきた価値観や慣習からいったん自分を自由にし(liberate)、その上で新しい自分を自分で創っていくための学びや技芸(arts)を全人教育する」これこそが本学の国際教養教育?インタナショナル・リベラルアーツです。国際教養大学の設立理念は、国際教養を学生に授け、グローバル社会で活躍する人材に育てることであり、本学は日本における国際教養教育の先頭に立つ大学だと自負しています。
また、グローバル時代においては「自分の居る場所が世界の中心」となっていきます。なぜなら情報・通信技術(Infomation and Communication Technology)によって、人間一人ひとりはパソコンやスマートフォンなどの電子機器に触れることで70億人と瞬時につながり、互いにメッセージを交換することが可能であり、世界のどこにいても「個人対全世界」という原理的構図が現出されているからです。本学の卒業生達はまさにこの原理的構造が指し示すように、「個」を確立してこの秋田の地から飛び立ち、グローバルに活躍しています。さらに、秋田の地を地球の中心として地元で活躍する人材も現れています。
では自分の「個」とは何でしょう。自分とは何者なのでしょう。どのような人生を歩みたいのでしょう。問いは尽きませんが、自分に対するこのような絶え間ない問いとその答えの発見と自己実現への努力が、実は「個」の確立の過程そのものなのです。本学の学生は、多くの先輩達が既に成しとげてきたように、厳しい学問と格闘し、教員や仲間との討論、海外留学等を経験しながら自分というものを知り、グローバル社会における知的な土台?国際教養を築きます。つまり、「個」を確立するのです。
本学は2014年4月に開学10周年を迎えました。これまで御支援いただきました多くの皆様に感謝申し上げるとともに、本学を創設段階から陣頭指揮し、今日ある国際教養大学を築き上げた初代理事長・学長である故・中嶋嶺雄先生の功績に敬意を表するものであります。今後は、2014年9月に採用された「スーパーグローバル大学創世支援事業」による新たな取り組みなどに挑戦し、我が国のグローバル人材育成を牽引する大学として、また、地域社会に貢献する大学としてさらに発展できるよう、たゆまぬ努力を重ねてまいります。