看護・医療系大学特集教員インタビュー
2027年春・新キャンパスを舞台に医療人としての確かなスキルとコミュニケーション能力を培う~昭和医科大学~

大学Times Vol.59(2026年4月発行)

近年、臨床の現場で重要視されている「チーム医療」。昭和医科大学はその理念にいち早く着目し、医系総合大学としてチーム医療に根差した専門教育をリードしてきた。特に富士吉田キャンパスでの「1年次全寮教育制度」は、医療の各専門職が協力して、患者を回復へ導くための知識・技能・態度を培う基盤形成の場として知られている。2028年の創立100周年に先駆けて昨年は校名を改め、来年春には現在の東京・横浜2キャンパス4学部が一堂に学ぶ「鷺沼キャンパス」(川崎市)への移転を控えている。同大学の教育展望について、保健医療学部の各担当教員に伺った。

昭和医科大学 保健医療学部
保健医療学教育学・保健医療学教育推進室長 加茂野 有徳准教授(写真左)
リハビリテーション学科 理学療法学専攻 黒山 祐貴講師(写真左から2人目)
看護学科 田村 由衣講師(写真右から2人目)
リハビリテーション学科 作業療法学専攻 作田 浩行教授(写真右)

“医療現場に近い”ワンキャンパスへ進化
学生にチーム医療の意識醸成を促す

加茂野 「2027年春に移転する鷺沼キャンパスのコンセプトの一つは、限りなく病院の臨床現場に近い学修環境を提供することです。医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の学生が一堂に学ぶワンキャンパスとなり、他学部の様子なども体感的に分かるような構造を目指しています。1年次に4学部の学生全員が富士吉田キャンパスで寝食を共にしてチーム医療の素地を養うための教育を受けても、2年次以降は東京・旗の台(医歯薬)と横浜(保健医療)キャンパスに分かれましたので、来年からは学生一人ひとりに“チーム医療の意識”が今より育まれると期待しています。1年次の保健医療学部では解剖生理学、専門職の概論科目、さらには実習室を整備して実技演習の科目の充実を図ります。卒業時に身につけるべき能力(ディプロマ・ポリシー)へ向けて、1年生から4年生まで途切れなく学び続けることを狙いとしています」

新しい環境での教育体制をアップデートし
少人数教育の良さは堅持したい

田村 「新キャンパスの看護学科の実習室は現行より小さめになるので、学生一人ひとりに目が届くメリットを最大限活かしたいと考えています。たとえば演習中の説明やデモンストレーションを皆が見えるよう、新たにモニターを設置することも検討しています。演習は視認性が大事なので、カーテンに囲われたベッドサイドでのグループディスカッションでも、新たなツールを学生が活用することで、学修効率が今よりも上がると期待しています。また配置する備品などは、できるだけ病院に合わせた最新のものを揃え、学生が実際に実習に臨んだときに違和感なく使えるよう整えていきます。看護学科の学生はワンキャンパスに変わることで、「チームとして一緒にできることは何だろう」と更なる模索が求められますが、それと同時に、看護の専門性や自らの看護観(看護師としてのアイデンティティ)を他の学生とともに学ぶ中で身につけられる環境は、鷺沼キャンパス移転の利点のひとつだと考えています。学生たち一人ひとりが“看護のアイデンティティ”を持って学ぶことが重要です」

黒山 「理学療法学専攻では少人数制のメリットを活かして、新キャンパスでもこれまで通り、専門職としての知識や技能をしっかりと学生たちに時間をかけて教えていく方針は変わりません」

作田 「現在の横浜キャンパスは非常にコンパクトなので、教員と学生の物理的な距離が近いというメリットがあります。作業療法学専攻も少人数制ですが、大きいキャンパスになることでこの距離感に影響が出るのはないかと危惧しています。他学部は今でも旗の台で大きいキャンパスにおける学生指導の経験を積み重ねていることから、そういった先生方の良い取り組みを参考にしたいと考えています。新キャンパスでは学生との距離感を模索しながら、これまでの横浜キャンパスでの関係の良さを続けていきたいと考えています」

医療技術や知識だけでない
富士吉田キャンパスでの初年次教育がもたらす相乗成果

黒山 「1年次の富士吉田キャンパスでは各学部生が4人一部屋で1年間、共同生活しながら学ぶのですが、本学卒業生の一人としてそれ以上に学んだことは、チーム医療に不可欠な“人間関係”だったと実感しています。これまでは1年間で深まった関係性が2年目以降はキャンパスが分かれてしまい疎遠になっていたので、鷺沼キャンパスで医歯薬の各学部と引き続き同じキャンパスで学ぶ環境は非常に魅力であり、羨ましくも思います」

田村 「私が附属病院に勤務していたとき、本学卒業生の看護師が勤務する病棟に、その看護師と寮生活を共にした同級生の研修医が入職してきたことがありました。その研修医が病院内で緊張して戸惑っていたときに入職3年目となる“同級生の先輩看護師”と再会し、すごくホッとした表情を浮かべていたことが印象に残っています。卒業生が、ともに寮生活を送った仲間と他のスタッフの関係づくりの橋渡しができることも、富士吉田での寮生活の成果なのかもしれません」

保健医療学部に新たな専門職5専攻
医系総合大学としてさらに拡充へ

加茂野 「2027年度に保健医療学部は、リハビリテーション学科に「言語聴覚療法学専攻」「視覚機能療法学専攻」の2専攻を開設するほか、医療技術学科を新設し「診療放射線技術学専攻」「臨床工学専攻」「歯科衛生学専攻」の3専攻を設置する予定です(いずれも設置構想中)。養成する医療職の課程が増えれば学部の共通科目は絞られますが、将来の医療人としてともに学ぶべき内容を見極めつつ、専門性を高めていく確実なカリキュラムを構築することが大切だと考えています」

こんな志で入学してほしい
医療人を目指す高校生へのメッセージ

加茂野 「直接関わりを持たない医療職であっても、共に臨床現場で働く仲間がいないと医療は成立しません。そういう仲間も含めて“人間に対する興味”があるならば、医療人として必要な資質が備わっていると思います。生物としてのヒトに興味があるのならば研究者が向いているかもしれません。医療に携わりたいのであれば人間と話すこと聞くこと、そして自分の思いも伝えられるような医療人を志してほしいです。高校生の段階では難しいかもしれませんが、今はそうありたいという気持ちがあれば良いかなと思います」

黒山 「高校生の面接に関わらせていただいていますが、多くの生徒がどこか型にはまった受け答えをしているように感じます。エビデンスや知識はAIで引き出せます。しかしタイパとかコスパよりも大事なのは、人と会話ができ、『その人のことを知りたい』という気持ち、そして情熱です。患者さんにとって病院は生活そのものです。看護やリハビリテーションを担う私たちはその生活を支える役目であることを理解したうえで、情熱を持って入学してくれたらうれしく思います」

田村 「本学入学は、将来に対する自分への投資です。ここで頑張って次のステップが拓けるのも、キャリア形成のひとつだと思います。高校生のうちに自分の将来を見据えて、『大学で何をしたら自分の将来が拓けるのか』を是非とも考えてほしいです」

作田 「看護やリハビリテーションは1対1の“オーダーメイド医療”です。AIの時代になっても、医療には患者さんの生活を理解するための“人と人”ならではのコミュニケーション力が大切です。コミュニケーションといっても即効性、多様性、誠実性など幅広い要素がありますが、高校生のうちは、さまざまな人たちに関心を向けてもらいたいです。チーム医療の実践教育では、自分で考える力を育みながら人と人とのやりとりをする場なので、目の前の一人ひとりに関心を持って4年間を通して成長を目指す人に来てほしいと考えています」