【特集】「女子大学・短期大学」特集|大学Times

【特集】「女子大学・短期大学」特集 女性の活躍を支えるための女子大学・短期大学の意義・役割

実質的な「大学全入時代」を迎え、短期大学の4年制転換と女子大学の共学化、そして男女共同参画も進展している。しかしそんな時代だからこそ、女子大・短大の意義や役割、伝統ある支援体制が改めて注目した。

世間が注目している女性の進学と就職

経済協力開発機構(OECD)が男女の進学格差を縮小する必要性を指摘した、といったら意外に思うだろうか。かつては女子の高学歴が就職に不利になると考える風潮があったことは事実だが、今や女子4四年制大学を進路の選択肢にすることは当たり前になっている。OECDが毎年公表している国際統計「図表でみる教育」では、「カントリーノート」というリポートを各国向けに付けている。それによると「日本における高等教育の学歴取得率は男女ともに高い一方、選択される高等教育のプログラム及び専攻分野については顕著な差がある」のが現状だという。ただし「近年の傾向では、より多くの女性が大学型高等教育(4年制大学)及び上級研究学位プログラム(大学院)で学んでいる」とも認めている。

2011年に大学型高等教育プログラムを卒業した者のうち女性の割合は42%で、2000年の36%から大きく上昇しているが、深刻な問題として専攻分野の偏りがある。日本で自然科学分野の大学型高等教育プログラム卒業者のうち女性の割合は26%であり、加盟国(平均41%)の中でオランダに次いで2番目に低い数字だという。工学・製造・建築に限ると11%(同27%)で最低だ。OECDが男女差の縮小にこだわるのは、何も男女同権という価値観からばかりではなく、女性が高い学歴を身に付けて社会で活躍することが、その国の経済成長につながるとみているからだ。

また、日本の就業率は男性88%、女性63で、これは加盟国(平均は男性80%、女性65%)の中でも5番目に大きな差であるという。就業していたとしても女性の35%はパートタイムであり、加盟国平均(26%)を10ポイント近く上回る。

しかも、ほとんどの加盟国では教育段階が上がるとともに差が小さくなる、つまり進学機会の拡大が男女間格差の解消に寄与しているというのに、日本ではそうなっていない。大学型高等教育の学位を持つ日本女性の就業率は68%であり、加盟国平均(79%)を10ポイント余り下回っている。男性(92%)が加盟国平均(88%)を上回っているのとは対照的だ。近年、教育政策をめぐっては「エビデンスベース(根拠に基づいた)」の立案が求められている。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)や学校評価などの動きも、その一貫だ。そもそも教育評価自体が指導改善のための「根拠」に他ならない。そうであれば、進路指導の現場にあっても生徒の実力や希望といったミクロの視点だけでなく、マクロの視点を持つべきではないか、と言ったら大げさだろうか。

女性の社会進出を支える女子大・短大のキャリアサポート

OECDの指摘を待つまでもなく、国内の大学には女性の進学促進に向けた努力が広がっている。その一つが、「リケジョ」(理系女子)に代表される取り組みだろう。分野別に「どぼじょ」(土木系女子)などという言葉も生まれている。単に学生確保の手段として女子をターゲットにしているだけでなく、女性の力を新たな研究開発に活かしてもらおうという狙いがある。裏を返せば、依然として男性中心の研究環境ではダイバーシティー(多様性)を確保できず、新たな価値を生み出せないとう危機感があり、女子の高学歴化は必須であり、それによって産み出される「オールマイティーな効用」が期待される。

女子の大学進学は、男子以上に経済的効用が大きい。男女を問わず「今や大学に進学しても、大卒にふさわしい職に就ける保証はないではないか」という“学歴不信”は世間に蔓延している。しかし高学歴には「大学全入時代」とされる今も依然として効用がある。日本の女性の就労をめぐっては、いったん就職しても結婚や出産を機に辞める場合が多く、子育てが一段落すれば仕事に復帰することがあるものの、男性以上に非正規雇用が広まっているのが現状である。高い学費を払ってより上級の学校に進学しても採算が取れないのではないか、と考える向きもいまだにあるだろう。しかし、近年ではこのような現状に対し、在学中だけではなく、卒業してからも産休明けの就職支援など、まさに女性ならではのキャリアサポートを続けている女子大学が増加している。女子の大学進学が伸びているのも、こうした「オールマイティー」な効用に魅力を感じる女子が増えていることも背景にある。それに対して短大は今や「効用」という面では専門学校卒と同程度であるものの、大学に比べれば授業料が安いという点で「受け皿的機能」があるとしている。

あえて共学化に背を向ける大学・短大にこそ存在意義

そもそも女子の進学率が男子より低かったり、専攻分野が偏ったりしているのも、性差による先天的な能力の違いというより、社会的・文化的な性差、いわゆるジェンダーが大きく影響しているからだろう。確かに、かつては高学歴を得ても就職に不利になる、という「現実」もあった。しかし今や高卒就職市場は男女問わず大幅に縮小し、それに呼応して進学率も拡大した。ある意味で「就職できないから進学する」といった消極的な進路選択も少なくないだろう。必ずしも社会的活躍といった積極的な動機を持って進学を選択しているとは限らない。たった5人の女性枠新設にさえ抵抗が大きい社会的・文化的環境の中で、現実的にどうやって女子の活躍の場を増やすか。リケジョの取り組みもそうだが、ここで改めて女子大学・短大の役割がクローズアップされるのではないか。

伝統的な「女子教育」を掲げ続ける女子大・短大にも、もちろん存在意義は変わらない。一方で積極的に女性の社会活躍を後押ししようと、あえて共学化に背を向けて社会の変化に対応した人材育成にチャレンジする女子大・短大も少なくない。全入時代であればこそ、各大学・短大は独自性を発揮することが不可欠になっている。そうした進学環境の変化を踏まえ、目の前の女子生徒がどこに進めば能力を開花できるか、という視点で進路指導を行うことも必要ではないか。

2013年3月に大学を卒業した学生の就職状況

渡辺敦司氏

【プロフィール】

渡辺敦司(わたなべあつし)

教育ジャーナリスト。日本教育新聞記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当した後、1998年からフリーに。
教育専門誌やサイトに執筆多数。
ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」
http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/