【これからの日本を変えるこの分野 関西大学】防災・リスクマネジメント新時代に向けて、専門性と柔軟な思考を持った人材がキーマンに|大学Times

【これからの日本を変えるこの分野 関西大学 社会安全学部】防災・リスクマネジメント新時代に向けて、専門性と柔軟な思考を持った人材がキーマンに

これからの防災、リスクマネジメントに必要とされるのは、専門家と一般の人々の意識改革だといわれている。この改革の鍵を握っているのが、2010年関西大学高槻ミューズキャンパスに開設された社会安全学部だ。自然災害、社会災害などあらゆるリスクに対応できる人材をさまざまな学問を通して育成している。

社会の中に潜むさまざまなリスク、特に自然災害に対する関心は高く”

防災の専門家と一般市民の認識の溝

「防災分野の専門家と一般市民の認識がかけ離れています」と関西大学 社会安全学部の城下英行助教は指摘する。城下助教は防災教育を専門とし、防災活動に参加する機会を提供することが真の防災教育という考えのもとに研究を進めている。

東日本大震災を境に防災への関心は必然的に高まってきているが、あくまで専門家の観点から”正解”を、一方的に伝えることにとどまっているため、聞く人々は現実感に乏しく、自分のこととして認識しにくいという溝が生じている。

「実際、避難勧告が出ても避難しないケースが多いですね」と、城下助教は行き届かない現在の防災教育に苦渋の色を浮かべる。かつて国内では、主に風水害による被害で年間平均千人余りの人々が犠牲になっていた。

「これほど甚大な被害は今では考えられません。被害を最小限にとどめる事ができるようになったのは、科学の力や技術の進歩に拠るところが大きいでしょう。土砂災害などの研究が進み、対策が取られたことで被害を最小限にできるようになりました。こういった対策には効果がありますが、それだけでは足りないのです」と城下助教は、自然災害の対策に欠けている課題を次のように話す。

「例えば避難所に三千人の方々が避難中、救援物資のお弁当が二千個だけの場合、どのように配るか、これには正解がありませんよね。混乱した状況で正解がないというのは揉める原因となります。互いに被災した人たちが揉めるというのは最も不幸なことです。専門家によるガイドラインは必要ですが、それぞれが協力して納得できる解を考えていく姿勢が重要です」。こうした問題を専門家と一般の人たちが共に考え、かけ離れた認識を近づけていくことが城下助教の理想とする真の防災教育の姿なのであろう。

社会安全学部の学生たちに城下助教が望むことは、専門家と市民をつなぐ役割を果たしてほしいということだ。

文理融合であらゆるリスクと向き合える人材を

社会安全学は、法学・経済学・情報学・理工学・心理学など幅広い学問を融合させた学際領域である。

「社会安全学は、単に幅広い学問を学ぶことだけではなく、“専門的な学問を深く学んだうえで、それらを繋げることも含んだ学問”です」と、城下助教は話す。

予期せぬ自然災害、企業で起きる様々な不祥事など、国民生活を脅かす広範なリスクに対して危機管理策の立案などで貢献できる人材を育成している。

多種多様な実習科目を早い段階からカリキュラムに取り入れ、現場感覚を身につけることに注力しているのも学部の特色だ。

「都市災害に関する総合的な研究機関である『阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター』や自動車運転時の危険を体験学習できる『クレフィール湖東・交通安全研修所』など、様々な学外施設を訪問し、理論と実践の両面から総合的に安全を学びます」。また、ボランティア活動、被災地の企業訪問なども積極的に行っている。一昨年には学部独自の資格「社会安全士」を創設し、社会的認知と普及を図っている。

防災は大切な人を守りたいという気持ちから

城下助教は防災の原則「自助・共助・公助」に釈然としないものを感じている。

「この原則ですが、自分のことは自分で守れということですよね。ここが腑に落ちない人たちもいるのでは?と思います。私は講演する際、『大切な人を守りたくないですか?そのためにできることを考えましょう』と伝えています。大切な人を守るために何をすべきか。このような考え方から防災という意識が高まれば良い結果に繋がるだろうと思っています」。現在の防災教育のかたちをもう一歩踏み込んだものとするためには、学生たちの力が必要となってくるに違いない。

来春、社会安全学部は初の卒業生を社会に送り出す。「順調に内定者が出ており、消防士や警察官を志す学生、地方公務員になって災害の対策を考えたり、指揮を執りたいと考えている学生もいますね」と城下助教は学生たちが選択した進路に嬉しそうだ。学問を生かした職業に就いた学生たちが真価をあらわす時、防災教育・リスクマネジメントの世界にどのような変革がもたらされるのか楽しみである。

日本のココが変わる

城下英行助教

「正解と成解」

防災分野には正解のある問題と正解のない問題がある。正解のない問題は、正解に到達できていない問題と正解が1つに決まらない問題に大別できる。そして、防災の難しさは、たとえ正解が分からなくとも、何らかの対策を行う必要があるという点にある。正解へ到達するための努力とともに、防災実践のための社会的成立解(成解)を創りだす斬新なアプローチが求められている。

城下英行助教 略歴

2004年名古屋大学経済学部経営学科卒業
2006年京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻修士課程 修了 修士(情報学)
2010年京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻博士後期課程 修了 博士(情報学)
2010年関西大学社会安全学部