【これからの日本を変えるこの分野 東京都市大学 都市生活学部都市生活学科】|大学Times

【これからの日本を変えるこの分野 東京都市大学 都市生活学部都市生活学科】世界の都市を自分の目でみて、体感し、人が集まる魅力を分析・研究する

街は5年、10年の周期で変貌する。活気あった駅前商店街が、郊外型ショッピングセンターの進出によりシャッターストリートになり、反対に新幹線が通り、橋が架かることで、街が活気づき、人の流れが大きく変わる。都市の繁栄は偶然ではなく、計画をする人間の知恵によるものである。都市生活学部は2009年に設立された新しい学部であるが、その学びと今後の可能性について都市生活学部都市生活学科 川口和英教授に伺った。

都市計画を工学系のみならず、文化面、マネジメントの視点から構築する

都市計画のための工学、デザイン、
芸術、経営、行政、広告等の知識を習得

こどもの国(横浜市)でのフィールドワーク

都市は経済の中心であり、情報の発信源である。日々、新しい文化やファッション、ライフスタイルを生み出している。東京都市大学の都市生活学部は、その都市生活に着眼点を置き、都市計画や、街づくりを行うプロフェッショナルの育成をめざす学部である。都市計画というと理工学部の領域であり、道路や建物のち密な設計図に基づき、模型を組み立てる男性的な学問とイメージしていたが、この東京都市大学の都市生活学部の意図は街を作り上げるには工学的な知識だけでは足りなく、文化、経営マネジメント、デザインなどをトータルにプロデュースをする学問が必要という発想から設立されており、文系の学部学科であるということだ。学んでいる学生の男女比もほぼ6:4程度だそうだ。

文系とはいえ、もちろん工学分野、技術分野を理解した上で、行政、経営マネジメント、空間デザイン、商品開発をするクリエイター、芸術に対する知識、広告プランニングなど都市計画に必要な幅広い知識を必要とする。さまざまな分野を一度に学べる画期的な学問でもある。総合的な視点から、街づくりの企画やプロデュースをやってみたいという学生にとっては最適な学部ではないだろうか。

国内外の街に実際に立って、調査・研究するフィールドワーク

海外研修は2回、アジアとヨーロッパが組まれている。昨年、都市生活学部の2年生はローマ、フィレンツェ、ベネチア、パリ、ロンドンをフィールドワークとして2週間かけて回り、テーマを決め世界の都市の機能性や景観の魅力、環境、ファッション、店舗の看板などつぶさに調査・研究・分析して、詳細な1冊の報告にまとめあげた。来年度入学の学生にはオーストリアのパースへの短期留学の構想もあるそうだ。

国内でのフィールドワークは自由が丘や代官山などの人気の街を実際歩き、人の動線や商店、建築などの調査をする。川口教授の現在の研究は「人を集める」ということ。人は何に興味を持って集まるのか。集まりやすい環境とはどういうところかなどを分析しデザインしていくそうだ。横浜市では横浜ドーム建設のための計画が練られているが、その際に「お客は何万人呼べるか?」「ここでどのくらいお金を使うか?」「関連交通機関にいくらくらいの経済効果があるか?」など多岐にわたって調査、分析が必要とするという。川口教授が設計した横浜市のこどもの国「おとぎの広場」で、子どもたちと保護者を対象として、「何で遊んだの?」「何が楽しかった?」などの利用者アンケートをとってリサーチを経験した。

また、鎌倉でのフィールドワークは、その美しい景観から観光地として、また高級住宅地として有名だが、海が近いことから津波の心配もされている。過去に起こった津波の状況、避難場所、鉄道や道路状況など災害対策の視点から鎌倉を研究しているということだ。

都市生活学部の演習科目は主に3つ。1つ目は空間デザイン演習で、建物を設計し、模型を作り、プレゼンテーションする。2つ目は、デザインコンピューティング。頭で描いていることをコンピュータで図面に表わしてみること。そして3つ目がリサーチ演習で、実際に調査して、分析することだそうだ。フィールドワークで得た知識をいかに、具現化できるか知恵を絞っていくのもこの学問の楽しさではないだろうか。

情報はネットではなく、自分の足で、目でしっかり捉る

ゼミ風景

川口教授の担当するフレッシャーズゼミという授業では、初年度学生たちに4冊の課題の本を出し、読書感想文を書かせているという。それは、シェークスピアの「ジュリアスシーザー」、新渡戸稲造「武士道」、ハンティントン「文明の衝突と21世紀の日本」など、ジャンルは幅広い。西洋の文化や考え方、また、それと対比して日本人の精神構造、それがいかに現代を作り上げて来たか、また都市のデザインにどう影響しているか、などを深く読み取り、学生が教養を深めていくことを期待している。

現代は、どんなことでもパソコンで検索すれば、大概のことは苦労せずにその知識を手に入れることができる。しかし、それは単に上辺だけをなぞっただけにすぎず、決して「わかった」というわけではない。川口教授は学生に、自分が興味を持ったことはお金を出してでも足を運び、実際の目で確認して自分で考えることを提言しているという。

レッチワース・ロンドンでのフィールドワーク

2020年の東京オリンピックに向かって、東京は大きく動き出している。現在、都市生活学部で学んでいる学生もこの都市計画ビジネスでの活躍が期待されることだろう。都市計画において、一つの方向からのみではなく、多方向から物を考え、分析できる柔軟な発想、深い教養に基づいた分析、そしてなにより、安易に与えられた知識ではなく、自分の経験で得た知恵を絞って考える術が必要とされる。人々が安心して、楽しく過ごせる街づくり、ひいては世界に誇れる魅力ある日本の国づくりを提案できる若い人材が輩出してくれることに期待したい。

日本のココが変わる

川口和英 教授 博士

街は10年周期で変わります。かつて、デパートが元気だった頃、渋谷は西武と東急が街の文化を作っていました。しかし、百貨店の景気が悪化することで、今一つ方向性を失っているように見えます。その点横浜は、市が中心となり企業と住民が一緒になり街づくりをしたことで、活気があります。現在、文化、芸術が街に融合している都市をクリエイティブシティと呼び、にわかに注目を集めています。ユネスコの世界遺産は素晴らしいですが、過去の遺産です。これからは現代人が作り上げているクリエイティブシティにも目を向けてほしいと思っています。

川口和英 教授 博士(工学)

1986年早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了、三菱総合研究所研究員、鎌倉女子大学准教授を経て、2009年東京都市大学都市生活学部准教授、2013年同教授(現在に至る)