【特集】奨学金・教育ローン特集|大学Times

【特集】奨学金・教育ローン特集 進学を断念するのはまだ早い 学費の上手な捻出方法

新規高校卒業者の大学進学率は54%と言われている(2012年度「学校基本調査(速報)」)一方で、学費の捻出が難しいために大学への進学をあきらめる学生が多いことも事実である。
ここでは、経済的事由で進学を断念しなくてすむように奨学金や教育ローンによる学費の捻出、そして効率的な返済について考える。

文:ファイナンシャル・プランナー(CFP) 新美 昌也氏

進学マネープランの第一歩は、進学にかかる費用と貯蓄額の確認

学費について何となく「高い」というイメージは持っていても、実際どのくらいかかるかについて理解している保護者や学生は多くないと思います。全国大学生協連「保護者に聞く新入生調査報告書」(2011年度)によると入学までの費用は自宅生約117万円、下宿生約182万円となっています。費用の中では入学時大学納付金(入学金など)約76万円が重要です。なぜなら金額が大きく合格通知を受取ってから短期間で納付しなければならないからです。納付時期(=合格時期)は入試方法により異なります。AO・推薦入試では高校3年の秋頃から、一般入試では3月頃です。近年の私立大学は半数以上がAO・推薦入試で入学しています。つまり、入学時大学納付金の納付時期も早まっています。このような事情を把握しておかないとお子さんが大学に合格したにもかかわらず、入学時大学納付金の納付が間に合わずに進学を断念するケースもありますので留意が必要です。

入学後の費用は学費と生活費です。大学の学費は学校立により大きく異なります。文科省の調査によると初年度納付金(入学金+授業料+施設設備費)は、国立大学が約82万円、公立大(地域内)が約77万円、私立大学が平均約131万円となっています。私立大学は国立大学と違い学部により大きく学費が異なります。卒業までにかかる学費は、国立大が約250万円程度、公立大が約240万円〜260万円程度、私立大学が文科系(4年制)で400万円〜500万円程度、理科系(4年間)で600万円〜700万円程度、医歯系(6年制)で4,000〜5,500万円程度です。生活費は自宅生と下宿生で大きく異なります。下宿生の1か月の生活費は平均で114,760円(全国大学生協連「CAMPUS LIFE DATA2011」)で自宅生の1か月の生活費56,990円より約6万円多くなっています。仕送り額は69,780円と90年以降最も低い金額となっています。なお、自宅生の生活費は高校生の生活費の延長なのでそれ程心配する必要はありませんが、下宿生の場合は新たに住居費がかかりますので事前の準備が大切です。

貯蓄で賄えない分をどうしたら良いか。お金を借りる前に学費や一人暮らしの住居費の軽減方法を検討しましょう。学校独自の奨学金として入学時や入学後の成績が優秀な学生あるいは一定以上の資格を持っていたり、スポーツなどの分野で優れた成績を残した学生に対し入学金や授業料を減免する「特待生制度」があります。学費の軽減方法としては夜間に通うという方法もあります。昼間部に比べ3?4割程度軽減できます。

住居費は住まいの形態により大きく異なります。シェアハウスや学生寮に住めば住居費を安くすることが可能です。都内近郊の大学へ通う学生のための都道府県の出身者限定の学生寮(県人寮)であれば1か月の寮費(食事込)が5万円程度ですみます。住居費を軽減できれば大学選択の幅が拡がります。

3人に1人が奨学金を利用している

1.入学前のお金の捻出
日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金は入学前には利用できない点が重要です。入学前に必要なお金の借入は国の教育ローン(日本政策金融公庫)、金融機関の教育ローン、地方自治体の入学資金貸付制度を利用します。国の教育ローンは日本学生支援機構の奨学金と並んで利用者の多い制度です。民間の教育ローンに比べ金利が低く、返済期間も長く、審査が緩やかなので最初に検討すべき教育ローンといえます。国の教育ローンには所得制限(上限)があります。扶養する子供の人数に応じて世帯の年間収入で判断されます。この上限を超えた場合は民間の教育ローンを利用することになります。この場合、受験シーズンには金利優遇キャンペーンが行われるので事前に調べておきましょう。また、大学と提携している金融機関もあり、金利の優遇が受けられるのでオープンキャンパスなどで情報を仕入れておくことをお勧めします。

2.入学後のお金の捻出
奨学金と教育ローンが利用できます。奨学金には返済義務のある貸与型と返済義務のない給付型がありますが、大部分は貸与型です。奨学金の運営主体には、国(日本学生支援機構)、地方自治体、大学、民間育英団体があります。最もポピュラーなのが日本学生支援機構の奨学金です。今では大学生の3人に1人が利用しています。逆に言うと学費を保護者が全て負担するのは困難な時代なのです。

入学後のお金の捻出は教育ローンも利用できますが、教育ローンに比べ金利が低い日本学生支援機構の奨学金を借りるのがお得です。但し、教育ローンは保護者が借りるのに対して奨学金は学生が借りますので返済義務のあることを十分お子さんに理解させることが極めて重要です。

日本学生支援機構では平成22年度から3ヵ月以上の滞納者の情報を信用情報機関に登録(ブラックリスト化)し始めました。現在1万人以上が登録されています。一度登録されると全額返還後も5年間残り、クレジットカードや住宅ローンの利用が制限される可能性があります。さらに滞納が9カ月以上になると裁判所に奨学金返還の督促が申し立てられます。現在就職難と非正規雇用の増加で返還が厳しくなっています。奨学金返済の原資は就職後の給料です。就職支援制度の充実している大学を選ぶなど学校選びが重要です。

日本学生支援機構奨学金の概要

計画的な借り方・返し方で、卒業後の返済に余裕を

奨学金の返還は長期間です。未就職等により返済が困難になった場合は、適用中は返還しないで、その期間分の返還期間が延長される「返還期限猶予制度」(最長5年間)と当初返済金額の2分の1を返済する「減額返還制度」(最長10年間)がありますので日本学生支援機構に相談しましょう。なお、いずれの制度も返還額が免除になるものではありません。平成24年度より第一種奨学金の中に「所得連動返済型無利息奨学金制度」が創設されました。低所得世帯(年収300万円以下)の学生に対し、奨学金の貸与を受けた本人が、卒業後に一定の収入(年収300万円)を得るまでの間は返済期限が猶予される「出世払い型」の奨学金です。将来の返還の不安を軽減し成績優秀な学生が安心して修学できるようにすることを目的としています。

私立大学(文系・自宅生)の資金計画を考えてみましょう。入学手続き時に100万円、入学後の学費(授業料+諸経費)が年額90万円(月額平均7.5万円)とします。入学時の約86万円は「国の教育ローン」で、残額は貯蓄で賄うとします。入学後は「日本学生機構の奨学金」(第二種)で月額5万円(借入総額240万円)、残りはアルバイトで賄うとします。アルバイトを増やせば奨学金の借入を少なくできますが、学部によりアルバイトの時間が確保できない場合もありますのでご留意ください。

「国の教育ローン」の借入条件は借入額100万円、固定金利2.35%、返済期間15年、返済方法は「元金据置」、保証機関利用(保証料約14万円)とします。実際に利用できる金額は借入額から保証料を差し引いた約86万円です。返済額は在学中の4年間は毎月1,958円(利息)、卒業後11年間は毎月8,604円(元金+利息)です。返済総額は1,229,712円になります。

奨学金の返済額は卒業後毎月16,769円(金利3%、返済期間15年)です。返済総額は3,018,568円になります。大卒の初任給が20万2千円(厚労省平成23年賃金構造基本統計調査)ですので、当初手取り額の約1割が返済に充てられることになります。在学中から家計管理の習慣を身につけることが大切です。なお、奨学金の場合、返済期間は借入月額、借入月数で自動的に決まります。早く返したい場合には「繰り上げ返還制度」があります。

このように現在では奨学金制度や教育ローンも充実しており、経済的な不安を解消できる態勢が整っています。ご家庭や学生の将来の生活を考えながらこれらの制度を利用することで、無理のない進学を目指しましょう。

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