【特集】夜間・通信制学部特集|大学Times

【特集】夜間・通信制学部特集 昼間部に劣らないシステムが充実 今、夜間・通信制学部のメリットが見直されている

勤労学生の学びの場として存在してきた夜間学部や通信制学部。
しかし昨今の経済不安や学生の意識の変化により、高校新卒者の進路の選択肢として考えられてきている。大学も運営が厳しい状況下で社会的な意義などを鑑み、夜間学部、通信学部を維持するための対応が注目を集めている。

夜間部の位置づけは変化している

もともと夜間学部は勤労学生、つまり昼間は仕事をして、夜に学校に通う人のためにつくられたものです。たとえば歴史の長い工科系の私立大学には、建学時に夜間学校だったところが少なくありません。かつての日本では、高校卒業後すぐに大学に進学できる方は少数派でした。そのため高校を卒業した後、工場などで働いて現場で技術を身につけてきた方々の間には「働きながら、大学レベルの高度な専門知識を身につけたい」というニーズがあったのです。そんな方々のために夜間に授業を行ったのが、夜間学部の起こりです。時代は変わり、今では高校卒業生の2人に1人が四年制大学に進学するようになりましたが、昼間に働きたい人などを中心に「夜の大学」の需要はいまも一定数、存在しています。そうした方々の希望に応えようと、全国には夜間学部を維持している大学もまだまだあるのです。

現在、夜間学部を選ぶ理由は、主に(1)働きながら学ぶため(2)昼間学部には入学できないが、どうしてもその大学で学びたいため(3)学費が安いため、の3点です。ただし(1)にあたる勤労学生の数は、昔に比べれば減少していると言われています。ある国立大学の夜間学部が2007年入試の受験資格に「入学後の就労」を加えたところ、志願者が前年の半数以下となりました。また大阪市立大学は2010年度で夜間学部の募集を停止しましたが、その際に大学が挙げた理由は「学生の有職率が5%程度でしかない」というものでした。働きながら学ぶ学生が減った以上、夜間学部の位置づけも変わってきたということでしょうか。時代が変化していく以上、これはある程度自然なことかもしれません。

一方、昼間部と比較して受講生の人数が絞られている分、夜の方がより少人数で充実した教育を受けられると考え、夜間学部を選ぶ方もいます。夜間学部で学ぶ学生には少なからず、そんな志の高さ、大学に対するこだわりなどを持っている人がいるようです。

教育の質は昼間部と同等なのに、経済的な負担は軽い

さらに学費の安さもあります。昼間学部でも夜間学部でも、受けられる教育の水準に違いはありません。にもかかわらず学費は、夜間学部の方が安いというケースが多いのです。3分の2程度の金額で済む例も珍しくありません。経済的な負担を考え、夜間学部の方が「お得だ」と考える学生もいるわけです。

この通り夜間学部には様々なメリットがありますが、大学にとっては安い学費で、少人数のために昼間学部と同じ教育を用意しなければならないため、維持するのは容易ではありません。2011年での、日本全体での大学生(学部生)の総数はおよそ257万人ですが、そのうち夜間学部の学生は、わずか3万人程度。2001年には11万人近くいましたので、たった10年で3分の1以下に減ってしまったことになります。それでも、夜に学べる環境を必要としている学生がゼロではないことや、社会的な意義などを鑑み、夜間学部を維持する大学があるのです。

一方、こうした学びに対する社会的な意義に応えつつ、運営コストなどを抑えるにはどうすればいいかという工夫も、大学側では進められています。解決策の一つは「昼夜開講制」という新しい仕組み。昼間学部、夜間学部の2つに分断するのではなく、「朝から夜にかけて授業を開講し、学生が柔軟に履修計画を立てられるようにする」というものです。昼だけ、夜だけに授業を履修して卒業することも可能だけれど、普段は夜の授業を中心に履修している学生が、場合によっては昼の授業も履修できるよう、融通を利かせることができます。昼間の授業を中心に履修している学生にとっても、都合に合わせて夜遅くに学べるメリットを享受できるなど、全学生のサービス向上に繋がるというわけです。

もう一つの解決策が、通信制学部の充実です。特にインターネットを活用したeラーニングなどを組み込んだ新しい通信教育が、さまざまな大学で展開されています。自分の学習成果を確認したり、授業を自分のペースで何度も受けられたりと、通学しての授業とは違ったメリットにいま、改めて注目が集まっているのです。いつでも自分で学べるのなら、昼間に仕事をしていても大丈夫。前述した257万人とは別に、大学が提供する通信制学部の教育を受けて学士号の取得を目指している学生がおよそ22万人います。つまり大学生の約13人に1人は通信制学部生。意外と多い、という印象を持たれる方もいるのではないでしょうか。通信制学部で特に多いのは、教育学や法学・政治学、商学・経済学などを専攻する学生ですが、今では理系も含めほぼすべての分野が通信制学部で提供されています。1度もスクーリング(特定の場所に集まっての対面授業)を受講しなくても、通信教育だけで卒業できる大学もありますが、そうした大学でもスクーリング式の授業は用意されています。大学が用意するウェブ上の交流サイトなども利用すれば、多様なバックグラウンドを持った仲間と出会うことができるでしょう。

時代のニーズに合ってきた夜間学部、通信制学部にはPRできるポイントが多い

日本経済の状況がまだまだ良いとは言えないなか、学費が安く、しかも働きながら学べる夜間学部や通信制学部は、いま社会が求めるニーズに合っています。昼間学部でも夜間学部でも、あるいは通学生でも通信制学部生でも、取得できる学位は同じ。大学によっては、卒業時に授与される学位記に昼間・夜間などの区別を記載しないところもあります。学んだ内容が同じである以上、学士号の価値も同等です。

もう一点。いま企業が特に重視している能力の一つが、コミュニケーション力です。それも属性の近い相手ではなく、違う年齢、違う価値観をもつ多様な人とやり取りする力。企業の採用担当者が面接において、大学での学習内容についてと同じくらい、サークル活動やアルバイトについて質問をするのは、多様な相手とのコミュニケーション力、ひいてはそうした場に飛び出す積極性・主体性の有無を知りたいからにほかなりません。多様な人間関係にもまれ、また学業と仕事(アルバイトも含む)の両立を経験していることが多い夜間学部、通信制学部の学生には、PRできるポイントがたくさんあるのです。

ただしこれらの利点を活かせるかどうかは自分次第。漫然と過ごしていては、一般的な大学生よりも変化の少ない4年間にもなりかねません。夜間学部や通信制学部では、学習の継続に対する本人の姿勢が強く問われるため、学習意欲を失って退学してしまうリスクもあります。上述したように、活用しがいのある環境。入学するだけではなく、卒業までこの環境を使いこなしてやろうという意識が大切です。

倉部 史記氏

【プロフィール】

倉部 史記(くらべ しき)

高校生のための進路選択アドバイザー、および大学プロデューサー。企業広報の企画・プロデュース、私立大学スタッフ、大手予備校の主任研究員などを経験。高校生および保護者への進学指導実績も数多い。現在は新聞・雑誌などのメディアや教育関係者向けの講演活動などを通じて、大学情報の発信や進学指導に従事。
毎週金曜日22時よりニコニコ生放送にて、高校生向けの進路選択番組「大学の見方」MCを務める。著書に『看板学部と看板倒れ学部』(中公新書ラクレ)など。