【これからの日本を変えるこの分野】太陽の下でなら、いつでもどこでも調理が可能 ソーラークッカーの秘めたるポテンシャルに迫る|大学Times

【これからの日本を変えるこの分野 足利工業大学 工学部創生工学科自然エネルギー・環境学系】太陽の下でなら、いつでもどこでも調理が可能 ソーラークッカーの秘めたるポテンシャルに迫る

生命の根源ともいえる太陽光。この自然エネルギーは古くから研究されてきた歴史がある。足利工業大学の中條祐一教授が研究を進める太陽光を利用した調理器具、ソーラークッカーは太陽光発電の歴史より長く、途上国の人々を救うミッションもその双肩に担っている。

電気・ガス、薪に頼らずにソーラークッカーで救える命がある

煙が出る化石燃料で死亡者、途上国が抱える現実

調理や暖房に薪を用いて暮らしている人たちが世界には32億人もいるという。これは世界人口の約半分にあたるといわれ、ライフラインの発達した我が国からでは俄かに想像が及び難い現実である。「この困っている人たちをすぐにでも救えるのがソーラークッカーなのです」と語るのは、足利工業大学工学部創生工学科自然エネルギー・環境学系でソーラークッカーの研究開発を行っている中條祐一教授だ。砂漠化、森林破壊が進む途上国では慢性的な薪不足が続いており、荒野の中、延々とその日に必要な薪を探し続けても見つからないケースまであるという。「薪や化石燃料を室内で使い150万人もの人が亡くなってしまっているのです。また、水を煮沸殺菌できないから5歳未満の子どもたちが年間で180万人も亡くなっているのです。クッカーがあればそうした命を救えます」と教授は力説する。

ソーラークッカーの原理は太陽光を集光し、その熱で食材の調理が可能となる至ってシンプルな自然エネルギー調理器具である。集光型、箱型、パネル型に分類され、集光型は火力が強く焼物や短時間での調理に適しているなどそれぞれに用途がある。一日に3万食の調理が可能な巨大な太陽熱調理システムもあるという。これらを必要とする途上国での普及も徐々にではあるが進んでいる。また、各国のNGOが主導で普及に関わるなどその潮流は世界規模だ。教授の研究室もその一翼を担っている。学生たちと共同で、軽量・コンパクト化したソーラークッカーなどを開発しており、一部は製品化され販売もされている。

災害時、温かい食べ物が被災者を勇気づける

途上国支援のツールとして進歩を遂げてきたソーラークッカーだが、教授は国内でも必要とされる時が来ると言う。「それは震災などの緊急時です。必ずクッカーが役立つと思っています」と教授はその有効性を唱える。

「被害に遭われた方たちがテレビの報道で、炊き出しで温かい物が食べられたのは有難かったという意見を耳にしますよね。瓦礫の中で火を使うのは怖いでしょうし、直火に関しても被災者の方は神経質になっていると思うのです。そうした場面にクッカーがあれば……」と教授は火を使わずに調理ができるこの器具の利便性に言及するが、自治体などに備蓄を進言しても採用を見送られるという。その理由は、天候の影響を受けるから不確実性が高い、ということだ。

学生たちの手作りソーラーカー

「しかし、」と教授は言う。「確かにクッカーの力が最大限に発揮できるのは影がはっきりと見える晴天時なのですが、晴れたり曇ったりが続いていてもトータルに一定の日射量を得られていれば、調理ができる箱型やパネル型タイプもあるし、ほんの僅かの間でも晴れていればある程度温められる集光型タイプもある。3つの異なるタイプを備蓄しておけば、大丈夫という特徴があります」と教授は天候の変化にも対応できるポテンシャルがあることを強調する。

子どもたちの視野を広げるソーラークッカー

今年度、足利工業大学で製品化したソーラークッカーが小学校の理科の教科書に掲載された。教材として使われることは、存在を広く子どもたちに知ってもらえる機会でもある。

「こうした取り組みが浸透していけば、使い方がわかる人間が増えていくし、途上国の現状を知るきっかけになると思う」と話す。ソーラークッカーは240年前から営々と研究されてきた歴史があり、熟成された技術だと教授は言う。「しかし、単純なだけに工夫の余地は無限大で、使い方も様々。その必要とする場面で、みんなが互いに情報を発信していければいいと思っています」と。

教授は学生に、ソーラークッカーの研究を通し、将来社会に貢献できる人間に育っていってくれることに期待を寄せている。

日本のココが変わる

中條祐一教授

単純な原理から無限大の広がり

小学校の教材としてソーラークッカーが定着してきています。途上国には燃料がなくて困っている人たちが沢山いる、または自分たちが災害時に困った時に使えることを教えられる優れた教材だと思います。クッカーに触れる場が増えてくれればうれしいですね。レジャーで使っても楽しいと思いますよ。クッカーを通じて新たな問題定義や様々な発見、学びを見つけるきっかけになってほしいと思います。

中條祐一 略歴

上智大学博士後期課程修了後、イリノイ大学で理論・応用力学部研究員となる。
1989年、足利工業大学 機械工学科助教授として赴任。
2006年自然エネルギー・環境学系主任教授
2008年足利工業大学総合研究センター長(現在に至る)