弘前大学がアサヒ印刷との共同研究でりんご剪定枝を「布」として有効活用 ― ''厄介者''とされる剪定枝から開発した糸の生地化に成功大学通信 2024.6.28

弘前大学(青森県弘前市)教育学部の技術教育講座木材加工研究室(廣瀬孝准教授)と有限会社アサヒ印刷(青森県弘前市)は、共同でりんごの剪定枝を使った糸を開発し、これを生地化して繊維製品に活用することに成功。これまでほとんど有効活用されていなかったりんご剪定枝の再資源化・商品化に新たな道筋を付けた。6月24日には報道機関向けに試作品の発表が行われ、日本酒用バッグ、エプロン、帽子、タブレットケースなどが披露されている。

 両者による共同研究は、2023年度弘前大学共同研究トライアルファンドに採択されたことで実現したもの。りんご生産量日本一を誇る青森県において、薪などの燃料として使われる以外ほとんど有効活用されない''厄介者''とされてきたりんご剪定枝の再資源化・商品化を目指したアップサイクルプロジェクトとなる。
 昨年10月にりんご剪定枝から板材を作ることに成功していたが、今回新たに「りんごの布(仮称)」として、さらなる再資源化の道を開拓した。

 針葉樹に比べ繊維が短い広葉樹であるりんご剪定枝のパルプを用いて糸用の薄葉紙(うすようし)に加工するのは困難だったが、この難題を乗り越えて薄葉紙にし、細くカットしたものを撚ることで糸にすることができた。これを既存の和紙糸(キュアテックス® ※)と織ることで生地化、繊維製品としての活用に成功した。

 このたびの成果は、廣瀬准教授がこれまでに取り組んできた高速道路間伐材(ニセアカシア)の糸化・繊維製品化の知見を活かし、欠点を改善する試みを施したもの。そのため、ニセアカシアに比べて強度があり、切れにくくなっている。

 6月24日に行われた会見では、日本酒「弘前大学」の箱にもよく調和した日本酒用バッグ、エプロンや帽子、タブレットケースなど、さまざまな試作品が披露された。それぞれ製品に合わせた編み方がされ、触り心地のよい仕上がりとなっている。

 廣瀬准教授は「今後さらに研究を推し進めて、りんご剪定枝のパルプの配合率をより高めていきたい」と、今後を展望。
 また、アサヒ印刷の漆澤知昭代表取締役は「大学や地域の企業と協力し、地域経済に貢献できる青森県の新しい魅力、価値を発信する商品づくりをしたい」とコメントしている。
 同社の齊藤元専務取締役は「剪定は桜に見られるように、樹の力を最大限活かす伝統的な技術であって決して悪いわけではないが、労力がかかってかつ廃材を出している現実がある。これを活かした製品を作ることで剪定イコール悪ではなく、剪定によりいいものが生まれると知ってもらうことで栽培方法の発展や維持の一助になれば」と、今回の成果の意義を語った。


 今後は配合率や強度、その他の条件をさらに検討し、量産化に向けてのチャレンジがスタートする予定。





※キュアテックス® について

 https://curetex.jp/service/washi/about/



(参考:弘前大学公式サイト内)
・高速道路間伐材由来パルプを混合した紙(薄葉紙)を糸化、シャツ等を試作しました
 https://www.hirosaki-u.ac.jp/topics/93282/

・りんご剪定枝を 「技術」で布に【アサヒ印刷 × 弘前大】
 https://www.hirosaki-u.ac.jp/topics/95816/


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