2025年度入試改革特集スペシャルインタビュー
新課程入試は多様な選抜方式に注意
志望校選びも“先手必勝”が最善に~株式会社 名門会~
大学Times Vol.53(2024年7月発行)
2022年度より変更された「新学習指導要領」で学ぶ高校3年生の大学入試がいよいよスタートする。大学入学共通テストを始め、各私立大学でも選抜方式や受験科目、出題範囲の変更などが次々発表される中、受験指導のプロたちは今、どのように分析し対策を講じているのだろうか。今回は医学部受験をはじめとしたプロ講師による個別指導塾を全国で展開する「名門会」の担当者に、現状と注意点を伺った。
株式会社 名門会
ブロック長 梅原 惠太郎(写真左)
経営企画局 入試対策課 係長 金子 智之
厳選されたプロ講師を派遣する1対1の進学個別指導塾。自宅学習やオンライン個別指導にも対応。北海道から鹿児島まで全国に拠点があり、中学受験から高校・大学受験、医学部受験の合格実績を誇る。100%社会人の講師登録者数は5000名、社会人プロ家庭教師センター「名門会」、全国展開の進学個別指導塾「TOMEIKAI」を運営している。
前年度の入試傾向から大きな変化なく新教科「情報Ⅰ」も初年度は高い平均点か
梅原 「昨年の今頃は情報収集など全体的に慌ただしい状況でしたが、今は落ち着いています。前回の大学入学共通テストの平均点が上がり、安全志向でもなかったように分析しましたが、私立大の上位校や医学部も平均点が上がるなど、入試トレンドも大きく変わりませんでした」
金子 「新教科の『情報Ⅰ』は各高校の授業でも履修され、【プログラミング】を行う数学の応用分野では多少警戒されているものの、【リテラシー】クラスの社会学系も含めても、まだマジョリティー(多数派)ではありません。新教科の初年度入試はいわゆる“ご祝儀相場”となるケースが多いのですが、大学入試センターが公開する試行問題の域を超えることはなく、平均点も高くなるだろうと予測しています。入試結果のデータが出揃う3、4年後の動向はまだわかりませんが、新教科としての警戒心はそれほど大きくない、という印象です」
文系学部の志望者は数Cへの注意と長文読解の配点変更の対策必須
金子 「大学入学共通テスト利用入試や私立大の難関校など、文系学部でも出題教科に数学を必須とする傾向がみられますが、文系の生徒が高校で履修していない数Cが入るケースも想定し、当会では個別にケアをいたします。また、国語の現代文はこれまで長文読解が得意で満点を取れる力があっても配点が小さくなるので、新たな対応が必要になります。追加される1問が【資料をもとにしたデータ整理】が主題となるため、理系志望の生徒には難しい領域ではないとみています」
梅原 「『情報Ⅰ』は初年度なのでまだ大騒ぎになっていませんが、数学Bの「統計」などは文系志望の生徒には別途フォローが必要になるでしょう」
英語外部検定試験利用入試でもそれ一本ではなく柔軟な英語学習を
梅原 「高校生の英検を受けるプロセスは従来通りであり、過去問など対策問題集を多く解き、文法知識を習得することが大事です。英検受験の回数は決まっているので、早めの準備が必要です。しかし、英語外部検定試験利用入試の一本に絞って受験すると、受験者が殺到した場合は倍率が上がるだけでなく、併願校の幅を狭めてしまう恐れもあり、あまり望ましくないと考えます。指導する側としては学習計画を立てて、各生徒がアウトプットをしっかり行えることが大切になるので、入試の1年前には単元学習を終わらせて、志望校対策にどれだけ時間をかけられるかに主眼を置きます。付け焼き刃の学習で大学入試へ送り出す訳にはいかない、という思いがあるからです」
自分が「大学で何をやりたいか」が今見つからなくても健全なこと
金子 「少子化に伴い18歳人口は減少していますが、大学進学者数は大きな打撃を受けていません。女子の進学率が上がり、これまでの文学部や家政系学部から志望学部を変更する受験生が医学部や理工系学部の受験生全体の減少を補っている形です。また最近は自分が大学で何をやりたいか、受験生の選択眼が変わってきていると実感しています。文学部よりも社会学部に人気があり、メディア系を学びたいなど受験生の1歩目が変化しているので、大学の講座数やゼミ数などからも絞り込みできるよう、私たちも事前に調べてから質問に答えています。学びの領域が、より個性的になっているように思います」
梅原 「先ずは『夢の第一志望校』を決めるべく、10代の多感な時期に豊かな発想を持って大学をみること。今の自分と未来の自分とを対峙しながら、将来を考えてほしいです。受験科目からでなく自分が好きなことからのアプローチでも構いません。どの大学に行きたいかよりも『将来どんなことをしたいか』『どんな大人になりたいか、どんな場所で人の役に立ちたいか』を考えることは、推薦入試の志望理由にも繋がるので、その決定プロセスを通じて自身の将来イメージを語れる人は、大学から高い評価を受けるでしょう。生徒には『夢は何?』から進路指導をしていきたいと心がけていますが、もし今、夢が見つからなくても、それは健全なことと捉えて、自分の実力で最高の志望校を選べばいいのです」
二極化が進む総合型選抜 選考方法にも要注意
金子 「前年度は一部の国公立大学の二次試験において、受験生の負担軽減として、面接・小論文に切り替えたところ、志願者数が減少し、近県の同学部に乗り換えた現象が起こりました。また、後期試験で新たに英語を課しても志願者が増えたケースなど、受験生のトップ層には“学力以外の評価を嫌う”傾向が見られました。一方、大学も学生確保の観点から年内受験の学校推薦型選抜や総合型選抜の割合が拡大し、以前のような評定縛りからAO型(講義を聴いてレポート提出、面接のみなど)や他大学との併願可の大学が増え、選抜方法の多様化が顕著です。独自色を出したいあまりに同じ大学の学部・学科・コースによっても選抜方法を変えるなど複雑で分かりにくく、一般論で語るのが難しい状況です」
梅原 「選抜方法が多様化し、出願のための準備期間が長くなっています。3年生になってからでは遅く、前倒しでの準備が望ましいです。英検など外部検定試験の受験計画をはじめ、特別推薦などは「高校での活動記録」「祖父母推薦」「自治体・地域推薦」などあらゆる方面からの推薦が可能になった反面、出願書類を直ちに入手できないものもあります。更に事前準備を通じて『自分の活動が入試で生かされることがあるのか』の見極めも必要です。
大学受験は“試験までの助走”の長い方がより良い対応ができますので、名門会では『夢の第一志望校』をできるだけ早く決めて差し上げて、一人ひとりの学習カリキュラムを考えていきます。昨今の入試方式の多様化は、必ずしも受験生全員にプラスとはならず、思考型よりも教科で勝負したい人もいます。個別指導ならではの『一人ひとりに寄り添いフィットする入試』に対応する指導を通じて、自己実現への道を全力で応援いたします」