看護・医療系特集教授&准教授インタビュー
次世代の医療人を臨床実習の中で育てる「臨床教員」。道標としての役目も担って~昭和大学(2025年4月昭和医科大学へ校名変更予定)

大学Times Vol.53(2024年7月発行)

【看護・医療系特集】教授&准教授インタビュー 昭和大学

医療関係技術者養成校での指針となっている、診療参加型臨床実習「クリニカル・クラークシップ」は学生たちが主体的に実習に参加し、チーム医療を身をもって学んでいくことを目的としている。この取り組みの中でキーパーソンとされるのが「臨床教員」である。日常的に病院に勤務する臨床教員たちは、医療人を目指す学生たちにとって現場を知る上で欠かせない存在だ。この制度をいちはやく導入した昭和大学の臨床教員である福地本教授と尾﨑准教授に話を伺った。

昭和大学 保健医療学部
看護学科 福地本 晴美教授(写真左)
リハビリテーション学科 理学療法学専攻 尾﨑 尚代准教授

医療現場と大学キャンパス
臨床教員のそれぞれの指導法

福地本 「臨床教員制度は、2010年の厚生労働省による『今後の看護教員の在り方に関する検討会』を契機に2012年より導入されました。学生の時に習得したことが、医療現場に入っても継続していけることなどを主眼とした制度です。現在、看護学科には臨床教員52名がおり、成人(急性期・慢性期)、老年、母性、小児、精神の看護領域をそれぞれの専門教員が実習で病院に訪れる学生たちの指導にあたっています。臨床教員は病院の職員として日常的に看護にたずさわっているため、患者さんの背景、経過を踏まえて、学生たちに教えることができます。私は附属病院の統括看護部に勤務していて、学生たちが実習に来たときや、大学へ出向いて演習に加わる際に教授活動を行っています」

尾﨑 「リハビリテーション学科の臨床教員はPT(理学療法士)が25名、OT(作業療法士)が10名です。6ヶ所の附属病院の実習先には臨床教員のほかに、指導に協力してくれる病院スタッフがいます。リハビリテーション学科は少人数教育なので、教員1人が2人の学生を指導するかたちをとっています。PT、OTはリハビリという特性上、直接、患者さんの身体に深く触れていかなくてはなりませんので、技術を教えるという面では複数の学生を同時に見るのには限界があります。患者さんの触り方、治療における変化なども気づいてほしいですし、リハビリは目で見るだけではなく、五感で感じなくてはならない部分があります。そうしたところはマンツーマンで指導しないとならないので、そこが看護との実習とは異なる点なのかもしれません」

理解とコミュニケーションを深める2週間の病院実習

福地本 「実習の際、学生たちはひとりの患者さんを受け持ち、看護計画をたてて看護師と一緒に実践していきます。受け持ちの患者さんからどうやって情報を得るかということが課題です。カルテからの情報だけではなく、患者さんと直接話をすることによって身体的、精神的、社会的な全体像の情報を得ていきます。そしてその問題に対して、看護を通してどのように介入していけばその人の問題を解決できるだろうか、ということを考えて実践してもらっています。その一連の過程を2週間の実習の中で到達することが目標で、それらを踏まえて学内教員と一緒に学生たちの最終評価を行っています」

尾﨑 「リハビリテーション学科の実習は、すべてが応用と考えています。厚生労働省が推奨する「クリニカル・クラークシップ」に即した、技術的な面にも注力しているのですが、実際に患者さんのリハビリの一部を経験するということだけではなく、学生たちには入院から退院までの一連の流れを理解してもらいたいと考えています。そのことを知らないで卒業してしまうと、入職後、教育体制がしっかりしている病院であればそこで学べますが、そうでない場合は苦労することもあるかもしれません。それだけに、ひとりの患者さんの入院から退院までの流れを理解してもらうよう指導しています」

初年度教育から育まれるチーム医療への意識

福地本 「保健医療学部の領域別実習が終わったあと、チーム医療の在り方を学ぶための「学部連携実習」があります。本学部だけでなく、医学部、薬学部、歯学部、すべての学部が一緒に取り組み、全附属病院を使って約600人が実習に向かいます。各学部の学生がチームを組んで、ひとりの患者さんを診ていくという体制になっていますが、この実習には私たち臨床教員だけでなく、各学部の学内教員も指導にあたります」

尾﨑 「実際の医療現場のシミュレーションに近い感じです。6ヶ所の附属病院の各病棟の各階で学生たちが実習を行っていて、たとえばリハビリテーション学科の場合は、「医師の話を聞くためにはどうしたらいいか」「看護師の情報からどのような治療プログラムをたてていくか」など、かなり細かい部分もシミュレーションしています」

福地本 「昭和大学の伝統として、全学部の学生は1年次を富士吉田キャンパスで寮生活を送りながら学びます。寮での部屋分けは、学部・学科混合で、4人1部屋で共同生活を行います。これはチーム医療を見据えた方策で、学部・学科が違っていても寮生活やPBL授業を通じてお互い職種の役割を理解することで、将来チーム医療に臨める基本となっています」

大学で学ぶ「チーム医療」がそのまま附属病院の現場で活きている

尾﨑 「チーム医療の心得が若いうちから培われているので、附属病院の現場に入ってもその関係は続いているように感じられます。今でも気軽に、患者さんのことを他の専門職に相談する姿をみかけます」

福地本 「わたしも違う病院から昭和大学病院に赴任しましたが、この病院は職種の垣根が低く、お互いの専門性を尊重していると思いますね。例えば、ドクターが気軽に薬剤師に薬の質問をしている様子など、チーム医療が日常的に定着していると感じます」

人と深く接することが医療人への第一歩

福地本 「看護師の“看”は手と目と書きます。手で触れて目でみる、要するに心の目で人をみるのが看護のあるべき姿です。実際に自分の手で触れて目で見て語ることはとても重要です。人間は、ついつい”できないこと”に目を向けてしまいがちですが、看護師をめざす人は「この人のできることって何だろう」と、目前の人ができることを探してほしいなと思います。患者さんの心の声に耳を傾け、たとえ意識がない状態でも聞こえているという気持ちで接してもらいたいなと思います。思いを馳せることができる医療人になってほしいと思います」

尾﨑 「医療人になりたいと考えた時、大学で知識を学ぶ、実習に行って技能などを学ぶなど、その方法についてはいろいろ調べると思いますが、その前にまず人間としての”在り方”を考えてほしいです。そのためにもぜひ、今から人との関わりを多く持ってください。その経験が将来、医療人として成長できると信じています。今は他人と接触する機会が少なく、対面で話す機会が減っていますが、SNSではなく、目の前の人と向き合ってほしいです。高齢者など、日頃話す機会のない世代の人と対話する機会を高校で設けてもらえたら有難いです」