データサイエンス特集スペシャルインタビュー
身近なことを“可視化する”のがデータサイエンスの第一歩~日本ソーシャルデータサイエンス学会~
大学Times Vol.55(2025年1月発行)

データサイエンスを学ぶ大学の学部・学科が全国的に増加している。しかし、実際にはどのような事を学び、卒業後の想定される進路など、明確に把握している高校生や先生方は未だ少ないのかもしれない。今回は大学や企業・自治体等でデータサイエンスの研究・教育を担っている日本ソーシャルデータサイエンス学会の水野信也会長に、データサイエンスを学ぶ意義や実社会との関わり、高校生と先生方へのアドバイスなどを伺った。

日本ソーシャルデータサイエンス学会
会長 水野 信也(みずの しんや)
順天堂大学 健康データサイエンス学部 教授
専門領域:数理モデル、社会システム最適化
【日本ソーシャルデータサイエンス学会】
会員数は約80名で8~7割は大学の研究者、3~2割が企業(情報システム系から薬品、航空など)、高校教員、官公庁職員などで構成。大量データの数理的解析に関する学術研究および技術の開発を促進して、社会の発展に寄与することを目的とし、社会に向けた普及活動を行っている。
社会の課題解決のために手法を使って解決に導く
データサイエンスはその範囲が広すぎて何をやっているのかがわからない、といわれます。
私の研究は、数理モデル(社会課題を数学的に解決)、確率過程、最適化、シミュレーションを組み合わせて課題解決をはかっています。たとえば、社会モデルではコロナ禍などで混雑させない仕組みづくりや、航空機のログデータ、wifiのログを活用してネットワーク分析を行ったりしています。医療モデルは地域的に糖尿病重症化が多いのはなぜか、傾向をみて戦略を立てることも行います。これらのおよそ半数は企業や自治体、病院、医師などからの依頼を請けていますので、データサイエンスはすでに社会からのニーズがあると捉えて活動しています。
多種多様な学会論文のテーマ
当学会のHPに掲載されている研究論文タイトルを見ると、自然科学からビジネスマーケティング、選挙分析などの戦略、SNS関心度など多岐にわたります。いろいろな立場であらゆる課題に向き合っています。私の場合は、各課題を数理モデルに落とし込み、汎用化して集約・分析して活用します。局所的な課題は無数にありますので、論文では抽象化しています。
多様なフィールドの人と共同で研究し社会に貢献する
データサイエンスはいろいろな分野の人と繋がり、単独での研究は少ないのが特徴です。たとえば医療データであれば医師や看護師、保健師などと共同で論文を作成し、教育データであれば学校の先生とも共同で研究します。その中から新しい価値や知見、戦略を発見していきますので、その点がデータサイエンスのおもしろさであり、難しさでもあるのです。
“可視化とディスカッション”の重要性
一昔前までは、「AIデータサイエンス」と一括りで捉えられ、万能で魔法のように、データさえあれば何でもできると勘違いされていました。
しかし、共同研究の際は“可視化とディスカッション”で意志疎通を図り、仮説を導いていくことが重要です。可視化することで行動変異を起こすことが期待でき、集った研究者が同じ方向性で向き合えるかどうかにかかっています。AIとして自動化されるまでの過程がデータサイエンスであり、その間の意見交換がスムーズにできるかどうか、相手の“人”を見て判断することも大切なのです。
実は10年前と変わらない基礎科目
PBLの比重が大きくなったデータサイエンス教育
大学におけるデータサイエンスの講義について、実は科目群のカリキュラムはあまり変わっていません。10年前の情報系や工学系と比較しても、基礎の素養に変更はないのですが、3年次からの演習が大きく変化しています。PBL(課題解決型学習)が増え、応用のウェイトが大きくなっているのです。これは文部科学省の「数理・データサイエンス・AIプログラム」認定の影響があると思います。各レベルの上位認定(プラス認定)を取得するには、PBLの成果がより求められていると分析しています。
高校生には自由な発想を持たせ「そんなの無理」と制約しない
データサイエンスに興味を持ち、大学で学びたい高校生に対し、高校の先生方は是非とも、限界点を作らず自由な発想を持ってもらうようにご指導いただければと思います。「データサイエンスではできないことはない」という、技術的な制約を設けずに、やりたいことを表現してもらうことが大切です。そして目的のベクトルが定まれば、次の手段が見つかり、目的意識を持てば、知識が結びついていきます。ビジネスの世界では制度等もありますが、PDCAの繰り返しがデータサイエンスの特徴ですので、先ずは内容よりも意識付けを促してください。たとえば毎日の弁当について、いかに満足度を上げるかなど、身近なものを数値化して可視化したり、体重を毎日測定して行動変異を促すことからでも構わないと思います。
データサイエンスに興味のある高校生へ
「高校で勉強する数学は何の役に立つのか?」との疑問から、興味が持てない人もいるかもしれませんが、データサイエンスでは欠かせない学問が数学であり、実社会で役立っている現場もたくさんあります。また、ディスカッションの重要性について述べましたが、その際は英語が必須となりますので、この2教科はしっかり勉強してください。
学会事務局&研究員 大場さんより
●2025年春季研究発表&シンポジウム開催~初の高校生チャレンジ発表あり~
当学会の社会に向けた活動の一環として、研究発表会&シンポジウムを開催します。今年から新たに、「高校生チャレンジ発表」を設けました。高校の総合学習や探究学習での成果を発表してもらい、データサイエンスを幅広く知ってもらう機会にしたいと思います。
日付:2025年2月22、23日
会場:開志専門職大学(新潟市中央区)※ハイブリッド(現地/オンライン)開催

拡大する
●データサイエンス系学部生の就職先
情報系ではシステムやインターネット系が多い傾向ですが、近年は食品系企業からのオファーなど他業種でも人材需要が高まっています。社内に蓄積されたデータを分析できる人材を希望するなど、企業内業務を担うデータサイエンティストを求めているケースもあります。
●こんな高校生にデータサイエンスを学んでほしい
大学進学までに興味分野が決められない人は、大学4年間でどの分野にも関われるチャンスのある、データサイエンス系の学部学科をめざしてほしいです。
また、データサイエンスはパソコン1台でスパコンと繋がればどこでもできる仕事です。女性のライフプランにも寄り添える強みがあり、結婚出産後も働き続けたい女子学生には是非来てほしい分野です。
