探究学習特集受賞者インタビュー
地元電車の廃線危機から課題を見出し街の魅力発見と発信手段を考えて試行~茨城県立太田第一高等学校~

大学Times Vol.55(2025年1月発行)

【探究学習特集】受賞者インタビュー 茨城県立太田第一高等学校

中高生の探究学習の成果を企業団体が評価する『自由すぎる研究®EXPO2024』(主催:株式会社トモノカイ)。応募総数3857件の中から最終審査結果が決まり、金賞(さんぽう賞)に茨城県立太田第一高等学校の『JR水郡線の人気を高めて赤字を減らそう!』を選出した。学年の壁を超えた生徒6名の地元愛溢れる取り組みについて、ご本人たちに熱く語ってもらった。

茨城県立太田第一高等学校
3年 金澤舞香さん 矢板真生さん 藤島亜衣さん
3年 山崎七緒さん 根本柚希さん(根本さんは取材時欠席)
2年 小川遥乃さん
指導 探究推進部長 石井典子先生

水郡線が廃線になったら後輩たちが高校に通えない

山崎 元々は生徒6名で「水郡線活性化プロジェクト」を探究学習として取り組んでいたことが応募のきっかけです。部活ではなく学年横断の有志の集まりで、住まいの場所もバラバラなので、多角的な視点を持ったチームです。2023年8月から活動を始め、改良を重ねて発表の場を探していた時に、探究推進部の先生から「自由すぎる研究®EXPO」を紹介してもらいました。

矢板 私は水郡線を使って通学していますが、今は赤字区間と黒字区間が混在しています。このまま赤字が解消されなければ廃線になる恐れがあり、将来後輩たちが高校に通えなくなると気付きました。水郡線を広く利用してもらい、赤字を解消するには、沿線の魅力を知ってもらうことが大切です。今回、自分たちで電車に乗って街歩きを初めて体験し、特産品の食べ物や土産品など伝えきれていない魅力があると実感しました。

世代や背景の異なる人々にも街の魅力を伝える工夫

山崎 初めに、昨年の夏休みを利用して水郡線沿線の大子町へフィールドワークに行きました。大子町の魅力を再発見し、SNS映えを意識したPR動画を製作しましたが、見た人達からは「若者だけにしか響かない」と指摘を受けました。水郡線の赤字解消には、より多くの人に沿線の魅力を伝えて利用してもらわなければなりません。「自分たちに何ができるだろうか?」ともう一度話し合いを重ねて、最初の“SNS映え”から“グローカル”に着目点を変え、外国人観光客や若者、高齢者にも魅力が伝わるコンテンツを作ろうと決めました。

若い世代へ向けては、太田一高ダンス同好会とコラボして竜神大吊橋でのダンスを動画にし、SNSで発信する動画を製作しました。より多くの外国人へ知ってもらおうと、英語での観光PR動画を製作しました。ALTの先生方に私達が考えた観光プランを実際に体験してもらい、海外の観光客目線でも魅力的なプランだよとおっしゃっていただいたうえで英語での動画制作に協力いただきました。また、QRコードを読み込むとARが出現する観光地のフォトフレームも作りました。外国人には日本の漢字や毛筆がクールだと感じるそうなので、フレームに出てくる漢字を書道部に手伝ってもらいました。

高齢者向けには、実際に目に触れて手にとれるものを設置しようと、水郡線PRのうちわやポスターなどデザインして試作しましたが、実用化にはコスト面の課題がわかりました。

探究学習から得た学びと将来の進路展望

藤島 ペーパーテストとは違い、探究学習は問題が可視化されていないので、日常の中から自分で洗い出して解決策を導き出すことが必要でした。卒業後は農学部に進学したいと考えていますが、就農者をサポートする仕事に就き、高齢化等による作付面積の減少など課題解決に取り組みたいです。

山崎 目標を決めてから考えが凝り固まり、行き詰った時には石井先生のアドバイスで考えを広げることができ有難かったです。多角的に見ることや代替案を考えることも身に付きました。将来は人口減少に歯止めをかけ、誰にとっても住みやすい街づくりを考えていきたいです。

矢板 宣伝の方法を学びました。初めはPR動画しか思い浮かびませんでしたが、うちわや紙のチラシとデジタルコンテンツのコラボも有効でした。将来は外国へ行って困っている人を助けたい。青年協力隊や在外高官などの仕事に就き、いずれは地元に戻って地域に貢献できる人になりたいです。

金澤 普段から部活のPR動画などを作っていたので、力を発揮できて良かったです。今回は外国人向けのPR動画でしたが、魅力を伝えるのが難しいと感じました。卒業後は国際学部に進学したいと考えています。地元の駅内で催される日本の文化を紹介するワークショップにも参加し、将来は接客業にも挑戦したいです。探究学習を通じて他者のニーズに耳を傾け、寄り添うことを学びました。

小川 主体的な活動が苦手で、克服するために参加しました。少しずつですが、自ら行動することができるようになっています。2年生なので卒業後の進路は未定です。吹奏楽部に入っていますが、探究学習と同じように音楽も正解がありません。音色をどう合わせるのか、など探究学習で学んだことを生かしていければと思います。

探究学習指導 石井先生
「水郡線」をキーワードに活性化プロジェクトとして生徒に声をかけ、学年や部活動も違う6名が自主的に集まってくれました。探究学習は自分の持っているものを出せる、得意なことがある生徒は取り組みやすいと思います。今回は自分の地域やJR、街などイメージしやすいテーマだったので、それだけに「誰かのために」という気持ちのある生徒たちが課題と向き合い、精一杯取り組んでくれました。