データサイエンス特集イベントレポート
データサイエンス教育は新時代へ。学部横断、実務重視、地域づくりなど各大学の個性が光る学びに注目

大学Times Vol.58(2025年11月発行)

【データサイエンス特集】イベントレポート 高校教員対象大学情報セミナー

6月20日、(株)さんぽう主催の高校教員対象大学情報セミナー「大学タイムズPresents 大学におけるデータサイエンス教育が目指すもの」が文京学院大学本郷キャンパスで開催された。当日は(株)ベネッセコーポレーション高校営業本部・中野泰蔵氏の基調講演や、データサイエンス系大学の個別相談会など、学部新設が相次ぐデータサイエンス系大学の学びの違いや目指す将来像などを提供した。中でも、参加6大学の入試担当者による「リレースピーチ」は、各大学の目指すデータサイエンス教育の特徴をコンパクトにまとめた、興味深いプレゼンテーションだったので、その概要を紹介したい。
(リレースピーチの内容は当日の取材内容だけでなく各大学Web サイト等からも参照しています。)

(株)ベネッセコーポレーション 中野泰蔵氏

国公立大学もデータサイエンス系学部が人気に
総合型選抜・学校推薦型選抜が充足率100%超える

(株)ベネッセコーポレーションの中野氏の基調講演では、新課程入試の結果を受けた傾向についてデータをもとに解説。特筆すべきは、少子化の影響で大学の定員充足率が懸念される中、国公立大学の総合型選抜・学校推薦型選抜ではデータサイエンス系学部(総合科学)の充足率が100%以上であると示された(写真参照)。新しい学問でも受験生の関心が高い分野であることが伺える。

ビジネス系学部でしっかり学ぶ
就活にも役立つICT・データサイエンス
嘉悦大学(キャリアデザインセンター 菊川 和美主任)

経営経済学部 経営経済学科

「文系学生ほどデータサイエンスが強みになる時代」と未来社会を予測する嘉悦大学は、全学生を対象にデータサイエンス教育の充実を図っています。2019年度から始まった、全学生履修のICT・データサイエンスプログラムは、文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル/応用基礎レベル)」として認定され、他大学の情報系学部と遜色ない教育環境を整備しています。数理・データサイエンス・AIの導入的知識、基礎的スキル、心構え(態度)を修得し、基礎から段階的に学べるので、数学が苦手でも「経営・経済」を学ぶ学生に求められる将来の強みとなるデータ活用術を修得できます。さらに、上位レベルの「応用基礎プログラム」では、修得したリテラシー(初級)レベルの技術・知識・心得を発展させ、経営・経済に関わる自らの専門分野において数理・データサイエンス・AIを活用し、課題を解決できるようになるための実践的な応用基礎力を、実データの分析演習等を通して修得できます。本プログラムの指定する科目において全ての単位を取得した学生は、「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)(応用基礎レベル)」の修了が認定され、就職活動でも大いに役立っています。

地域をテーマに全学部で専門分野として
AI・データサイエンスを学ぶ
敬愛大学(成松 恭平教授)

経済学部/国際学部/教育学部/情報マネジメント学部

本学は千葉県の地域大学として、「成田」など地元をテーマにした分析などの学びを提供しています。データサイエンスの授業は専門の先生が指導していますが、これまで副専攻だった「AI・データサイエンス」は今後、主専攻になる予定です。文部科学省の数理・データサイエンス・AI教育プログラム「リテラシーレベル」と「応用基礎レベル」の2つの認定を受けた千葉県内で初のプログラムです。数理・データサイエンス・AI教育のスタンダードとして普及が進められている内容を体系的に学ぶことができます。またチャットGPTのリテラシー教育として、大手通信会社の方が学生に講義を行っています。

3年次には、履修者を対象に「就職活動Multi 診断」を実施しています。AI・データサイエンスで「できるようになったこと」×「それを裏付ける経験や実績」×「目標とする業界や企業」について、自分の言葉でまとめることに取り組みます。3つの要素が掛け算となり強い説得力が生まれます。就職を見据えて、豊富な実践の場を用意しています。

応用数学・統計学・情報科学から
課題解決力を身につけ、実務体験で磨く
城西大学(吉田 裕亮特任教授)

理学部 情報数理学科

数学科を改組した情報数理学科は、2025年度から東京紀尾井町キャンパスに開設しました。日本は国の方針としてSociety5.0の実現をめざし、産業界が中心となってDXを進めています。大学設立時から数学の教育に力を入れてきた城西大学の情報数理学科は、応用数学、統計学・データサイエンス、情報科学の3分野の専門科目群があり、”学びたい”という気持ちに応える充実したカリキュラムで、数学的思考力を持つ情報数理のエキスパートを育成します。本学科では、「数学」「情報」の両方の教員免許状が取得できます。

数学的素養に基づいて身の回りの様々なデータを的確に解析できるよう、社会での情報の位置付けを知り、コンピュータの中身を理解し、データ構造やアルゴリズムの基礎から応用に結びつけ、データベースを使いこなし、深層学習等の最先端の情報技術を身に付けることで、統計やデータサイエンスに基づく課題解決力を、それらの根底にある数学の学びから築きます。

東京紀尾井町キャンパスを学びの拠点として立地を活かし、近隣企業や自治体から招くゲスト講師による授業、近隣企業や官公庁でのインターンシップなど、ビジネスや社会の最前線に触れながら情報数理を学びます。企業や行政で使用している実データを活用し、社会課題を解決する実践的な学びができることが大きな特長で、実社会やビジネスの現場で発揮できる、実データ解析力と実課題解決力を、実務体験のなかで磨きます。

「文理融合」の視点から人と人、人と地域、
人と自然が共生する社会創造に貢献する
文京学院大学
(保健医療技術学部 理学療法学科 飯田 開特定助教)

ヒューマン・データサイエンス学部 ヒューマン・データサイエンス学科※2026年4月開設

ヒューマン・データサイエンス学部は、理系科目や情報処理の知識だけではなく、心理学や社会学、経営学といった人文・社会科学などさまざまな視点から社会課題を理解する、文系・理系にとらわれない、「文理融合型」の学部です。文京学院大学が培ってきたさまざまな経験知に、新たにデータサイエンス・AIの活用を加えることで総合知を生み出し、人と人、人と地域、人と自然が共生する社会創造に貢献できる人材を目指します。データサイエンスのリテラシー(使いこなし)人材を目指し、1年生から社会との接点を持った学びを展開していきます。社会課題発見、データサイエンス・AI活用、プロジェクトマネジメントの3つのスキルは、データを活用して課題解決をするために必要とされるこれからの時代のヒューマンスキルです。データの取得から活用方法、各分野の専門知識を「修得」し、企業や地方自治体の社会課題プロセスを「体験」し、そしてデータを活用して社会課題解決に取り組む「実践」する学びを超経験的に行っていきます。

「地域づくり」「ヘルスケア」「異文化間コミュニケーション」という社会に密接した領域の専門知識を学び、自身の関心が高いテーマを選択して研究できます。1~2年次では、課題解決型学習によりデータサイエンスの基礎知識と社会課題への理解を深め、3年次からは選択した領域の知識を深めながら、プロジェクト型学習や卒業研究に取り組み、社会での実践的な応用力を身につけます。少人数制のゼミなので、きめ細かく実践的な学びが可能です。

分析力×創造力×営業力でマーケティングを学ぶ
亜細亜大学(堀 玄教授)

経営学部 データサイエンス学科

デジタル技術を駆使して社会や企業のさまざまな課題を解決する力を養うため、データサイエンスと経営学のハイブリッドな学びを展開しています。アジアを中心に、世界で活躍できるDX人材を育成します。データサイエンス学科のカリキュラムは、文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(MDASH)」の認定を受けています。リテラシーレベルの科目「情報と社会Ⅰ」を1年次に必修で学び、続いて応用基礎レベルの全学共通科目群を学修します。カリキュラムは、経営学部を母体とする強みを活かし経営や組織の論理を理解したDX人材の育成、データサイエンス・AIの最新知識と社会で役立てる実践力の修得、英語で学ぶ専門科目など専門科目の修得を通してグローバルに活躍する専門性と英語力を養う、という3つの学びの領域で構成されています。統計検定2~4級合格を目指し、プログラミングが得意であれば数学が苦手でもチャレンジしてください。

学科の特色として、履修モデルを提示している3つの志向科目群があります。【サイエンティスト志向科目群】は、ビジネスや社会を理解するためのデータ活用の手法を使いこなす「分析力」を、【クリエイター志向科目群】は、ビジネスの現場や日常生活を便利にするソフトウェアを開発する「創造力」を、【ビジネス志向科目群】は、新規ビジネス考案から財務管理、人事管理まで組織運営の基礎となる「経営力」を、それぞれ磨きます。

AI×ビッグデータを駆使し
実践的な活用スキルを身に付ける
武蔵野大学

●データサイエンス学部 データサイエンス学科
●通信教育部 国際データサイエンス学部 データサイエンス学科※2026年4月開

武蔵野大学は2019年、私立大学で初めてデータサイエンス学部を開設しました。東京有明キャンパスにて、データサイエンスの中でもAI×ビッグデータに特化した学びを提供しています。文系/理系どちらの学生でも学べる、アジャイル型学修(社会実装をもとに改善を図る)を取り入れ、1年生の後期からゼミ形式の「未来創造プロジェクト(PJ)」を始めます。アウトプットを重視し、実社会で活用できる力を身に付けます。

2026年4月開設の通信教育部国際データサイエンス学部は、時間や場所を気にせず、通学制のデータサイエンス学部データサイエンス学科と同様のカリキュラムで学修ができます。主にメディア授業(オンデマンド型及び同時双方向型のオンライン授業)となっており、オンデマンド型では授業を行う教員が課題に対する指導や質疑応答等の十分な指導を行い、同時双方向型においてはZoomやTeams等を使用し、対面授業に近い環境で質問の機会を確保しながら授業を行います。

創造力、イノベーション力、エンジニアリング力を備えたデータサイエンティストは、情報通信分野のみならず製造、金融、医療・介護・福祉、広告、農業などさまざまな分野で求められます。ビッグデータ、AIを自分のアイデアと掛け合わせることで、あらゆる分野で活躍することができます。

AIによって世の中が変わる
これからの時代の“ヒューマンスキル”とは
文京学院大学 ヒューマン・データサイエンス学部
教授&助教メッセージ

文京学院大学 ヒューマン・データサイエンス学部(2026年4月開設)
渡部 吉昭 教授(写真左) 文京GCIセンター長
岩舘 豊 助教(写真右)

渡部 「来年春に開設の新しいデータサイエンスの学部です。本学部はデータやAIを使って、身近な人の力になりたい人に向いています。「地域づくり」「ヘルスケア」「異文化間コミュニケーション」などを通じて、データサイエンスのリテラシー(使いこなし)とビジネスの両面から基礎力を身に付けます。本学部が既存学部(外国語学部、経営学部、人間学部、保健医療技術学部)のハブとなり、各分野がデータ分析と可視化によって、さらに進化を遂げていきます。データサイエンスは「職人技が数字で可視化される」手段であり、課題解決策として学びますので、PBL型の授業を多く取り入れ、さらに外部企業とのコラボレーションによって、実例をもとにした分析の授業を行っていきます」

岩舘 「私は都市研究の観点から、都市における第三空間(サードプレイス:自宅と職場・学校以外の居場所)の意義などを研究しています。街へ出て、自分の目で見る社会調査(フィールドワーク)を行ってデータを集め、分析します。たとえば子どもたちにとっての「駄菓子屋」の意義を考えたり、地域づくりの一環としてアクションリサーチ(実際の商店街で運営に参加しながらデータ分析すること)も行っています。このように「フィールドワーク×データサイエンス」の分析結果を地域の共有財産として還元することで、関わる人々との関係性が豊かになり、自分自身も変わるなど、新たな魅力が見つかるかもしれません」