【特集】大学のキャリア教育で選ぶ大学選択のポイント―入学前・後準備教育?いわんやキャリア教育をや!?―|大学Times

大学Times Vol.2(2011年7月発行)

【特集】大学の新「教育力」大学選びの新基準
今春から義務化された「キャリア教育」はどう行われる?

T.大学のキャリア教育で選ぶ大学選択のポイント
―入学前・後準備教育?いわんやキャリア教育をや!?―

キャリア・アドバイザー研究所 所長
葛西紘一

①はじめに この課題に対し、先に私の考えと結論を提示し、経緯は後述としたい。

「キャリア教育力で選ぶ大学選択のポイント」
1)「キャリア教育力云々」は、その大学のFD取り組みをグラフ化し、推移を見て評価判断
※毎年の読売「大学の実力」調査を活用
2)「継続的プログラムの有無云々」は、大学案内に、4年間の授業スケジュールが明記されているか
※各大学の冊子を比較

高大接続の取組みが大学の教育力を底上げ

②キャリア教育―これまでの経緯

高校現場からすれば、いつ大学が「キャリア教育」という名の「教育!?」に取り組んでくれるのか、疑問を持ちつつ今日までを見守ってきた。と言うのも、1999(平成11)年には、早キャリア教育の概念定義と、主な取り組み内容とが中教審答申に明記され、2002(平成14)年11月には、国大協第3常置委員会(現教育・学生委員会)が「国立大学生の就職活動に関するアンケート調査報告」を発表し職業観形成に関わるキャリア教育を「形から質へ」、「就職支援からキャリア支援へ」、「会社選択から生き方支援へ」とはっきり謳い、さらにはカリキュラム化まで押し進めた考え方を、大学側はもう既に念頭に置いて模索はしていたという事実から本題を進めていきたいと思う。

大学側には、既にこの教育を始めるべき前提とも言える、学習支援を要とする学生が9割近くに達していたと言う事実、さらには、頭の痛い問題として、卒業後の離職者「7・5・(3?)」を始め、フリーター、ニートと言った新たに社会問題化された件等も、大学の教育現場には突きつけられていたはずで、あの時既に報告書通り事が進んでいれば、このように中途半端な理解のキャリア教育は行われなかったはずである。高校現場としては、あの後どのように「それ」が生かされ、かつ実践されて来たのか、その経緯も含めて考えてみたい。

と言うのも、やっとこれらの教育改革を検証する手立てとして、08年から読売新聞に掲載され始めた「大学の実力 教育力向上への取り組み」の全国調査は、実に画期的なものであった。初めて世に、大学の教育力の内部状況がデータとして明らかにされただけでなく、これからの大学のキャリア教育を含む、様々の教育改革を、このFD※は考える視点として、大学選びの大いなる基準となってきたからである。
※FD(ファカルティ・ディベロップメント)…授業内容・方法を改善・向上させるための組織的な取組み・活動の総称

2004年に施行された教育改革FDの取り組み状況を検証することで、その大学が全学を挙げた取り組みを見せているかどうかを実際の大学を例に熱意や真剣さも含め吟味してみたい。

これからの大学の評価基準は、従来の偏差値一辺倒主義から、新に「大学の教育力」を見直すことで、4年後の学生一人一人の成長度を尺度に大学を選ぶ時代が、やってくる。

そのことを念頭に、FDの取り組み、中でも入学前準備教育、入学後準備教育という高大接続の連携プログラムの取り組み状況が、その後いかなる形で学生生活に反映されているのか、その点に着目しながら、1年、4年後の退学率推移と共に、大学の教育力を検証してみたい。
今後の大学選びのポイントになればと思う。

キャリア教育を通じて期待される人材は即戦力よりも組織のリーダー

③キャリア教育の準備段階―FD取り組み状況

この点を考える一つの指標として、先ほどの「大学の実力」全国調査(注、詳しくは中央公論社刊「教育ルネッサンス 大学の実力」読売新聞教育取材班著。私の公開授業も“退学率公開が刺激に”と題して掲載。参照)は、非常に有効なバロメーターになると言える。この調査結果の項目を抽出し、グラフ化してみることで、その大学には、キャリア教育が育つ土壌があるのかどうか、その辺の教育的インフラも含めて良く見えてくるはずである。ここでは二つ大学を例に模索してみたい(下記参照)。

キャリア教育の準備段階教育と相関する退学率(PDFが開きます)

この2大学に共通して言えることは、山形大学は、教員同士で授業を“診る”『授業改善クリニック』が、また金沢工業大学では、『教職協同による徹底した学生指導体制』や『学生一人ひとりを大切にフォロー』が高く評価(「教育ルネッサンス」読売新聞刊)されている点にある。基本的には、準キャリア教育に等しい内容のカリキュラムが既に行われているか、ないしはキャリア教育を何時始めても良い環境にあると見るべきである。今一番の課題は、FD推進の阻害要因にも挙げられている『個々の教員が他の教員の領域や教育方法に踏み込みにくい風土がある』とする大学が346大、また『教育業績よりも研究業績重視』の大学も162大あり、大学のアカデミック性が逆に様々な点で壁に成っている。これは、一考すべき点である。企業もかつての即戦力から組織のリーダーになれる人材を求め、その為の論理的思考能力やコミュニケーション能力、人間関係形成能力を期待している。キャリア教育の原点は、そこなのだが。

【プロフィール】

葛西紘一(かさいこういち)

キャリア・アドバイザー研究所 所長/埼玉県高等学校進路指導研究会顧問/元武南高等学校ガイダンスセンター所長/元埼玉県高等学校進路指導研究会副会長