大学Times Vol.2(2011年7月発行)

キャリア教育の取り組みアンケート調査(さんぽう調べ)の有効回答のあった243大学を総括する。各校教育方針の下に独自の科目「キャリア教育科目(札幌学院大学)」「キャリアを考えるT(駒澤大学)」などを企画してはいるが、特にここ1・2年の動きは、模索と混迷を表す「予定」「検討」の言葉が記述に目立った。内容も就職支援(ガイダンス・インターンシップ等)を強化するに留めた大学から、既に学生の自立を促すキャリアデザイン等の授業を正課に配置、必修・選択化し、意欲的な取り組み姿勢を見せている大学等、実に取り組みの差が大きく目立った。

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表1のこれらの大学に共通して言えることは、各校の特性を生かしつつ、独自に開発または工夫したカリキュラムがプログラムとして具体的に明記されている点である。
このうち、4大学は設置年が1949年とまったく同じであり、ある種のいい意味でのライバル関係にあるようだ。次項目の伝統校(院進学率が高い大学)とは対照的に就職率でその実績を出している。
この5大学共、底流には人間発達・人間形成論的な考えがあって、自らが人生を切り開いていくための援助をシート・ノート等でデザインさせる工夫を出している。
特に小樽商科大の取り組みは、単科大学であるという特性もあるが、キャリア教育と言う以前から独自に、それも入学直後から学生への意識付けとして「将来」を見据えて考えさせるプログラム作りをしているのが特長である。
和歌山大学の取り組みはすべての大学に望まれる検討項目で、発展的なキャリア教育はこのような土壌でこそ育つものである。「Plan・Do・Check・Act」に「See(評価)」を加味し、毎年度検証しながら、4年間のスパンで継続的、計画・発展的な連携科目の設置が必要である。
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表2の公立ベスト5の上位3大学は医療系で、卒業生(外部講師)と在校生との交流会や講演を積極的に組み込んでいる点が共通している。
公立大は専門大学が多いためか、就職支援のための科目の設置が多い。
4、5位の両大学は医療系でないにも関わらず、就職率が高いのは、キャリア教育と銘を打たないまでも、従来の取り組みの中に、低学年からの就職支援プログラムが導入されていた。今年度からの取り組む姿勢に着実性が見られるのは、これまでの経験が生かされているからである。
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表3の就職率平均を上回っているこれら大学の中での一番の特長は、医療系(看護)の大学が1、2、5位と続いていることである。これは目的意識の明確な学生が入学して来ていること、キャリア教育の位置付けも支援が主で、講演やインターンシップ等が他大学、他系列よりはるかに豊富な点が特色である。これは、公立大の就職率の高さと共通した部分だと言える。また、資格を有することからその点の教育も充実していることが、この実績に繋がっていると言える。
次年度に向けて、よりキャリア教育科目(キャリアプランニング、キャリアデザイン等)に力を入れたいという動きも記述にあらわれている。
なかでも愛知工業大は、推薦でも小論文を取り入れ、さらには女性枠もあることから、コミュニケーション能力が理系にしては比較的高いこともこの数値の高さの背景にあるように思う。
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表4のトップ進学率を誇る1976年設置の2大学は、就職支援を主とした取り組みになっている。工学部という性質上か、キャリア教育ではガイダンスとインターンシップに力を入れる傾向が強い。
1949年設置の3大学中2大学は、キャリア教育にシフトする体制作りに入っているようだ。一方就職支援の面では、産学官連携であるとか、地域の企業との接触など、就職率約3割の大学としては、その点の取り組みも明確化している。
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〔69/243校(28.3%)(注)他に未定1校、していない1校。平均就職率有効50校 75%〕
早急に23、24年度中に大幅に改善される可能性が高い大学である。主に4年間継続するための計画的、発展的なプログラム策定で予定している。部署、管轄の一元化が図れず、「誰が、どこがやるか」という初歩的な段階での悩みも見られる。
就職支援のプログラム作りは、既存の充実化でとりあえずの間に合わせは出来ているが、人間(人格)形成論の立場から見たキャリアプラン、キャリアデザイン科目の設置には、専門の指導者不足から出遅れているようで、その点の検討予定が目立つ。
「Plan-Do-Check-Act」(和歌山大学)の「Check」を除くプログラム作りは出来ているが、なおかつ「Check」と「See(評価)」を検証しながら、より充実させようとしている大学が多い。
注目したい大学例としては、表5の通りである。
皇学館大学の取り組みの3点は、キャリア教育を始める前提として重要な条件整備として必要なものである。
甲南大学のように全学を上げて組織的に取り組むためには、一丸となって全学部共通のプログラムを企画する必要がある。
キャリア教育の各大学の取り組みを見ると、足並みをそろえることの難しさを痛感する。全体的に中教審答申に基づく高大接続を踏まえているものが少なかった。義務化が始まったばかりの大学のキャリア教育には、高い教育力が期待されており、今後の展開を引き続き注目していきたい。