【グローバル系大学特集】学長インタビュー 国際基督教大学(ICU)|大学Times

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大学Times Vol.37(2020年8月発行)

【グローバル系大学特集】学長インタビュー 国際基督教大学(ICU)

国際的視野を養うために大学はどう取り組むべきか?

グローバル教育を目的とする大学の学部・学科の新設が相次いでいる。この潮流は間違いなく、今後も続くであろう。「国際関係の変化」「情報革命」など世界が大きく変わりつつある今日、国際情勢はもとより異なる価値観や文化を理解し、自分の考えや意思を明確に伝えられる“国際的視野を持った人材”が内外から強く求められている。全世界がコロナ禍の真っ只中にあるが、日本のグローバル教育をリードする大学は今後どのような展開を考えているのかを考察する。

国際基督教大学 学長 岩切 正一郎 (いわきりしょういちろう)

国際基督教大学 学長 岩切 正一郎 (いわきりしょういちろう)

1959年生まれ。東京大学文学部フランス語フランス文学専修卒業、同大学院人文科学研究科仏語仏文学専攻修士課程修了 (M.A.)、同大学院人文科学研究科仏語仏文学専攻博士課程満期退学、パリ第7大学テクスト・資料科学科第三課程修了 (DEA)。
1996年国際基督教大学教養学部助教授、同教授、同アドミッションズ・センター長、同学部長を歴任。2020年4月より現職。専門はフランス文学、演劇。蜷川幸雄演出作品はじめ戯曲翻訳を多数発表。2008年第15回湯浅芳子賞(翻訳・脚本部門)受賞。

大学の「教育力」に注目した順位発表
「THE世界大学ランキング日本版」とは?

3月24日「THE世界大学ランキング日本版2020」がリリースされ、国際基督教大学(ICU)が2年連続で私立大学1位、国公立大学を含めた中でも2年連続で総合11位となった(別表1参照)。イギリスの高等教育専門誌「THE(Times Higher Education)」が毎年発表し、今年で4回目。【教育リソース】(学生1人あたりの資金、教員比率など5項目)、【教育充実度】(学生調査、高校教員の評判調査など5項目)、【教育成果】(企業人事の評判など2項目)、【国際性】(外国人教員比率、外国人学生比率など4項目)など【大学の教育力】にフォーカスした4指標16項目で構成されている。

2019年発表順位より、学生が自分の大学を評価する学生調査が【教育充実度】項目に加えられ、ICUが私立大学4位→1位、総合16位→11位と躍進、2020年も同順位を堅持した。調査結果は欧米・アジア諸国を中心に留学先や提携先大学選びの資料としても活用されており、国内においては「偏差値とは異なる大学選びの指標」として大学受験関 係者に認知されつつある。
(ランキング詳細はwebサイト参照)
https://japanuniversityrankings.jp/rankings/

総合ランキング

ICUが献学以来力を入れている
「対話重視の学び」が学生からも高い評価を獲得

「THE世界大学ランキング日本版」におけるICUの評価は、【教育充実度】と【国際性】が特に高いのが特徴です。【教育充実度】については、昨年より学生調査が加わったことで大きく順位を上げました。ICUでは献学当初より少人数による対話を重視した授業スタイルを貫き、学生主体の学びを 基本としています。かつての大学は、教員の一方的な講義を学生が聞いてノートを取るスタイルが多かったのですが、ICUでは教員と学生が、「人」と「人」として一緒に考えていくというスタイルで共に学びを深めています。たとえば学生調査の項目にある【クリティカル・シンキングの成長支援】について、学生が批判的思考を養うためには、絶えず自ら思考することが求められる「対話」の経験を重ねることが必要不可欠です。学生自身が受け身ではなく、 主体的に参加することで自ら考える力を育み、そのうえでさまざまな人と対話をくり返すことが大事になるのです。このトレーニングが実社会へ出てからも「受け身ではなく自分の考えを持って問題解決に取り組める」人材の育成へと繋がります。

大学での充実した経験は卒業後、各々の自信になっています。ICUの卒業時アンケートでも学生生活の満足度が大変高く、母校を誇りに思う人も多いようです。

「国籍」という区別を超えた
“異質なものの集合体”が国際性

ICUには世界50カ国以上から様々な背景を持った学生が集まり、異なる「国籍」という区別を超えた多様性があります。ICUは日本で初めて校名に国際という言葉を冠し「国際基督教大学」として献学しました。学内公用語も日英バイリンガルと学内組織など大学全体に多様性を受け容れる価値観が定着しています。国際性とは異質なものが集まって一つになっていることであり、ICUには世界に拓かれ異なるものを受け入れる土壌があるのです。

教科型ではないICUの入試問題
世界の中での教育の在り方へ布石を打つ

「THE世界大学ランキング日本版」が偏差値とは異なる指標として認知されつつありますが、現在日本の大学受験は教科型(国、数、英など与えられた問題で何点取れるか)です。模擬試験などで得た点数で算出される偏差値が合否判定の指標となり、高得点を取るための訓練を受験対策としています。今年はコロナ禍による長期休校の影響で、「大学入学共通テスト」や一般選抜の出題範囲まで授 業が終わらない事態が懸念されています。

ICUの入試問題は教科型ではなく、幅広い分野に関する長文を読み、自身の持つ知識と統合し、考え、答えを導き出すスタイルです。フランスのバカロレア(1つの課題に対し論文を書く入学試験)など、諸外国の大学入試に近い出題です。もちろん、知識を身につけるのは大事ですが、グローバル社会が加速する今日、果たして日本の偏差値は世界に通用す るのか?ということを、ここで一度考えてもらいたいです。ICUの過去の入試問題に対しては「受験対策のしようがない」という声も聞きますが、日頃から本をよく読み、何が書かれているかなど自分で考え、発信する力を身につけておいて下さい。このような作業が好きで苦にならない高校生に、是非ともチャ レンジしてもらいたいです。

学問の普遍性を認識し対話から始まるのが
真のグローバル教育

経済や法律なども同様ですが、学問や教育とは元々グローバルなものであり、大学におけるアカデミズムは基本的に、同じ普遍性の中にあると認識しています。敢えて「グローバル」と掲げなければ認識されない現状に、些か異和感を覚えます。大学のユニバーサル(普遍性)の中に、ローカル(特殊性)やダイバーシティもあるのです。大学における真のグローバル教育は自分の意見を言い、相手の意見を聞く【対話】から始まります。対話の中では常にエビデンス(科学的根拠)やロジック(論理)が問われます。英語でディスカッションすることがグローバル教育なのではなく、何をどう対話するかが大事なのです。

広い視野から世界を見て真実を捉える努力を

今はインターネットで世界のネットワークが広がりグローバル化を実感しますが、一方では自分の関心事のみ情報収集するあまり、何が真実なのかが分かりにくくなっています。さらに今年はコロナ禍が加わり、世界の姿が違う形で見えてきました。「個人の自由」を最も大事にするヨーロッパ各国が、公 共の衛生や社会全体の健康を守るべく数ヶ月間のロックダウンを命令しました。世界のさまざまな姿の中に、日本もあるのです。春先の野菜価格高騰はアジア各国からの技能実習生が収穫時期に入国できず、出荷できなかったことが原因でした。実は同じような事象は欧米でも起こっており、他国からの労働力なくして経済が回らないのは、今や一国だけの問題ではありません。ICUでは、世界中の人々と対話を重ね協調しながらこのような経済格差や労働の在り方などの問題を、解決に導く人材をこれからも育てていきます。