【特集】獣医系大学の現状とこれから 国際水準の獣医学教育を目指して 平成28年から教育改革の実施を検討|大学Times

【特集】獣医系大学の現状とこれから 国際水準の獣医学教育を目指して 平成28年から教育改革の実施を検討

ここ数年、国際水準の獣医師育成のため、獣医学教育の改善が求められ様々な議論がなされてきた。その成果が最近になって纏まり、カリキュラムと臨床実習の質の向上を目的とした改革案が、平成28年を目標に実施の動きがある。

早ければここ数年で新カリキュラムへと移行

獣医学教育は、大きな改革の時期を迎えている。
平成23年3月に行われた「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」では、「共通的に教育すべき最低限の内容を、十分に教育できていない大学がある」という調査結果が発表された。他にも、新分野への対応、キャリアとの関連付け、臨床実習などで、教育・指導が十分行き届いていないという問題点が挙げられ、獣医学教育の改革(図1参照)が早急に必要であるという結論に至った。この改革は、文部科学省と協力者会議とを中心に急ピッチで進められており、モデル・コア・カリキュラム(以下コアカリ)と参加型臨床実習の導入を柱に、早ければ数年以内に獣医系大学で実施される見込みだ。

コアカリとは、獣医学生が卒業までに身につけるべき能力を7系統に分類し、それぞれの科目数や具体的な到達目標を明示したもの。その内容は、大学で6年間に教える獣医学専門教育課程のおよそ7割(講義51科目、実習19科目)としている。残りの3割は、大学ごとに独自の教育内容を割り当てるようになる。

図1 : 国際水準の獣医学教育の実施に向けた改革工程(イメージ)

臨床実習を受けるために必要となる「共用試験」

臨床実習の環境も整備される。5年次から開始される臨床実習の前には、「共用試験」を実施する。この試験の目的は、臨床実習に臨むために必要な知識や技能等が学生に備わっているかを判別することで、獣医系大学で同じ試験内容が共用される予定だ。学生はこの試験にパスすることで、臨床実習に参加することができるようになる。試験の出題項目はコアカリから選定され、合格基準は全体の60〜70%が想定されている。

これまで獣医系大学で行われていた臨床実習は見学型に制限されており、臨床教育の質の向上のため、参加型実習への改善が強く求められてきた。参加型実習が実施されなかった理由は、無免許の学生が実習で診察をする行為は、獣医師法第17条(「獣医師でなければ、飼育動物の診療を業務としてはならない」という内容等)に抵触するため。しかし、平成22年6月に農林水産省から法的解釈を見直した見解が発表され、「事前に学生の評価を行う」「指導教員の指導・監督・監視下で行う」などの諸条件を満たすことで参加型の実習が可能となった。

獣医師を求める場は多様化
社会ニーズに応えるための教育改革

また、平成24年度から一部の国公立獣医大学で設置された「共同獣医課程」も、実はこの教育改革の一環として取り組まれていた「教育研究体制整備」の結果である。それぞれの大学の利点を活かした、質の高い教育の実現を期待されているが、単独で改革内容を実施するには規模や設備などの面で難しい大学のための措置とも考えられる。本年度からこの共同獣医課程はスタートしているが、講義のやり方や設備の共有方法など、まだまだ課題点は多い。

この教育改革のそもそもの目的が"獣医師の質の向上"であるため、大学での授業や実習内容はこれまで以上に充実する(学生にとっては苦労する)ことになるだろう。獣医師を求める場は、生命科学研究、小動物・産業動物臨床、家畜衛生など広範囲におよび、近年ますます多様化している。この教育改革がスタートし軌道に乗ることで、獣医師を目指す学生にとっては苦難の道となるかもしれないが、今まで以上に質の高い教育とそれに相応しい多彩な活躍の場が約束される、と言っても過言ではないだろう。