【特集】薬学部の現在と未来 変わる薬科大卒生の就職状況|大学Times

【特集】薬学部の現在と未来 変わる薬科大卒生の就職状況 将来へのビジョンを明確に持つことで就職先にも変化が 病院希望者が更に増加 出版など異業界も視野に

『大学タイムズVol.3』では、薬学部6年制初となる卒業生の2011年11月時点での採用状況について、調剤薬局業界、製薬業界の動向を取り上げた。今回はその追跡調査として、昭和薬科大学を取材。同大学では、3年前に学生の就職を支援するキャリア・サポート・ステーションを設置し、6年制カリキュラムに対して早期から対策を講じてきている。その一連の取り組みを通じて、6年制薬科大学卒業生の就職先がどう変化したか、学生課課長の島ア聡氏に話をうかがった。

キャリア・サポート・ステーションを導入して
どのような効果が見られましたか?

島ア 私が本学に着任したのは5年前(2007年)。薬学部がまだ4年制だった当時の就職先は、調剤薬局と調剤併設のドラッグストアが50%、製薬企業とCRO、病院がそれぞれ10%、進学が15%、その他5%という構造が続いていました。他の大学の就職状況を調べてみたところ、大学ごとに業種別の比率はかなり異なっており、昭和薬科大学の特長は調剤薬局の比率が高いということが分かりました。この理由を考えていくうちに、我々の就職支援が充分ではないのではないかという結論に達しました。調剤薬局を目指すことは良いことなのですが、学生たちの間で、調剤薬局は「給料が良い」「内定を取りやすい」とか、安易な考えで就職先として選択している傾向がある。本当に調剤薬局で働きたいという学生が就職しないと、すぐに転職して長続きせず、企業にとっても大学にとっても望ましくない結果となります。

そこで、2008年にキャリア・サポート・ステーションを設置。「薬剤師としての就職先にはどのような企業があるか」「どのような業種・働き方があるか」ということを、製薬会社の採用担当者や現職のMRなど、色々な方を招いたガイダンスを実施して情報発信を続けてきました。そして、先日6年制の第一期生が卒業。それを受け、昨年度からのデータと比較し、就職先にどのような変化がおきたかを調べました。

その結果、就職先の約50%を占めていた調剤薬局と調剤併設のドラッグストアが約45%に減少し、15%だった進学がゼロになりました。減少した合計の約20%分、病院と製薬企業への就職が増加していました。これは今までにない顕著なトレンドの潮目です。

反響の大きかったガイダンスは?

2011年12月に昭和薬科大学で実施された、合同説明会の様子

2011年12月に昭和薬科大学で実施された、合同説明会の様子

2011年5月の春先には、病院のガイダンスを実施しました。特に、東京女子医科大学の薬剤部長を招いたガイダンスは、学生にとってインパクトが強かったと思います。病院の薬剤部で働く方のお話を聞ける機会は滅多にないと、非常に多くの学生が殺到しました。また、ガイダンスではありませんが、2011年11月に企業や病院などを招いた合同説明会を実施しましたが、その時も学生の興味は病院に集中していました。大病院ともなると、最先端のチーム医療が展開されていて、薬剤師もその一翼を担います。6年制実施から加わった実務実習で、そういった現場の雰囲気に触発され、病院を目指そうと思う学生が増えたのではないでしょうか。

そこで薬剤部長からは、現場の厳しさをありのままに語ってもらいました。病院は調剤薬局に比べ初任給は安いし、夜勤もあり勤務形態も厳しい。勿論、最初からチーム医療に加われるわけでもない。最初の数年間は修行の毎日。その中で、モチベーションを保ち続けられる人でないと病院勤務は難しいと。しかし、厳しい状況を理解しながらも、病院勤務にやりがいを見出して頑張ろうと思った学生がいたのでしょう。23年度の卒業生のうち、研修生も含めた50人が病院の薬剤部に採用されています。

また、薬剤師が働けるフィールドは広いということを知ってもらうために、IT業界や出版・編集業界からも講師の方をお招きしてガイダンスを実施しました。薬学関係の専門書を扱う出版社の編集長??その方は薬剤師の資格をお持ちなのですが??からは、「なぜ調剤薬局や製薬企業を選ばず編集者になったのか?」。その経緯をお話しいただきました。業界ではかなり部数が出ている医薬書があるのですが、それらの本は薬剤師が編集している。その事実を知った学生たちは、これまで就職先として視野に入れていなかった業界にも、薬剤師が活躍できる場があると判り、驚愕するとともに非常に興味を示していました。

今後、薬剤師の就業環境はどのように変化するとお考えですか?

今後の日本の医療は、医療費増大と高齢化が進み、在宅医療が主流にならざるを得なくなると考えられます。では、在宅医療に関わる医師や看護師、薬剤師への収益配分は、どうなるのか? 課題が多いのも事実です。また、医師、看護師、薬剤師らのスタッフによるチーム医療を実際に実践している病院は、全体から見ればまだわずかではないかと思います。

しかし、「病院におけるチーム医療こそが目指すべき方向である」という認識は、多くの医療関係者が持っています。もし、日本の医療にそれを実践する体力がついて、採算も取れるようになってくれれば、薬剤師にとっても活路が開けるのではと考えています。

島崎聡氏

【プロフィール】

島崎 聡氏

昭和薬科大学 学生課課長