【インタビュー】企業・大学・学生にきく!就職事情の最前線(連載第2回)|大学Times

大学Times Vol.5(2012年6月発行)

【インタビュー】企業・大学・学生にきく!就職事情の最前線(連載第2回)

企業Voice パナソニック株式会社 新分野へ挑む精神を評価 変化を受け入れられる柔軟な思考と新しい分野に臨む技術者に期待

パナソニック株式会社 新卒・キャリア採用チーム 参事米山 雅武 氏 1998年中央大学法学部国際企業関係法学科卒業

これまで技術大国日本を牽引して来た電機メーカー。現在は海外メーカーにシェアを奪われ、その存在価値が薄れつつある。大手電機メーカーのパナソニックは、今後の世界的な競争に生き残るためには、優秀な技術者の獲得・育成が不可欠だと断言する。同社が求めるこれからの技術者像について、採用担当の米山雅武氏に伺った。

長期的なビジョンを推しだし学生の獲得をはかる

現在、日本の電機メーカーは非常に厳しい状況にあります。特にテレビ事業の不振が、日本メーカーに影を落としている大きな原因のひとつと言えます。2005年の時点では、日本メーカーが世界のテレビ市場に占める割合は約48%ありましたが、2010年には約38%にまで低下。一方で、同年の韓国メーカーのシェアは約36%にまで向上。特にテレビ等を事業中心としている家電各社は苦戦を強いられています。

今の学生たちは、こういった動向に敏感です。そのため、採用競争力でみると今年度は特に厳しい状況です。しかし、学生たちには単年度だけで判断をしてほしくないと思っています。そうしてもらうためにも、弊社の経営理念や、目指している姿??環境貢献と事業成長を両立させた「環境革新企業」になるというビジョンなど、中長期的な視点を強く推し出しています。そして、今後、海外メーカーとの競争に勝ち抜くためには、将来にわたって活躍できる優秀な技術者の確保が急務だと考えています。

柔軟な発想が未来を拓く力になる

技術系職種の採用では、学生に「やりたい事業分野」と「やりたい仕事・職種」を選んで受験していただく「マッチング選考」という仕組みを導入しています。そのために、学生に現在の研究テーマや、ご自身の強みをプレゼンテーションをしてもらい、まずはどんな分野・仕事でご自身の技術や専門性、強みを活かしたいと思っているのか、を確認します。

一方、電機メーカーの変化・技術革新は激しく、2年を費やして商品化・事業化しても、5年程度で寿命を迎えてしまうこともあります。そうなると、再び新しい分野に目を向け、研究に取り組まなくてはならないのですが、自分の専門の中でしか物事を考えられないような技術者ですと、そういった状況に対応できず変化に取り残されることがあります。

入社後に伸びる人と伸び悩む人との違いの一つには、変化を受け入れ新しいことに挑むことができる柔軟な思考を持ち合わせているかという点があると思います。採用の際には、技術や専門性を確認すると言いましたが、専門性ばかりを重視して偏った採用を行うと、5年後には活躍の場を失ってしまう人材ばかりになってしまう危険性があります。そのため、技術者には、専門性だけでなく柔軟な思考を求めています。

自分の研究を活かすことだけに注力するのではなく、変化を恐れず新しいことにチャレンジする??学生時代に似たような経験をして対応してこられた人でしたら、弊社でも自ら変わり活躍し続けられるはずです。弊社では採用の際に、「これから何をしたいか」ということも大事ですが、「これまで何をしてきたか」という具体的な事実の確認を重視しています。

グローバルスキルを持つ人材を国籍を問わず積極的に採用

弊社は海外にも数多くの支社や工場を持つグローバル企業です。そのため、毎年、国籍を問わず新卒者を採用しています。2012年には文系・理系あわせて350名の新卒者を採用しましたが、このうち約10%が外国籍の方です。海外でも採用活動を実施しており、海外の大学に在籍したり、留学をしている学生を対象にしたフォーラムなどにも参加しています。今後も外国籍の方や、海外の大学を卒業した日本人、海外留学経験者などを積極的に採用していくつもりです。

その理由は、海外向けの新事業を展開するにあたり、グローバルスキルを持った人材を必要としているということです。このグローバルスキルとは、語学力だけではありません。例えば、現地のマーケティング担当スタッフと円滑にコミュニケーションをはかり、海外で事業を展開させるためには、言葉による表面上のコミュニケーションだけではなく、その国や地域の考え方、価値観を理解できる能力が必要だと考えています。異文化を積極的に受け入れていく力を持った人??たとえ語学力が未熟でも臆せずに異文化に飛び込んでいける気持ちを持った人が、グローバルスキルを有する人材であり、弊社の求める人物像なのです。

ゴールを目に見える範囲に設定してしまっている学生が多い

新卒採用に関わってから特に感じることなのですが、最近の学生は「新しいことにチャレンジして失敗することを恐れている」「変わることに尻込みしている」という傾向が強くなってきているのでは?と感じます。就職先も、自分のできる・わかる範囲で選んでいるように思えます。

弊社の求める人材について、いくつか条件を挙げさせて頂きましたが、その根底で必要とされる能力は“チャレンジ精神”です。たとえ高い専門性と技術を持っていても、チャレンジ精神に欠けるようでは、グローバル市場で活躍することは難しいでしょうし、5年で活躍の場を失ってしまう技術者を企業は必要としません。

今の学生には、「新しいことにチャレンジしたい・チャレンジできるのだ」という気概を見せてほしいです。極端な話かもしれませんが、例えば修士の学生が「大学院で2年間研究してきた成果を捨ててまで、新しいことにチャレンジしてみたい」とアピールしてもいいのではと思います。目に見える範囲にゴールを設定するのではなく、もう少し広い視野を持ち、高い目標を掲げ、失敗を恐れず何事にも挑戦してほしいです。

よく、内定者から「残りの大学生活で何をしたらいいですか?」という質問を受けることがあります。英語などの語学力を磨くことも勿論大切ですが、学生でいられる期間は残りわずかです。新しい趣味に挑戦してみたり、今とは異なる人脈を作ってみたりと、学生のうちにしかできないことを、自ら探し出してチャレンジすべきでしょう。

【技術者の採用】「自分が“わかる”“できる”範囲で就職先を選ぶ傾向が年々強まっているように感じます」

大学・保護者が一体となったグローバル社会で生き抜くための教育

現在、世界における日本の電機メーカーの存在価値は、段々と小さくなってきています。日本の電機メーカーがグローバル市場で生き残り、技術者が30〜40年活躍していくためには、自分に付加価値をつけていくことが必要です。今の時代は、技術者がひとつの専門分野だけで、成果を出し続けることは不可能に近いです。時代やニーズに合わせて、柔軟に変わっていかなければなりません。これからの日本の電機メーカーを牽引する優れた技術者を目指す学生には、色々な分野に幅広く興味を持ち、失敗を恐れず積極的にチャレンジする習慣を身につけてほしいです。

2011年から大学でキャリア教育が義務化されましたが、大学や保護者の方には学生が新しいことにチャレンジできるための後押しや気づきを与える機会を積極的に設けてほしいと思います。

企業Voice 中央大学 社会に適応できる総合力を供えた新しい技術者の養成が大事 段階を経て自分の能力をブラッシュアップ

入学センター長/理工学部教授 白井 宏先生

長引く不況、社会不安を背景に、企業の求人数がなかなか好転しない昨今、2011年度より大学でもキャリア教育が義務化された。多彩なキャリア教育・就職活動サポートを展開する中央大学にその詳細と新学科設立の目的について伺った。

白井 宏先生
1982年静岡大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。1986年ポリテクニック大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程修了。電磁波工学を専門とし、これまでに、各種学術団体・国際会議の組織委員会委員等を歴任。主な著書には「電磁気学」(コロナ社)などがある。

就職課からキャリアセンターへ

かつて大学の就職課は学生に求人のある企業を斡旋することが主な業務でしたが、バブル崩壊後、就職氷河期に入ると事態が一変しました。以前なら入社後、新入社員に教えていた社会人として必要な知識やマナーなどを大学に求めるようになったのです。そこで、本学では就職課からキャリアセンターへと名称を変更し、単に就職先を紹介するだけでなく、入社後もうまくやっていける、会社の中で生き残っていくために必要な力を身につけるための工夫やサポート、具体的な“人材育成”に力を注ぎだしました。

1年次より人材とは何かを問いかける

【技術者の育成】大学の4年間をかけて社会人に必要な力を身につけるサポートを展開しています

大学入学後、1年生全員にキャリアデザイン・ノートを配布します。ノートはキャリアデザインに関する記事、自己分析Note、先輩の体験談の3部構成になっています。そこに、自分の興味や関心、価値観、能力などを書き込むことで、これからの目標を探す手がかりとして活用してもらいます。

入学当初より将来自分はどんな道に進むのか選択しなければならない事を意識させています。さらに、情報工学科を中心に2009年度より、今は全学部でC-compass(コンピテンシー自己評価システム)を独自開発・導入しました。コンピテンシーとは、社会で活躍している人々に共通してみられる行動、態度、思考などの傾向や特徴を意味します。中央大学ではコミュニケーション力、問題解決力、知識獲得力、組織的行動能力、創造力、自己実現力の6つの分野に分け、これらにレベル0〜4の評価基準を設けて、レベルアップするにはどうしたらいいのか計画し、学習・行動に取り組みます。例えば傾聴力が足りないと診断されれば、日常の生活で何を心がければよいか、半年後に振り返って、コンピテンシーがどう変化したのか確認・評価し、改善ポイントを把握して、次の半年に向けて新たな目標を設定します。

大学としてキャリアセンターの活用頻度を高める努力

また、本学ではキャリアセンターで1年次はキャリアデザイン、2年次以降はインターンシップ、3年次以降は就職活動、4年次進路決定後はブラッシュアップの4つを軸として、学生を全面的にバックアップします。

インターンシップは春休みと夏休みを利用して行われ、大学を窓口にして申し込む学校経由プログラムや、産業界で活躍する中央大学の卒業生の協力で運営する南甲プログラムなど、多彩なプログラムを用意しています。ブラッシュアップでは、進路の決まった4年生と大学院2年生を対象に、ブラッシュアップスキームを通じて自信を持って社会人デビューできるよう、社会人としての実践的基礎知識の習得を目指すプログラムを実施します。

他にも、「最強のエンジニアリングになれる意識改革プログラム」と名付けた講演会等を定期的に開催。また、4年次から在籍するゼミはキャリアデザインゼミと称し、少人数でプレゼンテーションやグループディスカッション、キャリアデザインシートの作成を行うなど就職と直結した学びを実践しています。

就業意識を喚起するための就職ガイダンスや就職力をつけるための就職実践講座、OB・OGによる業界・業種研究会、OB・OG就職活動を終えた在学生「CREW」との1対1の相談サポートなど、社会で働く動機づけや就職選択に役立つアドバイスを実践しています。筆記試験対策・エントリーシート対策・面接対策など年間200回を超えるガイダンスを実施して、キャリアセンターを学生にとって身近なものにする努力をしています。

新学部の横断的な学びで問題解決力も持った人材育成にもチャレンジ

【技術者の育成】人間総合理工学科(2013年4月開設予定)ではいろいろな分野の総合した知識の習得を目指します

2013年に人間総合理工学科を新設します。現代社会において、環境、エネルギー、防災、食料、健康など問題が山積しており、これらの問題が複合的に結びついています。そして、問題を解決するためには、各分野の基礎を幅広く築いた上に専門性を備えた、分野をつなぐ核となる人材が求められています。

本学は総合大学の強みを発揮して、総合政策学部の一定の成果をみて、理工系分野の学生にも理工系分野から問題解決にアプローチのできる人材育成に着手する目的で新学科設立に踏み切ったわけです。人間総合理工学科では理工学の分野を横断して学び、俯瞰的な視点から新しい“問題解決型”の提案ができる人材を育成します。

「人を知る・測る」、「人の健康」、「人と生活環境」、「人と物質・エネルギー」という4つの分野を設定し、相関関係がある科目を合わせて履修することで、幅広い視野を養うと同時に、強みとなる専門性を深めます。幅広い理工系の素養を持ち、問題点を見つけて解決法を探る「問題解決型思考」を身につけた学生が、理工系人材に求められる「総合力」を持った人材として、社会の多くの分野で活躍することに期待しています。