進化する大学教育― 生体医工学の未来 ― 医療現場でこそ活きる工学の知識|大学Times

進化する大学教育― 生体医工学の未来 ― 医療現場でこそ活きる工学の知識

現在の日本は高齢社会に突入し、更なる医学や医療の発展、進歩が望まれている。生体医工学は、工学的手法と技術で医学にアプローチすることで、医療技術の飛躍的な成長を後押しすることができるとされ、これからの医療現場では欠かせない学問として注目が集まっている。

生体医工学とはどのような学問なのですか?

工学的観点から医療の発展に貢献

ひと言でいうならば、機械工学や電気・電子工学などの「工学」と「医学・生物学」が融合した領域が「生体医工学」です。病院ではいろいろな機器・装置(医療磯器)が使われており、それらが無いと医師は正確な診断や有効な治療ができません。また、病気の診断や治療を行うためには、生命現象や病気のメカニズムを知る必要があります。これらを実現するために、工学の知識と方法が大きな力を発揮します。

医学に工学的な手法と技術を取り入れ、生命現象や病気のメカニズムを明らかにするとともに、医学診断や治癒に有効な手段を提供する分野が「生体医工学」です。

日本における生体医工学の歴史・実績を教えてください

40年にわたって、幅広く医療分野を支えている

そもそも医学と工学は、かつて全く別の学問として捉えられていました。どちらも古くから人類にとって必要不可欠で、非常に重要な分野であるにもかかわらす、両者のつながりはほとんどありませんでした。

わが国でこの分野の研究が広く行われるようになったのは、40年程前のことです。当初はMedical Electronics(医用電子)またはMedical Engineering(医工学あるいは医用工学)の頭文字をとりME(エム・イー)と呼ばれていました。しかし10年程前からこの分野は大きく発展し、領域も拡大したことから、諸外国で使われているBio-Medical Engineering(BME)、すなわち「生体医工学」が誕生し、今日まで発展を遂げ続けているわけです。

実際に、昨今では飛躍的に進歩した先進・先端的な医療技術により多くの生命が救われています。これを可能にしてきたのが、「生体医工学」である工学技術の医療診断・治療への応用なのです。

生体医工学はどこで学べるのでしょうか?

生体医工学全体を学ぶには工学系学部や保健系学部の専門学科

この分野について学ぶことができるのは、工学系学部や保健系学部の「生体医工学科」、「医用生体工学科」、「医用工学科」などで、これらの学科では生体医工学全般について体系的、系統的な勉強ができます。また、工学部の機械工学科や電子工学科などの従来の学科にも、生体医工学の分野の研究室が設けられている場合があります。しかし、そこでは生体医工学のなかの個別の領域について学ぶことができますが、生体医工学全体を知ることはできません。

「生体医工学科」、「医用生体工学科」、「医用工学科」などでは、「医療機器を作りたい」「福祉に役立つ技術を勉強したい」、「からだの仕組みを知りたい、病気の原因を調べたい」、「からだの中を見る技術や医療情報の勉強をしたい」、「医療の現場で活躍したい」など多種多様な希望に沿って、医療機器や医用画像、人工臓器、福祉機器、医用ロボットなどといった領域について学ぶとともに、研究・開発を行うことができます。

生体医工学

この分野を学ぶことで、どのような進路が考えられますか?

医療機器を“つくる人”と“つかう人”の存在が医療分野を活性化させる

一つは、企業や研究機関に入って、生体医工学の技術者や研究者として医療機器の開発や製造に携わる「医療機器をつくる人」です。高齢社会の日本では、医療費を低く抑え、健康増進をはかることが非常に重要になります。そのためには病気を早期に発見し、効率的に治療できる診断・治療機器を開発し、利用しなければなりません。また一方では、癌や心臓病などの難しい病気に対応できる高度な医療機器の開発も必要です。政府は最近、我が国の最も重要な産業の一つとして、医療産業を取り上げ、これに大型予算を配分し、強力に育成する方針を決めました。

もう一つの進路は、臨床工学技士(国家資格)やME技術者(学会認定)として病院などの医療機関に入って、医療機器・装置を操作・管理を行う「医療機器をつかう人」です。近年の医療機器・技術は高度で、専門家である臨床工学技士やME技術者が求められます。

林 紘三郎氏

林 紘三郎(はやし こうざぶろう)

大阪大学大学院基礎工学研究科教授を経て、2005年岡山理科大学教授、2006年技術科学研究所所長、2008年工学部に生体医工学科が開設されると同時に同学科長、2010年工学部長、2014年神戸大学招聘教授。日本生体医工学会生体医工学科連絡委員会前委員長。