学長&スペシャルインタビュー
「世界で働く」ための最短ルートをめざしグローバルビジネスの即戦力人材を育成
新たなフェーズに突入した専門職大学~グローバルBiz専門職大学~

大学Times Vol.49(2023年7月発行)

学長&スペシャルインタビュー グローバルBiz専門職大学

本年4月、神奈川県川崎市にグローバルBiz専門職大学が開学した。これまでは医療系分野が設置の中心だったが、制度5年目にしてグローバルビジネスに特化した専門職大学の設置により、新たな局面を迎えている。同大学の平岩賢志学長、さらに所管する文部科学省高等教育局専門教育課の宮川卓也室長補佐に展望を伺った。

グローバルBiz専門職大学
学長 平岩 賢志(ひらいわ まさし)

産業界のニーズに耳を傾け開学
企業の即戦力となる人材を育成

本学は75年の歴史ある「外語ビジネス専門学校」のノウハウを引継ぎ、開学しました。これまでも数多くの企業の語学研修等を提供してきた実績から、産業界とは長年にわたる深い結びつきがありますが、開学に際し、人材のニーズについて企業とも対話を重ね、より専門性の高いグローバルな実務能力を身に付けた人材を求めていることが明らかになりました。既存の大学教育では、卒業後に入社した企業で即戦力となるのは難しく、一定期間の新人研修を経るのが一般的ですが、本学では入社後の即戦力人材を育てます。実際に学び直し(リスキリング)として、海外の大学を卒業後、日本の企業で即戦力として働きたいという学生も入学しています。

グローバルビジネス・教育の最前線で活躍する教授陣が強み

本学のカリキュラムは“理論と実務の包括性”が強みであると考えています。実務家教員が4割、アカデミアの教員が6割の構成で、いずれもグローバルに活躍する教員です。専門職大学は実務教育を重視しますが、実務の専門性を高めるためには、その前段の基礎教養が必要であり、本学ではリベラルアーツ教育を取り入れています。さらに専門職大学独自の展開科目では「メディア戦略」「IT経営」などを学び、実務の専門性を広く深く身に付けます。

海外インターンシップ・留学も単位認定

必修科目として、4年間で600時間以上のインターンシッププログラム(臨地実務実習)があり、本学では海外インターンシップも単位認定できるのが大きな特徴です。米国・カナダ・オーストラリア・韓国他の企業で、語学研修と実務研修(マーケティング、金融、メディア、観光等)を受けられるのは、本学ならではと自負しています。

認知度の向上を図るべく高等教育の多様化に向けた新評価軸を希望

専門職大学はようやく1期生の卒業生を送り出したところであり、高校の先生方の認識に未だ差がある現状は否めないと感じています。文部科学省とともに全体で認知度を上げてゆかねばならないと考えています。さらに国としても、教育の多様化を推進していますので、大学の評価の在り方について、新たな評価軸のガイドラインを文部科学省に作っていただきたいと希望しています。

将来の目標は入学後でもOK
地域社会と連携し職業観を醸成する

高校生のうちは、将来の目標を決めている人ばかりではないと思います。特に、やる気はあるけど具体的にどうしたらいいかわからないという人は、是非本学へ来てもらいたいです。英語が好き、という気持ちだけでも構いません。4年間でビジネスを中心としたグローバルな職業観を醸成し、将来への選択肢を得るきっかけになるでしょう。所在する川崎市やスタートアップを含む地元企業との連携も深く、川崎市産業振興財団がバックアップする大学です。川崎港を中心とした物流業界や貿易・港湾局関連の業務、多種多様な企業誘致もあり、実習先や就職先も豊富な土地柄です。

専門職大学で職業観を醸成し地域社会の活性化に貢献する

文部科学省 高等教育局専門教育課
専門職大学院室 室長補佐 専門職大学担当
宮川 卓也(みやかわ たくや)

専門職大学は学位が取得できる大学である

専門職大学は、世の中が大きく変わっていく中で、どのような人材が即戦力として社会で必要か、産業界など時代の流れの要請を請けて新たに設置した学校種です。2019年4月にスタートし、ようやくこの春、第1期の学部生が卒業しました。しかし、高校の先生方や保護者世代の方への認知度が高いとは言えず、たとえば「卒業しても学位が授与されない」といった誤情報も散見されるなど、認知度を上げるための活動がさらに必要であると認識しています。専門職大学の設置者が専門学校を母体とする学校法人が多いことから、専門学校の格上げイメージが根付いてしまいましたが、「専門職大学は学位の取得できる大学である」ということを広く伝えるために強化をしています。

世の中に役立つ職業人養成のための授業を制度として担保

専門職大学の特徴は、①実務家教員が全体の4割、②必修科目として臨地実務実習がある、③産業界や地域社会との委員会の意見をカリキュラムに反映、④専門分野の隣接他分野を学ぶ展開科目があるなど、PBL(課題解決などキャリア教育に関連する授業)を制度として担保している点です。近年は既設の大学も実学を重視し、往還教育などをカリキュラムに取り入れていますが、この制度があるのは専門職大学だけです。世の中の役に立つ分野に特化した教育を行い、即戦力として就職できる人材を育成しています。専門職大学を卒業する学生の就職実績は、来年3月以降に多くの大学で発表される予定です。

地域創生を担う人材として将来的に“地方公務員特別枠”採用を期待

専門職大学の設置には、自治体と産業界など地域社会が協力して誘致したケースも珍しくありません。私たちは設立後に各大学へ履行調査を行いますが、必修科目の臨地実務実習を地域の公的機関で行うこともあるようです。地域の活性化を担う人材育成のための大学誘致であれば、新たに専門職大学の卒業生を“地方公務員の特別枠”で採用する将来像も示していきたいと考えています。

専門職大学は職業に直結する学びから、「将来やりたいことがわからない」という高校生には敬遠される大学かもしれません。しかし、町おこしなどの地域活性化や、世の中を変えるべく独立起業、或いはグローバルビジネスなど、入学時に職業や分野を決めなくても4年間の学びを通じて即戦力をめざせる大学も次々と誕生しています。キャリア教育は政府の会議でもその重要性が議論されており、大学で職業観を醸成して即戦力人材を育成する専門職大学が今後ますます注目されるのではないかと期待しています。

専門職大学と一緒に認知拡大を推進

来年春、多くの卒業生を輩出する第1期のピークを迎え、今年度は専門職大学の認知度拡大に重点を置いています。コンソーシアムとの連携はもとより、各大学とも合同での説明会実施に向けて相談をしています。制度5年目で分野の選択肢が広がり、全国で23大学(19大学、3短期大学、1専門職学科)となりました。高校生の進学先として専門職大学に注目していただければ幸いです。