看護・医療系特集スペシャルインタビュー
看護の知の拠点 看護協会とは~東京都看護協会~

大学Times Vol.49(2023年7月発行)

【看護・医療系特集】スペシャルインタビュー 東京都看護協会

看護・医療系特集

医療の高度化・複雑化やチーム医療が進み、求められる看護水準も高まり続けている。また、近年は臨床の現場のみならず、地域に密着した在宅ケアの必要性も増している。看護職として働く人々や地域住民のニーズに対応するため、看護協会ではどのような事業が行われているのだろうか。東京都看護協会教育部の福田祐子氏に話を伺った。

公益社団法人東京都看護協会
教育部 研修係
福田 祐子(ふくた ゆうこ)

地域住民の健康を支援する5つの事業

東京都看護協会は、東京都に在住・在勤の看護職(保健師・助産師・看護師・准看護師)が、専門性の高い学びを深め、看護の質を高めるとともに、働きやすい職場環境をつくる支援を行っています。会員同士が協力して組織の力で解決できるよう取り組み、会員の総意で運営をしています。

社会に求められる看護師の能力を考慮し看護職の方の意見を取り入れながら、臨床現場のニーズに沿う研修の企画運営や、質の高い組織的なサービスを提供するため、看護管理者を対象とした研修や、在宅ケアに携わる看護職の支援等も行っています。他にも労働条件改善の具体策の検討や東京都に対しての政策提言、国際交流事業、災害看護活動も行っています。また、新型コロナウイルス感染症の流行時には、東京都や日本看護協会と連携してワクチン接種会場での支援、ワクチン接種に携わる人への研修等を行いました。

5月には看護の日・看護週間のイベント「看護フェスタ」を「見て・聞いて・体験して看護のことをもっと知ろう」のテーマのもと開催しました。3年ぶりの来場開催で、血圧や骨密度の測定体験、看護師の仕事に関するミニ講座、キッズ白衣体験などを実施しました。このようなイベントを通して医療・看護の役割や活動を伝え、看護の魅力を発信することで、都民の皆様が健康について考える場づくりをしています。

【事業の5つの柱】
①看護職の資質の向上に関する事業
②看護業務の開発・改善・情報の提供に関する事業
③看護職の人材確保と定着推進に関する事業
④在宅ケアの推進と支援に関する事業
⑤地域住民の保健福祉に関する事業

新型コロナウイルス感染症による研修の変化

研修は受講者の皆さんが集まる集合形式で実施していますが、コロナ禍はリモートでの実施が増加しました。リモートで行うグループワークは、人数や時間の制限の中で初対面の皆さんが必死に議論し効率的に進むというメリットもありました。しかし、グループメンバーの仕草や表情、雰囲気をつかめない中で、自分の発言がどのように受け止められているかわかりにくいという不安や、ちょっとした会話の脱線の中から得られる発展的な思考への展開ができないこと、他のグループの発言や雰囲気を参考にすることができないというデメリットもありました。

集合研修では、様々な施設の看護職の方が思いをことばにし、共感するという体験をしています。互いに元気をもらい、それを明日からの仕事への意欲に変えて帰る姿をよく見ます。研修後に生き生きとして帰っていく受講者の皆さんの姿を見送る度に、看護職の方々に学びの場を提供することへのやりがいを感じています。

東京都看護協会で行われている集合研修の様子

看護学という学問と進路選択

看護は、人にとっての健康を保ち、安心して生活を送れるよう支援をします。そのために、学校で自然科学・社会科学といった机上の学問に加え、専門的な知識・技術の習得や対人スキル、倫理的な態度を実践学習を通して学んでいきます。卒業時に看護師国家試験受験資格を取得できる学校には就業年数や学校種別、実習先などの違いがあります。就業年数で進学先を選ぶ方もいると思いますが、学校によってどのような学生を育てたいかという教育理念や目標が異なるため、高校生自身が学びたい内容と併せて進学先を考える必要があると思います。

卒業後の進路は、病院勤務の看護師の他に地域在宅での看護など、看護職の活躍できる場が多様化しています。さらに、大学院へ通う学生は学問としての看護学を探求するため、もしくは専門看護師としてキャリアを重ねるために進学して学ぶなど、看護学の学びの幅も広がっています。

心構えについて

看護師として働き始めた頃の私は、相手のニーズをつかみ、それに沿い、何かを施すことが看護だと思っていました。勿論看護師として最低限気付かなければならないことは押さえます。ただ加えて今は、関心を持って相手と一緒に場を共有することで、その人にとっての生きる力を私が教えられている気がします。相手の人生に点で関わりを持つというスタンスでいることで、自分の成長も楽しめるようになりました。病院や訪問看護での経験が私の看護観を広げているのかもしれません。

看護職は人を相手にするため、喜びもある分、責任もあり厳しさを感じるかもしれません。しかし、学び続けることで、対象の方や仲間と共に成長し続けられる仕事でもあるので、是非看護に関心を持ってほしいです。

看護師を目指す高校生へのメッセージ

高校でいろいろな行事や役割に取り組んでいると思います。その中には少し気が乗らないこともあると思いますが、そこを乗り越える経験や皆で一方に向かって何かを作り上げる経験を是非積み重ねて欲しいと思います。どのような結果になっても先生が見守ってくれますし、何かをやり遂げた経験は自信となり、これからの皆さんを後押ししてくれるはずです。

日常的なことでは、自分の生活を大切に、丁寧に取り組んで欲しいと思います。看護には療養上の世話という役割があります。食べることを「本当においしい」と思う時や、お風呂に入った時に「さっぱりした」「気持ちがいい」と感じる時はどのような時でしょうか?看護職には、病気によって不快や生活の制限を感じている方の日常生活の中に「快」の刺激を提供する役割があります。その「快」刺激がその人の持つ力をぐっと引き出すことにつながるので、まずは自分が感じる「快」を大切にしながら過ごして欲しいと思います。そうして日々経験したことに対して、心にどう響いたかを言葉にし、感性を磨いてください。そのような看護職の方が増えれば、現場はより豊かになると思います。

看護協会で学びながら働く先輩方も、日々成長しています。学び続ける仲間として一緒に看護に携わる方が増えることを期待しています。

東京都看護協会の看護の日キャラクター「かんごちゃん」