連載シリーズ高等学校インタビュー
創立10年で五輪メダリストや高校バスケットボール全国制覇
新潟発・“エネルギーの源を育む”文武両道の教育とは~開志国際高等学校~

大学Times Vol.49(2023年7月発行)

【連載シリーズ】高等学校インタビュー 開志国際高等学校

2014年創立の開志国際高等学校は、新潟市の中心部から40キロ離れた胎内市に所在する。自然豊かな環境の中で全校生徒の8割は寮生活を送り、複数の部活動において全国屈指の強豪校となった。国際高校ならではのグローバル教育やリーダー教育、さらに大学進学との“文武両道”をめざす人間育成について、安澤俊之副校長と和泉哲三教頭に話を伺った。

開志国際高等学校
副校長 安澤 俊之(あんざわ としゆき)写真右
教頭 和泉 哲三(わいずみ てつぞう)

教育目標は「志を持って未来を切り開き、地域社会・国家・国際社会のリーダーとなる人間を育成する。」

本校は現在、4つのコース(医学科進学コース/国際情報コース/国際アスリートコース/アスリートコース)を擁しています。部活動は創立時の4競技(バスケット、陸上競技、ゴルフ、卓球)とスノーボード(五輪メダリストの平野歩夢選手は1期、冨田せな選手は2期生)から、現在は全11競技(スケートボード/スノーボード、テニス、サッカー、柔道、バドミントン、ラグビー、アメリカンフットボール)に増えました。各部活動が全国大会での上位入賞をめざしており、トップアスリート育成を目標としています。また、新潟県高等学校スポーツ年間最優秀校に男子・女子とも2021年から連続で選出されています。

創立当初の生徒数は60名ほどでしたが、現在は入学定員480名(160名×3学年)を充足しています。南北に広い新潟県内のみならず、全国各地や海外からも夢や志を持った生徒が集い、本校で学んでいます。(内訳は新潟県内40%、県外40%、留学生20%。全校生徒の80%は寮生活。)

“グローバル教育”は海外大学の進学も視野に異文化理解と英語上達を強化

本校は国際高校として、グローバルな環境で活躍できる人材を育成しています。留学生と一緒に学び、5名のネイティブスピーカーの英語教員が「国際情報コース」のクラス担任も受け持っています。TOEFLスコアで目標を設定し、英語でのスピーチコンテストや習熟度別授業、オール英語の会話時間など、本格的な英語上達のためのカリキュラムを実践しています。この数年は海外の大学へ進学する生徒も増えてきており、大学進学の選択肢が広がってきました。その成果として、模擬試験の英語の成績が県内トップクラスにまで伸びてきています。さらに、ベトナムの高校との留学生交流や、修学旅行としてコース別、部活動別での海外研修を実施し、生徒たちは“本場で本物に触れる”機会を持ちました。

有名人ゲスト講演&生徒ディスカッションの『開志塾』は生きたリーダー教育の場に

年5回、各界著名人のゲストスピーカーを招き、各コースの生徒をシャッフルして小グループでディスカッションを行う『開志塾』を実施しています。コロナ禍でオンラインが整備され、海外からの講演も実現できるようになりました。昨年秋は、サッカービジネスを手掛けるゲストがW杯開催中のカタールから講演し、世界の舞台と繋がる臨場感を体験しました。講演後は医学科進学コースとアスリートコースなど、平素は接点の少ない生徒が一つのテーマで議論を行うので、人の話を聞き自分の意見を述べるなど、組織運営に重要な相互理解の勉強にもなるでしょう。リーダー教育といっても、大きな組織から競技チーム、コミュニティの小グループまでさまざまですので、各々の置かれた立場で自分の考えと向き合い、ディスカッションを経て他者理解の素養を身に付けてほしいと願っています。

医学科進学コースは高校と衛星予備校のWサポートで受験勉強の環境を整備

医学科進学コースは少人数制(1学年20名)で、将来の目標をしっかりと持って学ぶ生徒が多いのが特徴です。授業終了後の時間を効率よく受験勉強に活用するべく、本校では東進衛星予備校を学内に設置し、学習ができる環境を整えています。さらに国際情報コースはネイティブ教員による語学教育を重点に置き、国内の難関大学や海外の大学進学も視野に入れたサポート体制をとっています。

海外大学の進学と競技生活の両面をサポート
国際アスリートコース

国際アスリートコースもネイティブ教員が英語の授業を受け持ち、国際情報コースと同じ環境で英語を学んでいます。「海外の大学へ進学して本格的に競技を続けたい」という生徒の志を支援するべく、ネイティブ教員が各々のネットワークを駆使して、大学進学と競技継続の両面からサポートを行うのが本校の強みです。アメリカの大学に進学し、ゴルフやバスケットボールを継続している卒業生もいます。

夢や志が明確な生徒を全力で支援する文武両道のアスリートコース

創立から10年目で複数の部活動が全国屈指の強豪校となったのは、実績のある多彩な指導者を擁していることや、充実したトレーニング環境、栄養サポートやメンタルケア、トレーナーなど、独自の取り組みが機能していると自負しています。生徒たちも自主的に朝練を行い、競技に賭ける意識の高さを実感していますが、競技だけでなく、平素からあいさつや礼儀などの人間教育にも注力し、毎日の授業を大切にすることで接戦に強くなるという「文武両道」の指導が定着しています。男子バスケットボール部でも“凡事徹底”をスローガンに、競技だけではなく、日常を大切にする指導を行っています。

本校では部活動など競技だけ頑張ればいいのではなく、その先を見据え、授業でのグローバル教育やリーダー教育、キャリア教育を最も大切にしています。毎年、生徒の大多数は大学に進学しており、「文武両道」が本校の伝統になりつつあると実感しています。さらに寮生活はアスリートコース生が最も多く、留学生を含めた共同生活を通じて思いを共有し、励まし合う環境は、大切な人間教育の場にもなっていると思います。

NSGグループのネットワークで生徒の夢や志をサポート

本校はNSGグループ(新潟県を中心としたまちづくり等地域活性化をめざす民間事業体)であり、特にアスリートのサポートという点ではNSGグループのネットワークが遺憾なく発揮されています。トレーナーによる身体づくりやケガの管理、管理栄養など食事のサポートをはじめ、キャリア教育として、医学科進学コースでは病院の施設見学や医療従事者の講演なども実施しています。SDGsやフードロスなど探究学習のテーマもグループ内の大学(新潟医療福祉大学、新潟食料農業大学、開志専門職大学など)に協力を仰ぐなど、幅広い分野で相談できるネットワークがあり、新潟県内で対応できる体制は全国的にも稀有なのではないでしょうか。

高校で終わらない 将来を見据えた支援

夢や志を持つ子どもたちに対し、授業・行事・部活動を通じて一人ひとりの“エネルギーの源”を育て、全国へ、世界へはばたけるよう支援しています。世界の舞台で活躍する卒業生の姿にあこがれて入学した生徒が、現実の高校生活で共感し、想いを一致させて頑張っています。志は高校で終わらず、大多数が大学へ行っても継続していますので、これからも将来を見据えて全力でサポートしてまいります。