新設学部特集学部長就任予定者インタビュー
次の100年へバトンを繋ぐ新学部“文理複眼”を顕在化させる成蹊大学「国際共創学部」とは~成蹊大学~

大学Times Vol.56(2025年4月発行)

【新設学部特集】学部長就任予定者インタビュー 次の100年へバトンを繋ぐ新学部“文理複眼”を顕在化させる成蹊大学「国際共創学部」とは~成蹊大学~

2024年、成蹊大学は東京池袋から吉祥寺に校地を移転して100年の節目を迎えた。これを契機に、次の100年を見据えた新学部「国際共創学部(仮称)」を2026年4月に開設する予定だ。文系・理系の専門性をクロスオーバーさせた、国際共創学部独自の教育的視点「文理複眼」とは何か、2つの専攻(国際日本学専攻/環境サステナビリティ学専攻)を設けた教育プログラムについて、学部長就任予定者の藤原均教授に伺った。

国際共創学部(仮称)国際共創学科(仮称)
国際日本学専攻(仮称)/環境サステナビリティ学専攻(仮称)
藤原 均教授(学部長就任予定者)

現:理工学部教授、サステナビリティ教育研究センター所長

“文理複眼的”な視点を養う
たとえば「水」を科学や文化から考える

「国際共創学部」には2つの専攻(国際日本学専攻/環境サステナビリティ学専攻)があり、日本と世界の「文化」や「地域」「環境」などについて、文系と理系、グローバルとローカル、理論と実践などの相対する学びを通じて、「文理複眼的」な視点で社会課題の本質を理解し解決する力を身につけていきます。たとえば身近な「水」をテーマにした場合、自然科学的には「地球の水の起源」は謎とされ、小惑星、彗星からもたらされたなど諸説あります。また、世界の気候変動を考える時には、「水の気象学」の理解が重要となります。

人文学的な視点から水を考えると、日本の神社では参拝する際に手や口を水で清めるほか、水神様、弁天様など「水」が信仰の対象とされてきた歴史があります。さらに地形学的に見ると国土の大半を山間部が占める日本の河川には急流が多く、常に水を貯めておくことは困難ですが、我々の祖先の尽力によって、貯水池や水田などの“水を貯めるための知恵”が今日に受け継がれています。そしてグローバルな視点からは、東京では水道水1リットルの値段は約0.24円で、世界の中でとても安価で安全な水が供給されています。

このように「水」というキーワードから、自然科学や文化、信仰、世界との関係性など多様なことが考えられるのではないでしょうか。国際共創学部では、「何かを深く知りたい」という問題意識からスタートし、自分なりのアプローチで学びを深めることが可能です。自然科学や人文学など、自分が興味ある分野を通じて理解する方法はいくつもあることを先ずは知ってほしいと思います。

高度100kmにまで及ぶ地球温暖化の影響を探る

私の専門は、地球物理学の一分野である「超高層物理学」です。その中でも、「熱圏」と呼ばれるオーロラが光っている大気領域の研究を行っています。その際に、コンピュータシミュレーション、レーダー・人工衛星観測データ解析などを行ってきました。

下にオーロラの写真があります。私がノルウェーのトロムソで撮影したものです。よく見るとオレンジの光がオーロラに向かって照射されているのがわかります。これはナトリウムライダーという観測装置から出ているレーザー光で、高度100km付近の大気温度などを計測しています。高度100kmは、飛行機や気球では到達できない高さです。一方、人工衛星が飛ぶには低すぎます。ロケット観測という手段はありますが、ロケットはどこからでも気軽に打ち上げられるものではなく、また、飛んでいられる時間も限られます。そこでレーザー光をこの高度にわずかに存在する金属ナトリウムに照射し、散乱して戻ってきた光を調べることにより大気の温度を推定します。高度100kmの温度と言っても、私たちの生活とは全く関係ない世界の話のようですが、そうでもありません。地球温暖化が世界的な問題となっていますが、高度100kmでは、二酸化炭素が増えることで寒冷化が進んでいます。地球温暖化では1~2℃の気温上昇が大きな問題となっていますが、高度100kmよりも更に上空では、数10℃の気温低下が起きていると考えられています。地球温暖化を引き起こしている二酸化炭素の増大は、宇宙(または宇宙に近い大気領域)にまで及んでいます。

私の研究分野と関係した内容は、環境サステナビリティ学専攻の「地球環境学特殊講義」などの授業で扱いますが、これからの宇宙産業の発展を見据え、人工衛星のデータをもとに地球を眺めていく授業なども検討中です。

フィールドワークで育む合意形成の力

複雑化する社会課題の解決のためには、さまざまな人たちと協力し、一緒に何かを成し遂げることが、文系理系問わずとても重要です。協働の際の“合意形成力”は、これから社会に出て様々な課題に取り組む上で不可欠な素養となるでしょう。あらゆる視点で物事をみる眼力や合意形成力を養うためには、フィールドワークなどで実際の現場に赴き、様々な人たちとの協働の経験を積むことが大切です。

1年次に全ての学生が、大学のある吉祥寺を中心とした東京都内や近郊のエリアを訪れ、フィールドワークの方法を学びます。また2年次以降に希望者は連携協定を結んでいる北海道帯広市などの地方都市や海外のいずれかでフィールドワークを経験できるよう計画しています。帯広は農業や酪農・畜産業で知られる地方都市ですが、たとえば家畜飼料の大半は輸入で賄っているため、国際情勢の影響を受けてしまいます。こうしたことを切り口に地域の課題について、地元の人たちと一緒に考え、世界の社会課題とリンクさせ「ローカルとグローバル」の観点から理解を深めていきます。

ポップカルチャー発信地・吉祥寺で学ぶ
日本語教員をめざす道も

本学のある吉祥寺は歴史や文化的にも多様な要素を持っており、文理複眼的にみても面白い街です。また近年、世界的に注目されているポップカルチャーの発信地であり、大学周辺にはアニメ制作会社も多く、画家や漫画家、音楽家もたくさん住んでいて刺激的な面もあります。国際共創学部ではこうした地域文化に詳しい教員を配置して、学問分野として学べるよう準備しています。日本発のポップカルチャーを知識・教養として理解し、外国の人に正しく教えられるスキルはとても重要です。国際共創学部は、海外からの留学生を多く受け入れる予定ですので、同世代の異なる国・地域の人とともに日本について学び、それを国際的に活かすべく、日本語教員の資格取得をめざす道も用意しています。

栄えある一期生として
新学部の歴史を創っていく高校生に来てほしい

国際共創学部のカリキュラムでは「共生社会」、「地域創生」、「ポップカルチャー」、「環境」、「防災」、「観光」など、多彩な学びのフィールドを準備しています。また、1年次からゼミを設けますので、伝統の少人数教育を実践し、学びの深化を目指します。高校での文理選択の際、自然科学や環境問題などに興味はあるのだけれども、数学が苦手という理由で文系に進む人も一定数いるそうです。高校の数学は苦手でも、様々な切り口で自然科学や環境を学ぶことに興味のある隠れ理系の人たちにも本学部にぜひチャレンジしてほしいと思います。英語教育についても「伝えるにはどうすれば良いか?」を重視した実践的な授業を展開する予定です。国際共創学部では文理の垣根を超えるリベラルアーツを意識した学際的な教育プログラムを実施し、卒業時には「学士(学術)」と記された学位記が授与されます。高校で探究学習をがんばった人にも、興味深い学びのフィールドがたくさんあると思います。私たちと一緒に、新しい学部、新しい学術領域を創っていこうという意欲溢れる皆さんをお待ちしています。

国際共創学部(仮称)は2026年4月開設予定のため、内容等は変更になる場合があります。(2025年4月現在、収容定員増加の認可申請中。)