【リベラルアーツ教育特集】学長インタビュー 獨協大学|大学Times

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大学Times Vol.32(2019年4月発行)

【リベラルアーツ教育特集】学長インタビュー 獨協大学

学部・学科の枠を越え、全学生が自分の好きな科目を選択して履修するプログラム、「全学共通カリキュラム(全カリ)」。他学部・他学科の学生と一緒に学ぶことにより、自分の専門分野とは異なる視点に気づき、多面的なものの見方・価値基準を身につけることができると注目されている。「語学の獨協」、「教養の獨協」がめざす、「21世紀の社会に貢献する国際人の育成」について国際教養学部言語文化学科 浅山佳郎教授(全学共通カリキュラム運営委員長 教務部長)に取り組みを伺った。

全学共通カリキュラムとは?

獨協大学

大学で学ぶ教養課程と専門課程の見直しが検討されていた頃、獨協大学は大学創設者の天野貞祐が哲学者だったため以前は哲学が必修だったということ、さらに教養主義的な学風を持っていたことなどから、2003年に全学共通カリキュラム(以下、全カリ)をスタートさせました。かつての教養課程は、高校で学んできたものと専門課程をつなぐものという位置づけでした。しかし、私たちがめざす「21世紀の社会に貢献する国際人の育成」のために必要な教養課程は、専門課程の下に位置するのではなく、同等に必要な課程と考えています。つまり全カリをサブメジャー、もう一つの専攻として学べるように各学部にお願いして、いろいろな授業を提供してもらっています。単発ではなく各専門学科からの体系だった科目なので、いくつか履修すれば、例えば、外国語学部の学生でも経済学の勉強を8単位とか、12単位勉強できるわけです。具体的には、総合力を養う「全学総合講座部門」、講義形式で学ぶ「全学共通講義科目部門」、実技・実習が中心の「全学共通実践科目部門」、健康を維持する「スポーツ・レクリエーション部門」からなる全学総合科目群と外国語科目群の2つの柱から成り立っています。外国語に関しては、英語はもちろん、トルコ語やヘブライ語、アラビア語、タイ語、ロシア語、さらにはラテン語やギリシア語も開講しています。現在、全カリは1400科目以上あり、これは一つの学部に相当する以上の数だと思います。これを細かく取り出してパッケージを作り、学生に履修モデルとして提示していくことも考えており、今年は日本語教育用のパッケージを作りました。他学部の学生でもこのパッケージ履修すれば、日本語教育学の体系だった勉強ができ、実習までいけば修了資格証書も発行します。また、英語だけで日本の文化や社会を議論するとどうなるかという、英語だけで行う「日本学」パッケージも用意しています。できれば、もっと理系の科目も入れたいと考えています。

サブメジャーを学ぶことの効果は?

専門課程で学ぶということは、ちゃんとやれば学問の一つのフィールドに収束していくことになります。例えば、経済学といっても金融論だとか貿易関係が専門だとか、法学なら国際関係が専門だとか民法が専門だとか…。そして、学問のフィールドは、人類の歴史が形成してきたものです。たとえば私が担当する言語学も私浅山がつくったものでも、ノーム・チョムスキー(マサチューセッツ工科大学の言語学および言語哲学の研究所教授)がつくったものでもなく、人類の歴史が言語学というフィールドをつくってきたのです。つまり言語学をあなたが勉強することは、何万年にもわたる人類の歴史が積み重ねた知恵と知識を勉強するということなのです。そしてその勉強によって、あなたの中に言語学的な価値基準が形成されます。学問を勉強するということは、自分の中に、思考の中に、ある判断基準、価値基準が形成されることになるのです。ところが、専門を一つしか勉強していないと、どうでしょうか。例えば企業で何か問題が起こった場合、あなたが金融論しか勉強していなかったら、問題解決に対してあなたのエゴと金融論という価値基準だけによって判断することになります。それは、本当にあなた自身の判断といえるでしょうか。しかし、もし、あなたがもう一つの価値基準、金融論の他に、社会学をメジャーとして取っていれば、二つの価値基準を持つことができるのです。そうすれば、ある問題に関しては金融論6、社会学4で判断すればいいこともあれば、別の問題では金融論2、社会学8で判断した方がいいといった場合もあるでしょう。こうなると学問があなたを判断させているのではなく、あなた自身の比較衡量と筋道立った思考プロセスができてくるのです。このように二つのメジャーを持つことは、自身の考え方を形成する最も強いツールになると思います。また、学生からは全カリで自分の専攻以外の科目を学んでいても、どこかで自分の専攻科目とつながっていると感じるという声も聞きます。こうした発見は重要で、勉強をする面白さが見つけられるということでしょう。もちろん、いろいろな学生と出会えるのが楽しいという声も多くあります。

他学部・他学科の学生同士が、
学びを共有することによる相乗効果は?

それは大きいと思います。21世紀の国際人として一番の定義は、異なる人間を受容することだと思います。「多様化が大切」というと皆うなずくのですが、多様化というのは本質的には不快なわけです。自分と同質のものが周りにあった方がぬくぬくとのんびりしていられますが、そこに自分と異質なものがあると不愉快になります。ですから多様性を良しとするなら、不愉快になる自分を見つめて克服していくことだと思います。その意味で、いろいろな学部の学生が一緒に学ぶ、さらに年齢的にバラツキのある方、障がいを持つ方や留学生など、さまざまな人と議論できれば面白い作用が出てくると思います。

21世紀の国際人という言葉が出てきましたが、どのような国際人に育って欲しいと思いますか?

国際化とか国際人という言葉は、日本語と中国語の言い方でしかないといわれることもあります。ある意味で、ヨーロッパの人たちには、internationalization(国際化)という概念は有効ではないでしょう。何代にもわたって、国と国との間で人の行き来が多かったからです。そのように従来のnation(国家)を超えて、国際化・国際人という事柄を意識しないようになるのが本来の国際人だろうと思います。また、英語だけでなくもう一つの外国語を学び、母語である日本語を加えて3つの言語を話せると、例えば、アメリカ人、中国人と話していて、最初は英語で話し、話題が中国のことになると中国語にスイッチすることができます。話題や場面で言語をスイッチすることができるのは国際人といっていいでしょうね。

獨協大学の特色を一言でアピールください。

獨協大学

語学の獨協と言われていますが、例え英語が得意でなくても、英語学習サポートルームでマンツーマンのカウンセリングが受けられます。自分に合った勉強方法が相談できるので心配しなくても大丈夫です。また、キャリアサポートも手厚いです。マンモス校ですと自分で何でもしなくてはいけませんが、本学は教員スタッフや事務スタッフが待ち構えています。細かなところまでケアしています。スタッフは学生のことを固有名詞で認識し、把握するケースもあります。こうした学生に向き合う姿勢は、人間形成を理念として掲げる獨協として誇るべきところだと思っています。

獨協大学 国際教養学部言語文化学科 浅山佳郎教授

獨協大学 国際教養学部言語文化学科
浅山佳郎教授

【プロフィール】
1957年、福岡県生まれ。専門・研究テーマは「現代日本語を中心とする東アジア各語の談話構造および文法」、「日本漢学における古典中国語と訓読の分析」。2015年より全学共通カリキュラム運営委員長として「全カリ」の推進に取り組む。