産官学連携の事例紹介 玉川大学/芝浦工業大学/明星大学/桃山学院大学|大学Times

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大学Times Vol.35(2020年1月発行)

都市型農業から宇宙での食料生産まで、未来型農業システムの形が見えてくる「Future Sci Tech Lab」〜玉川大学〜

若者が活躍しやすい都市型・未来型
農業システムを提案

「研究」と「生産」の拠点をコラボレーション

玉川大学

2010年に開設したFuture Sci Tech Labは、1階に「植物工場研究施設・宇宙農場ラボ」、2階に「超高速量子光通信施設」と近未来の実用化が期待される2つの先端的な研究拠点となっており、そのうちの「植物工場研究施設・宇宙農場ラボ」では、リーフレタスの商品化に成功している。

現在の日本の農業は、農業人口の減少や農家の高齢化、食料自給率の低さなどの問題を抱えており、それらの問題を解決すべく玉川大学は先端食農学科の渡邊博之教授主導で研究および実際の生産・流通を推進している。

Future Sci Tech Labでは、2010年の開設以来、独自に開発した“ダイレクト冷却式ハイパワーLED(玉川大学と昭和電工アルミ販売で特許を取得)”によりLED光源を太陽の代わりとして、レタス、チンゲンサイ、シソ、トマト、キュウリ、イチゴなどを無農薬で試験栽培してきた。

また、2013年には西松建設グループとの産学連携協定により、大学内にSci Tech Farmの「LED農園R」が完成した。これにより、Future Sci TechLabと合わせて、学園内で「研究」と「生産」の2つの拠点をコラボレーションさせながら、その成果を事業として社会に送り出す仕組みが作られた。現在ではLED農園Rによる玉川ブランドのリーフレタ ス「夢菜R」の事業化に成功。小田急線沿線のスーパーマーケットを中心に販売されている。

「全国に野菜を生産する工場は200前後ありますが、黒字の工場はほとんどありません。おかげさまで玉川のLED農園Rは、事業的に成功している生産施設の一つです。今後はイチゴやトマト、ハーブ類などの生産も計画中です(渡邊教授)」。

宇宙でのジャガイモ生産を目指して

Future Sci Tech Labに設置されている「宇宙農場ラボ」では、宇宙空間における植物工場の可能性を探る研究を行っている。米国では火星探査計画が進んでいる中、日本でもJAXA(宇宙航空研究開発機構)が2030年に日本人宇宙飛行士による月面探査の実現計画を発表。2015年4月には、月をはじめ重力天体での持続的な活動に向け、企業・大学・研究機関などの異分野が共同で成果と応用をめざす拠点「宇宙探査イノベーションハブ」が発足し、玉川大学とJAXAとパナソニック株式会社との共同研究テーマ『摂食可能なジャガイモの完全閉鎖型・完全水耕型人工栽培システムの基礎検討』が2017年7月に採択された。

将来的に月面基地を作り人間が滞在することになると、食料確保の問題が重要となる。地球から食料を運ぶ手間とコストを考えると、月面に食料を供給する工場を建設することがもっとも現実的といえる。ほとんど大気がなく、地球の1/6の重力である月面での栽培のために、宇宙農場ラボには疑似無重力空間や低圧環境をつくる装置が設置され、さまざまな環境条件での実験が繰り返されており、国内外から熱い視線が注がれている。

産学官連携による人材育成の取り組みを報告〜GTIコンソーシアムシンポジウム2019〜〜芝浦工業大学〜

グローバル理工系人材の育成
イノベーションの創出

芝浦工業大学

2019年12月6日(金)芝浦工業大学にてGTIコンソーシアムにおける諸活動の情報共有と発展を目的として「GTIコンソーシアムシンポジウム2019」が開催された。GTIコンソーシアムは、グローバル理工系人材の育成・イノベーションの創出を目的として、日本と世界の大学・企業・政府機関の連携を図るアライアンスであり、芝浦工業大学が発起し、事務局を務めている。シンポジウムでは「産学官連携による人材育成の取り組み」をテーマに、株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO 藤原洋氏から、「大学発オープンイノベーションの重要性」についての基調講演があり、続いてボッシュ株式会社、株式会社コウェルから、コンソーシアムへの期待と実施事例について講演が行われた。

芝浦工業大学では、海外協定校や企業を交えた「産学官グローバルPBL」を近年積極的に展開している。グローバルPBLとは、海外協定校の学生とチームをつくり、企業における課題や社会課題などについて解決の方策を討論し、成果発表を行うプログラム。今回のGTIコンソーシアムシンポジウムグローバル理工系人材の育成イノベーションの創出2019を通して、産学官連携グローバルPBLやインターンシップなどの実施事例が報告され、今後のさらなる産学官連携活動の活性化へつなげた。

GTIコンソーシアムの理念と構想

2015年12月3日、日本および東南アジアの大学や企業を中心に国際的な産学官連携の強化を目的とした「GTIコンソーシアム(Global TechnologyInitiative Consortium)」が発足した。GTI構想では、グローバルPBL(Project Based Learning:プロジェクト実践教育)のほか、国際共同研究、国際インターンシップ、政府間協力プロジェクトなどを推進し、東南アジアの企業や高等教育機関等と人材・研究交流のネットワークを活用しながら、各国における社会課題や企業の抱える技術的課題の解決を図り、同時に世界の経済・社会を支える理工系人材の育成を担っていく。

GTIコンソーシアムの目的

@理工学教育の質の向上
国内外の産学官が連携し、実践的な教育を提供することで、理工学教育の質を向上させる。

A人材の育成と輩出
質保証された理工学教育により、グローバルエンジニアを育成し輩出する。

Bイノベーションの創出
グローバルエンジニアが世界をフィールドに活躍することで、イノベーションを創出する。

C産業競争力の強化
グローバルエンジニアによって創出されたイノベーションにより、産業競争力を強化する。

【GTIコンソーシアム運営委員】
トヨタ自動車/ボッシュ/三井住友建設/三菱電機/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)/フジクラ/三井住友銀行/IHI/NTTデータ/国際協力機構(JICA)/日本貿易振興機構(JETRO)/工学院大学/東京都市大学/東京電機大学/福岡工業大学/芝浦工業大学

地域に密着した産官学連携により社会に貢献できる人材を育成〜明星大学〜

地域の企業や団体と連携
学部ごとに豊富な体験授業を展開

明星大学では「和の精神のもと、世界に貢献する人を育成する」という建学精神の通り、<社会に貢献できる人材の育成>を目標としている。その実現のために、同大学では教育方針の一つに「実践躬行の体験教育」を掲げ、知識を身につけるだけでなく、学生が実際に自分自身で行う(=体験する)ことで学びを深める授業を様々な学部・学科で行っている。体験授業はキャンパスがある多摩地区の企業や団体と連携したものが多数あり、実社会における様々な課題や企業のニーズを知るまたとない機会となっている。これらの課題に対して学生は協力 して解決策を導き出すのだが、この過程は学生の成長だけでなく地域(社会)への貢献にもなっており、まさに<社会に貢献できる人材の育成>にふさわしい取り組みとなっている。
以下は、各学部・学科で過去に実施した体験授業の一例である。

@理工学部 総合理工学科 建築学系
(2020年4月より建築学部建築学科に学科名変更)
<高幡不動に複合文化施設の提案>

日野市と連携し、市が所有する高幡不動の敷地を対象に設計課題を実施。具体的な設計作業によって、豊かな建築空間を創出する能力の獲得などを目標とした。

A人文学部 国際コミュニケーション学部
<ご当地キティグッズの制作>

キャリア教育の一環として、ご当地キティを手がける「あすなろ舎」と共同で、明星大学オリジナルのコラボグッズを制作。人気キャラクターを使って、世界への発信と地域貢献を目指した。

B経営学部 経営学科
<起業の体験授業日野フォトジェニックフェア>

「日野フォトジェニックフェア」とは、フォトジェニック(写真映え)をコンセプトに日野市の名産品を扱う物産展のこと。“多摩ブランド創生”をテーマに、学生らが日野地域の特産物をブランディングする模擬的な株式会社を立ち上げ、企画・販売・売上計上までの一連の活動を通して、起業の体験学習を行った。

Cデザイン学部 デザイン学科
<デザインによる地域活性化プロジェクト>

近隣の自治体からの依頼に基づいて、地域を活性化するための具体的な企画提案を実行。最終的には身につけた知識や技術を集結し「社会とつながるデザイン力」を実践した。プロジェクトの後半にはフジテレビのプロデューサーやディレクターから直接指導を受け、地域の魅力を伝えるための番組制作を行う選択科目もあった。

Dデザイン学部 デザイン学科
<青梅マラソンタオル「青梅ブランドプロジェクト/Hotman」>

「青梅マラソン」の公式タオルを学生がデザインし、青梅市内のタオルメーカーであるホットマンが製造、大会当日に配布及び販売した。実際に販売される製品に関わることで「社会とつながるデザイン」を実体験し、学びを深めている。

E心理学部 心理学科
<災害時における行政(日野市)と臨床心理士との心のケア連携と構築を考える勉強会>

行政関係者や地域の臨床心理士が参加して、災害時における心のケア連携について討議。また、石巻市や仙台市で東日本大震災時に連携構築にあたった臨床心理士や東京臨床心理士会の人からも話を伺っている。

60を超える団体との連携から生まれる実践的な学び「ビジネスデザイン学科」〜桃山学院大学〜

大阪府庁でのプレゼンテーション授業など
豊富な連携で磨くビジネスデザインの実践力

ビジネスデザインを可能にする3つの力

2019年4月、桃山学院大学経営学部にビジネスデザイン学科が新設された。この学科では「関西初のビジネスデザイン×リーダーシップ教育」を掲げており、これからの時代にふさわしい新しいビジネスの仕組みを創り出せる人材の育成を目標としている。学生はそのために、今後の社会で強く求められる3つの力を授業・課外学習で身につけることになる。それぞれの力の具体的な内容は以下の通り。

@クリエイティブ力〈ゼロからイチを生み出す力〉
クリエイティブ力を育成するためには、発想力を鍛える課題をたくさんこなす必要がある。PBL(Project Based Learning:問題解決型学習)では、連携企業からの課題をその企業の社員と共に考える。また、必修のドメイン科目では授業の担当企業から出題される年間34のクリエイティブ課題に取り組む。さらには頭をやわらかくするため、教養・文化科目ではイラスト、将棋、演劇などの科目を用意。柔軟な発想力等の基礎を、連携先の企業や団体から招聘した人物を含めた、第一線で活躍する専門家たちから学ぶ。

A高度なコミュニケーション力〈人間関係の中で共感しあえる力〉
PBLでは、学生・企業人のチームで共に学んでいく中で、チーム内でのコミュニケーションが活性化する。特にプレゼンテーションやフィールドワークの場では、多様な人たちと会話や議論を重ねることで、よりコミュニケーション力を高められるようになっている。

Bやり抜く力〈強い意志と責任を持って実現する力〉
ビジネスデザイン学科で開講されている科目の多くは必修であり、時間割も固定されている。授業の空き時間にはグループワークや課題に取り組む。毎日の授業終了後にはフィードバックの時間を設け、その日の授業で分からなかったことについて教授や講師に質問することで、問題をやり抜き、解決するための意思と力を身につけられる。

4年間の成長プロセス、さまざまな連携授業

ビジネスデザイン学科には、学生にとっての明確な成長プロセスが存在している。まず入学後、授業や課題を通し新たなビジネスを創出するための3つの力とリーダシップ力を身につけていく。そこで各種開催されるビジネスモデルコンテストなどに挑戦し、優秀モデルには起業のチャンスが与えられる。卒業時には商品企画やアプリ開発を含めて実現可能なビジネスをデザインし、実際にビジネスを創ることができる人となり、社会で活躍することが最終的な目標だ。

学生たちがより実践的な学びを行えるよう、60を超える企業・行政・団体と連携しているのも同学科の大きな特徴といえる。主な連携先の一つに大阪府がある。昨年11月には「大阪府民の健康を考える」という課題授業で、学科生たちは大阪府庁内で庁職員に対し、ビジネスアイデアのプレゼンテーションを行った。その内容は、府民の野菜摂取量を2倍にする「ベジタブルレシピ」の提案であり、担当チームは実現に向け連携企業と調整を進めている。

新しい施設とキャンパス

学科生たちの学びを最大限サポートする環境も整っている。2019年4月よりビジネスデザイン学科の学生が学ぶ施設「本町BDL(ビジネスデザインラボ)」は、ビジネスデザインを研究・実践する場所という意味が込められたものである。

また2020年秋には、9階建てのあべのキャンパスが完成する。新キャンパスは、ビジネスデザイン学科の学びのスタイルに合わせて、ディスカッション・プレゼンテーションが日常的に実施できる空間や、学生同士、教員や企業人と密にコミュニケーションがとれるスペースなどが設けられる予定だ。

全国の大学・短期大学の産官学連携事例

産官学連携特集
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