リベラルアーツ教育特集 新学長インタビュー:国際基督教大学(ICU)|大学Times

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大学Times Vol.36(2020年5月発行)

リベラルアーツ教育特集 新学長インタビュー:国際基督教大学(ICU)

日本初の4年制リベラルアーツ・カレッジとして献学された国際基督教大学(ICU)。文理の枠を超えて学ぶ カリキュラムを、日英バイリンガリズムの少人数教育により実践している。今日、リベラルアーツ系学部学科 が全国の大学や高等学校にも広がり、その教育は産業界でも嘱望される時代を迎えたが、いまだにわかり にくいと思われているのも事実である。 ICUならではのリベラルアーツ教育とは何か、本年4月に就任した岩切正一郎新学長に話を伺った。

国際基督教大学
学長 岩切 正一郎 (いわきりしょういちろう)

国際基督教大学 学長 岩切 正一郎 (いわきりしょういちろう)

1959年生まれ。東京大学文学部フランス語フランス文学専修卒業、同大学院人文科学研究科仏語仏文学専攻修士課程修了(M.A.)、同大学院人文科学研究科仏語仏文学専攻博士課程満期退学、パリ第7大学テクスト・資料科学科第三課程修了(DEA)。
1996年国際基督教大学教養学部助教授、同教授、同アドミッションズ・センター長、同学部長を歴任。2020年4月より現職。専門はフランス文学、演劇。蜷川幸雄演出作品はじめ戯曲翻訳を多数発表。2008年第15回湯浅芳子賞(翻訳・脚本部門)受賞。

リベラルアーツは生き方に直結
考え方や感じ方を大学で身につける

リベラルアーツを私は次のように説明しています。「人生には“リベラルアーツという生き方”があり、ICUではリベラルアーツ的な考え方や感じ方を4年間の学びで身につけ、それを自分の中に構造化する」と。リベラルアーツは生き方の問題に直結していて、その中にICUのリベラルアーツ教育の特長である対話や批判的思考、ダイバーシティなども含まれます。卒業後はリベラルアーツ的なものの見方を自分の中に持って生きていくことになります。それは世界のどこに行こうとも、リベラルアーツ的に物事を考え、社会を作る側になるということです。ICUではその姿勢を4年間で学んでいきます。

リベラルアーツという総合的な知を
全学生が共有する学び

ICUでは全学生が共有するリベラルアーツという総合的な知があり、その中にメジャー(専修分野)があります。したがって、入学後時間をかけて自分の学ぶべき専修分野を決めることができるのが特徴のひとつです。全員が、リベラルアーツの柱である自然科学、社会科学、人文科学の3領域にわたって関心のある分野と、学修およびコミュニケーションのための英語(英語話者の場合、日本語)を学びます。

自然科学では「同じ方法で取り組めば誰でも同様の結果を導ける」という普遍性や客観性があり、社会科学では「人間が作っている共同体の中にある制度や政治や文化を理解すること」、人文科学では「文学や芸術、思想など一人の人間特有の表象」などを学びます。3つの柱のうちどれが欠けても、全体を理解することはできません。さらにICUでは、少人数での授業(教員対学生比1:19)だけでなく学生寮などでもいろいろな人と一緒になる機会があり、さまざまな学生同士での対話はICUの全体を知り、自分を取り巻くものや全体の中の自分を意識する機会にもなると思います。

こうして入学後2年間で自分の学びたいことを見つけてメジャーを選択し、自立的に学んでいきます。この“自分で選択する”ことが大切です。ICUでは「自分はこれがやりたかった」という自己の知的関心を発見できるのです。

英語と同じくらい大事な日本語の学び
留学生交流で異文化と日本文化を理解

英語だけで学位を取得できる大学が増えている中、ICUでは日英バイリンガルを貫いています。私は平素から大学で学ぶ“学問としての日本語”があり、学生は正しく発信するためにもそれを疎かにしてはいけないと考えています。そしてキャンパス全体が、異文化との出会いの場であってほしいと願っています。ICUは留学生が多いという特徴がありますが、ICUから海外の大学へ留学する学生にも、ICUへ来る海外の学生にも各自の中に、自分のとは異なった複数の社会や文化へアクセスしそれを理解する回路を作って欲しいと思います。

他者理解を育み自己肯定感を高める
卒業時調査で満足度の高い学生生活

ICUでは、学生が自ら学びたい授業を選び時間割を作るので、メジャーの異なる学生同士が同じ授業を履修することも多くあります。クラスの中に多様性があり、日常の学びの中に、異なる立場からのディスカッションがある。これを日本語と英語で行いますが、対話を通じて理解を深め、その積み重ねが確信に変わり、最終的に自己肯定感へと繋がります。リベラルアーツでは自分の中の思い込みを取り払って自由になることで、相手の考えを受け止めて議論をし、各々の違いを認めて理解することができるようになります。各種の国際調査で「日本の若者の自己肯定感は他国と比べて突出して低い」という結果を耳にしますが、ICUでは毎年行う卒業時アンケートの結果をみても満足度が大変高く、ほとんどの学生が「この4年間がいい学びの時間だった」と実感して卒業していきます。

文系・理系の枠を超え、
あらゆる分野を1つのキャンパスで

ICUでは、物理、生物、化学、数学、情報科学などのサイエンスメジャーもあります。現在は校舎を新築しており、竣工後は開放的に自然科学を学ぶ体制を整える準備をしています。さらに都心へのアクセスが良い好立地にありながら、広大な敷地と豊かな自然に恵まれた構内は心落ち着く素晴らしい環境です。「美術・文化財研究メジャー」では学芸員の資格取得も可能ですし、構内には縄文遺跡があって、実際に発掘をしながら考古学を学べます。伝統的な学問分野から、学際的な「平和研究」、「アジア研究」など、問題解決型や地域研究型のメジャーまで、全てワンキャンパスで学ぶ事ができるのです。

「覚える」よりも「考える」ことが好きな高校生はICU向き

ICUの学生は、人に対しての敷居が低く、ラベルにとらわれずひとりの人間として対話することができます。人として大事なことへの共通認識があり、枠にはめたり理不尽な扱いをしたりすることには敏感に反応する意識があります。入学試験も大学での学びに必要な適性をみるために実施しています。高校までの学修で身につけた基礎知識を基に、試験問題から新しい知識を得て、考え、答えを組み立てていくことができるかを求めています。単に「理論を覚える」というより「何のためにこの理論があるのか?」と考えることが好きな高校生には向いていると思います。

英語はコミュニケーションのツール

英語の入試問題は単語レベルで難しいものではなく、英語で考え、全体の意味と各文の論理関係を解する力が求められます。その点では国語の文章読解と同じです。

コミュニケーションツールとしての英語と捉えていますので、今の成績は良くないけれども英語が好きという高校生は、まず「読み」「書き」をしっかり学びましょう。日本の新聞と英字新聞で、同じニュースをどう報じているか比べるのも良い方法かもしれません。「聞く」勉強はニュースを英語で聞いてみるなど、聞く習慣を少しずつつけてください。「話す」のは入学後に力を伸ばす学びの環境が整っていますので、今は心配いりません。

未知なるものに挑戦したい人、人に対して信頼を抱き心が開かれている人、またそれが大事だと思う人、他者との理解を大事に思いそれを求める高校生はICU環境に適していると思うので、是非ともICUをめざしてください。

リベラルアーツ教育特集 新学長インタビュー:国際基督教大学(ICU)