【看護医療系大学特集】スペシャルインタビュー 日本看護学教育学会 高校生が看護への想いを発表する場 ナーシング・サイエンスカフェ|大学Times

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大学Times Vol.42(2021年10月発行)

【看護医療系大学特集】スペシャルインタビュー 高校生が看護への想いを発表する場 ナーシング・サイエンスカフェ

昨今、看護師の厳しい部分がクローズアップされた報道などをしばしば見かけるが、看護職を目指す若者はどのような志を持っているのか。高校生による看護研究発表会「ナーシング・サイエンスカフェ」を運営する一般社団法人日本看護学教育学会の広報・渉外・社会貢献委員会より、西村ユミ氏と山之内由美氏にリモートで話を伺った。

一般社団法人日本看護学教育学会

看護学教育の発展と看護職者による専門的な活動の質向上を目的に1951年から活動をしてきた日本看護教育研究会を1991年に日本看護学教育学会とした。2014年、一般社団法人化し、現在、学会の会員数は約4,700名になる。

高校生が自由な発想で看護について発表する会
「ナーシング・サイエンスカフェ」

2021年で31年目を迎えた本学会は、おもに看護系の学校や看護の現場で教育に関わっている者によって運営し、看護学教育の質を高め、看護について社会に知ってもらえる機会づくりを行っています。なかでも1年に1度開催している学術集会では、看護学教育の研究発表や、どんなふうに教育を考えていくか、社会貢献として学会に何ができるかなどを議論してきましたが、2017年から少し形を変えて「ナーシング・サイエンスカフェ」という新しい企画を始めました。

この企画は、看護について学んでいることや考えていることなどを高校生に自由に発表してもらう場があったらおもしろいのではないかという、ちょっとした話題から発展して実現したものです。準備は2016年8月頃から始め、2017年の夏、沖縄で第1回目を開催しました。看護系や介護系の学科で学んでいる地元の高校生に日頃学んでいることなどを発表してもらえないか高校の先生方にお願いをしたところ、快く引き受けてくださいました。

この時は、高校1年生と3年生が発表してくれました。1年生は、なんと1名での発表。「看護と私」というテーマで、中学生の頃まで住んでいた島の医療状況について調査したことや、体験談、目指しているナース像を発表してくれました。3年生は2人組で、ナースの役割、ナースの働く場所、ナースを目指すきっかけ、国際比較、看護師不足の問題などいろいろな視点で考えたことを発表してくれました。沖縄という土地柄からか、医療通訳の話まで出てくるなど、主催の私たちにとっても目からうろこな話がたくさん出てきました。社会をこんなふうによく見て考えている若者が未来の看護を担ってくれると思うととても心強く思いましたし、彼らの姿から「シャンとしなくては!」と奮い立たされました。

今年は初めてのオンライン開催に

コロナ禍ということで2020年は急遽オンラインで開催することになりましたが、安心して発表してもらう方法や、どうしたら充実した議論ができるか、誰に届けたいかなど、しっかりした準備ができず中止に。約2年の準備期間を経て、ようやく今年開催することができました。オンラインの利点を活かして全国の高校生が参加できるようにお知らせをしたところ、約170名から参加の申し込みをいただくことができました。

今回も2つのグループが発表してくれて、1組目は看護実習の体験から学んだ「看護の力」を画面越しでもちゃんと伝わるようにとロールプレイングを交えて発表してくれました。まだ経験があまりない高校生から、現場での“あるある事例”や患者さんに寄り添うという言葉が出てきて、とても感激しました。2組目は、1年生と3年生からなる9名のグループで、愛知県豊橋市で開催されているコンテスト・高校生技術アイデア賞に出展した看護や介護にまつわる数々の作品を紹介してくれました。中には商品化されたものもあります。発表の中で、“作品の成果は、高校生の感性と専門職の感性のハイブリッド“というキーワードが出てきましたが、まさにその通り。現場の人間では頭が凝り固まってしまって浮かんでこないような柔軟なアイデアを活かした作品ばかりでした。

看護に誠実に向き合う高校生を
未来に繋いでいきたい

この「ナーシング・サイエンスカフェ」は、看護や看護学教育の現場で働く者にとって、高校生の純粋な想いに触れて、改めて看護について考えるきっかけにもなっています。どんなに忙しくても1人ひとりに向き合うことや考え抜くことの大切さなど、初心を思い出すとともに、思わず微笑んでしまうような会です。会場に集まって開催していたときには、発表後の質疑応答、コメンテーターの先生や関連施設の方の体験談を聞いたり、発表では表しきれなかった高校生の頑張りを高校の先生からお話しいただいたり、保護者の方からのあたたかい反応など、その場で話が盛り上がっていました。今年はアンケートでのフィードバックとなりましたが、感激した、高校生がここまで患者さんに寄り添ったケアを試みていることに感銘を受けた、目的を持って看護に取り組めていて素晴らしい、などお褒めの言葉をたくさんいただいています。70分という限られた時間ではありますが、この委員会の広報の役割をほんのちょっとは果たせているのかな、と思っています。

昨今、看護師の厳しいところがクローズアップされることが多くありますが、ナースになって今の大変な状況をなんとかしたい、と高い志を持っている学生が多く、現場の私たちはとても心強く思っています。これからも、高校生1人ひとりの力を上手に引き出していける機会として開催を続けて、未来に繋いでいかなければと強く実感しています。また、この会は、看護師になりたい人だけではなくて、これから将来のことを考えていこうとしている方や、おそらく医療の世界には入らないだろうという方にも見てもらって、看護について少しでもたくさんの人に知ってもらえる機会になればと思っています。

看護職を目指す高校生の皆さんへ

(西村先生)こういう人じゃないと、というものはありません。ですが、看護は他者のケアを行うので周りの人に関心を持って、一緒に考えていこうと思える人が良いと思います。それから自分のことをしっかり考えられることも大切です。結構ハードな仕事でもあるので、自らのケア、つまりセルフケアも求められます。そして、「自分が大事にしている看護」を日々探求していれば、あるときうまくピントが合う瞬間があります。それは、学生のときかもしれないし働き始めてからになるかもしれません。ピントが合うと、より充実感を味わいながら楽しんで看護に取り組めるようになります。それを見つけられるように、他人のことも自分のこともしっかり考えられる、そういう方に仲間になって一緒に看護を創造してもらいたいです。

(山之内先生)学校では、ナイチンゲールの「三重の関心」を注ぎ続けられる人になれるように、と伝えています。正しい知識を持っている人、その人の立場になって考えられる人、プロの技を提供できる人、これを持ち続けられる人を育てていきたいと思っています。途中で立ち止まってしまうこともあるし、なりたいナース像が変わることも当然あります。そんな時も自分を信じて夢を持って歩み続けてもらいたいです。でも、ときどき休憩するのも一つの道です。ナースの活躍の場は病院だけではなく、たくさんの可能性を秘めているので、こうでなければならないなど、あまり窮屈に考えなくても大丈夫です。柔らかな頭と心で看護の世界に飛び込んでもらって、一緒に新たな看護を作り出していってくれればと思っています。