【連載シリーズ】専門職大学/専門職短期大学特集② 東京保健医療専門職大学|大学Times

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大学Times Vol.45(2022年7月発行)

【連載シリーズ】専門職大学/専門職短期大学特集② 東京保健医療専門職大学 “自分らしさ”を取り戻すためのこころとからだのリハビリテーション 専門職大学で学ぶ「作業療法」とは

時代の変革を見据え、経営マネジメントなど新しい社会ニーズに応えた医療人を養成する東京保健医療専門職大学。2020年4月コロナ禍の中での開学となったが、翌年には所在地の東京・江東区と福祉連携協定を結ぶなど、独自の学びを切り拓いている。中でも「作業療法士」は将来的にも職域の可能性が広がり、専門職大学の学びに適しているという。近野智子学科長に話を伺った。

東京保健医療専門職大学 リハビリテーション学部
作業療法学科 学科長 准教授 近野 智子(こんの ともこ)

作業療法士は、病気・障害を持った方や弱い立場の方々と直接関わり、その方やご家族の思いに耳を傾け、病気や障害を持っても、その人らしく生き生きと生活できるように支援する仕事です。病気や障害を持った方々は、今までの生活の仕方ではうまくいかないことが多いものです。できないこと、不自由なことに直面して精神的に落ち込んだり、自信を失ったり、あきらめたりすることが沢山あります。しかし、多くの患者さんたちは、一緒にそれを乗り越える伴走者がいれば、驚くほどいろいろなことにチャレンジしてゆきます。私は、その伴走者が作業療法士だと思っています。

作業療法の「作業」とは?理学療法士との相違点

食べる、入浴する、仕事をする、遊ぶ、買い物する、料理する、など日常生活に関わるすべての活動を「作業」と呼びます。身体や心の障害によって、それらを行うことが難しくなっている人を対象に、作業療法士がリハビリテーションのプログラムを作ります。「作業」そのものを練習したり、心身の機能の回復や維持の手段として「作業」を行います。これが作業療法です。

理学療法士は人間の基本的動作(立つ、座る、歩くなど)のリハビリテーションを行うのに対し、作業療法士は生活や社会の中でうまくいかないことについて、どのように回復し復帰に導くかを一人ひとりに合わせて考え支援します。同じ白衣を着用し、どちらもリハビリテーションを行うのですが、役割分担が異なります。(下図参照)

学生の主体性を育む少人数教育

専門職大学では1クラス40名以下の少人数教育が基本です。一般的な大学のように教員の一方的な講義ではなく、グループワークや演習、実技が多いのも特徴です。学生は主体的に授業を受け、教員も学生一人ひとりに目が行き届くので、各々の特性を把握できるメリットがあります。教員や学生同士でコミュニケーションをとる機会も多いので、毎日の授業が学外での実習の基礎練習にもなっています。

経験先行でも効果のあった初の学外実習

開学からコロナ禍で実施できなかった学外実習に、今年1月~3月にかけて、初めて行くことができました。経験先行での実習にもかかわらず、4月以降の授業で学生が大きく成長していることを実感しました。現場経験を経て知識が後追いとなったことで、納得しながら授業を受けている様子です。学生と教員のコミュニケーションがさらに良くなり、双方向の授業が行いやすくなりました。教員も学生の個性を把握しながら、学生に合わせた対応ができています。

「実習教育」の変化

以前行われていた従来型の臨床実習は「学校で学んだことを現場で実際に行う」ために、事前の実技練習を徹底してから実習に行っていました。しかし現在は臨床教育の流れが変わり、専門職大学では基本的なことを学び、さらに実習では「初年度から作業療法士の現場を見て学ぶ」という経験先行型の実習を行っています。

今年の1年生は入学2か月後の6月から、「体験実習」として5週連続で4カ所の学外実習と1回の学内実習を行っています。初めて白衣に袖を通し、1施設1~2名で「作業療法」に対する視野を広げることを目的とした実践教育を行いました。専門職大学ならではのカリキュラムです。

就職後の実践力に直結する
専門職大学独自の「展開科目」とは

就職したあとは、作業療法の専門技術以外にも取り組まなければならない仕事がたくさんあります。それらを解決するために重要なのが必修の「展開科目」。これも専門職大学ならではの学びの一つです。大きく分けて「隣接他分野科目」「経営・マネジメント科目」があります。

「隣接他分野科目」として、作業療法学科では「ユニバーサルツーリズムと外出支援」を必修で、「音楽療法」「手話」「美容」「支援システム工学」を選択で学びます。「隣接他分野科目」はその授業も学生に好評で、楽しみながら学んでいます。地域の長寿サポートセンターと本学をオンラインで繋いで音楽療法を実践したり、男子学生が美容を学んだり、多様性の理解にも繋がっているようです。

経営・マネジメント科目は実習先でも期待感

経営戦略論など「経営・マネジメント科目」は特に重要です。将来的に病院勤務となる作業療法士でも、1日の売上目標などを求められるようになるからです。既存大学や専門学校では、作業療法学科として経営やマネジメントのカリキュラムはありません。来年以降、4年生での臨地実務実習では、管理・マネジメントの実習が可能になりますので、実習を通じて「ただの知識」で終わることなく、組織の中で総合的な繋がりや視点を養う格好の機会となるでしょう。受け入れ先の医療現場では、その点における期待感の高さも実感しています。

これからの社会変革と作業療法の可能性とは

高齢化社会が加速し、日本の医療と介護保険は頭打ちの状態になっており、現在の社会システムを総動員して取り組まなければなりません。その中で、全国の「地域包括ケアシステム」における作業療法士の活躍の場がさらに広がることが期待されています。たとえば、教育現場では学習障害や自閉症児のケアとして作業療法士が派遣されたり、民間企業やNPOでは障がい者や高齢者向けの総合サービスとして作業療法士の知見が活かされ、新たなビジネスが創出されるでしょう。ユニバーサルデザインとしての建築物や衣料品などの取り組みや、障がい者の個性を生かした緻密で忍耐強い作業を要する職業、さらには医療刑務所など司法の場にも作業療法士が求められます。
社会のニーズがどこにあるのかを、大学が常に探っていかなければなりません。

医療従事者に関心を持つ高校生と先生方へ

作業療法士の人数が最も多いのがアメリカ。次いで日本が第2位です。アメリカでは社会的地位も高く、AI時代になってもなくならない職業といわれています。医療従事者の中でも作業療法士は夜勤がなく、女性が65%と出産子育てもしやすく、生涯の職業として働きやすい環境なのも大きな特徴です。作業療法士イコールリハビリなど機能訓練は30年前のイメージで、現在は専門技術と自分の得意で関心のある分野の知識を上手に使いながら、新たな可能性の広がる職業であり、患者様の人生にトータルで関わる、やりがいのある仕事です。