【スポーツ科学特集】総合学問・スポーツ科学の“いま”と“未来”|大学Times

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大学Times Vol.45(2022年7月発行)

【スポーツ科学特集】総合学問・スポーツ科学の“いま”と“未来”―フィジカルエリート育成ではない新・学問領域の潮流を追う―

大学の学部・学科・コースの新しい潮流「スポーツ科学」が今、注目されている。ここで取り上げる「スポーツ科学」とは、従来の体育大学や教育大学に象徴される体育教員の養成や、アスリート育成とは異なり、学びの条件として運動能力を問わない、スポーツ関連分野のことである。実際に学問領域において「スポーツ科学」および「スポーツ関連分野」を掲げる大学は全国的に増加し、スポーツを取り巻く学問分野はより多面的に、学びの裾野が広がっている。東京オリンピック2020大会を経て、高校生の進学先としても人気が高まりつつある総合学問「スポーツ科学」のいまと未来像はどのようなものなのか。今回は4つのスポーツ関連企業・団体、さらに3大学の教育現場への取材から探ってみたい。

「スポーツ科学」を学ぶ大学が全国的に増えている

本年1月、(株)さんぽうでは全国の大学・短期大学へ、進学情報誌掲載のための学問領域に関するアンケート調査を実施した※。回答のあった大学については、学生が学べる学問領域の分野選択(任意回答)を尋ねているが、その中で「学びのすすめNo.6体育・スポーツ・健康系」の「大学・短期大学一覧」に掲載している236校のうち、「スポーツ科学」と回答、若しくは学部学科名に「スポーツ科学(スポーツ薬学、スポーツ福祉含)」を冠した大学・短期大学は65校(大学59、短大6)、「スポーツビジネス(プロモーション、マネジメント含)」は44校(大学37、短大7)、「スポーツ栄養・医学(食品含)」17校、「スポーツ文化」7校、「スポーツ情報(メディア)」3校、「スポーツ心理」3校だった。

本アンケートの学問系統は各大学の意向で分類しているが、他系統(家政系、医療系、情報系、経済系、心理系など)の大学でも実際に「スポーツ科学」をはじめとしたスポーツ関連分野を学べる大学が一定数顕在しており、上記数字より「もっとある」と考えた方が妥当であろう。さらにこの傾向には地域格差があまりみられず、地方国立大学にも及んでいるようだ。日本の大学全803校から鑑みても、今や相当数の大学で学べる新しい総合学問であることを、本誌読者である高等学校の進路指導の先生方も是非とも知っていただきたい。

※大学進学情報誌「学びのすすめNo.1~No.8」シリーズ2023年度版制作に際し2022年1月全国の大学、短期大学に郵送でアンケートを実施。

サッカーJリーグ成功にみる
地域スポーツの発展と企業・団体の活躍

1993年のサッカーJリーグの発足は、スポーツと企業、地域社会における大きな転換点だったと記憶する。旧日本リーグ時代の社会人スポーツに「魔法」がかかり、観客もまばらだった各競技場がチケット入手も困難なほど全試合満員になった。この「魔法」をかけたのは、日本サッカー協会と各クラブチームを運営するビジネスパーソンたちである。オーナー企業の意向が強い既存のプロ野球に対し、サッカーJリーグは発足当初から「地域スポーツの振興と地域発展」を一貫して謳い、クラブチームが地域社会に溶け込んで市民や地元企業の支援を得る仕組みを整えた。Jリーグの全国的な人気とともに、試合開催と事前合宿の受け入れを全国規模で実施した2002年サッカーW杯日韓共催大会も大成功を納めた。大分・中津江村のカメルーン事前合宿が話題となり、日本サッカー協会は大会収益金等で東京・文京区の協会本部ビル(JFAハウス)を一括購入している。

サッカーJリーグの成功は、スポーツとビジネスのより良い関係性の構築が、スポーツを取り巻く企業や地域全体の発展に寄与することを知るきっかけとなった。その功績は、競技スポーツのプロリーグ化へのビジネスモデルとなり、今日に至っている。

スポーツ科学の社会実装-現在地を探る

スポーツ科学は実学の総合学問として、現在は競技・アスリート支援の現場を中心に、その知見を製品開発や社会貢献、地域振興、スポーツ界全体の発展に寄与している。ここからは、スポーツ振興ならびに競技・アスリート支援で実績のある味の素(株)、(一社)日本スポーツツーリズム推進機構、(一社)日本スポーツアナリスト協会、(一社)日本スポーツメンタルコーチ協会に取材し、スポーツ科学および関連分野の“いま”を伺った。