【これから注目の大学の新制度】学生同士の支援や、学習・生活習慣管理で 質の高い学生を育てあげる仕組みが充実|大学Times

大学Times Vol.11(2013年12月発行)

【これから注目の大学の新制度】密度の濃い学びで、質の高い学生の輩出を目指す大学の最新制度改革

18歳人口の減少に伴い大学の入学希望者数と入学定員数がほぼ同じになる、いわゆる大学全入時代。しかし、大学は学生を受け入れるだけでは存続していくことが難しいであろう。様々な社会問題を背景に社会で求められる人材像も変化している昨今、大学が果たす役割もその重要度を増し大きくなっている。
学生を社会で求められる人材に育て上げるために、自身の存続を賭けて改革に取り組もうとしている大学は少なくない。今回はそのような特徴的な取り組みを新たに始める大学に注目。平成27年度の実施を目指し「4学期制」の導入を構想する武蔵野大学と、今年度から単位制限を厳しくした「キャップ制」を実施している玉川大学の2大学に、お話をうかがった。

【武蔵野大学 4学期制】 ※導入予定構想中
単位の実質化と国際交流の活発化で主体的な学生の輩出へ

学修時間の確保が多くの大学の課題

武蔵野大学 副学長 中村孝文教授

本学では平成27年度の実施を目指し、現在4学期制導入の準備を進めています。導入の背景の一つは、日本の大学の多くがかかえている学修時間の質と量の不足という問題です。たとえば本学では、学生が1学期につき十数科目を履修することがよくみられます。それほど多くの科目を履修しながら、一つ一つの科目に集中して勉強をしていません。日本の大学生の授業外での学修時間は多くありません。アメリカの大学生では1週間に11時間以上勉強するという人が半数以上を占めるのに対し、日本の大学生は1週間に1〜5時間しか勉強しない学生が半数以上を占めるという統計があります。このままでは学生の質を上げることはできません。

これを改善するには、教員が学生に厳しく課題を出して提出させ、チェックする指導法が必要ですが、本学では1週間に5〜6科目以上の授業を担当している教員もあり、すべての科目に関してそれを実施することは到底できません。教員がしっかりチェックしなければ、学生も勉強しなくなる。しかしそれでも単位はとれてしまう。大学設置基準によれば1単位は30〜45時間の学修時間が標準と定められており、それは授業時間外も含んでいます。にもかかわらず、実際には、我が国の学生の学修時間は不足しているのです。

学期あたりの科目数を減らし密度の濃い学習を

4学期制では、各学期10週間以下で一つの科目の履修を終えます。したがってこれまでの「週1回授業がある1〜2単位の科目を15科目15週履修する」という履修の仕方から、「週3回授業がある3単位の科目を4科目10週履修する」という、より密度の濃い形に変えていく予定です。教員も週に担当する授業が1〜2科目となるので、一つの科目に集中することができます。週3回の授業は月・水・金1時限ずつでも、月曜に1時限・水曜に2時限でもよいでしょう。授業形態も、例えば月曜の1時限に講義、水曜2時限分でグループワークと小テストというような多様な授業展開ができ、従来の週1回の講義では難しかった、学生の主体的な学びの環境がより整うだろうと考えています。

留学生の送り出しと受け入れがスムーズになる

4学期制導入のもう一つのねらいは「国際交流の活発化」です。本学はすでに短期留学を8〜9月に行っていますが、その時期の派遣先のアメリカやカナダの大学では、すでに新学期が開始されるうえ、他の国からの留学生もほとんどいません。日本人専用のクラスが組まれて語学研修が行われています。日本以外の学生は主に6〜6月に語学留学に来ています。もし4学期制にすれば1学期を5月末から6月はじめに終えることができ、留学の時期を他国の留学生に合わせることができます。日本人ばかりがいる所ではなく、様々な国の学生がいる環境に飛び込まない限り、真の国際感覚は育たないと思います。

2学期は7月から6週間の期間を構想していますが、ここでは短期語学留学など語学研修を選択必修とし、またそれに対して多めの単位を配分することで、留学を促したいと考えています。この間に日本では海外からの学生のための語学プログラムも設け、そこで集中的に日本語を学んでもらいます。3学期からの授業で、日本人と同じスタート地点にたてるという仕組みです。今後優秀な留学生を受け入れ、大学としての国際的な力を上げていきたいと考えています。

【玉川大学 キャップ制】
履修単位数の上限を定め、学生の学修時間を増加させる

「単位を落とす」をできなくする

玉川大学 教学部長 菊池重雄教授

キャップ制度とは、1学期間に履修できる単位数に上限を設ける制度です。本学では制度自体は平成7年度よりすでに採用していましたが、今年度の新入生から、これまで20単位と定めていた1学期の履修単位数の上限を16単位と、さらに低くしました。1学期あたり16単位なので、4年間で最大128単位しか取れません。卒業に必要な単位数が124単位なので、少しでも落としてしまうと卒業が危なくなります。しかし余分に科目を履修して落としてもよいというのは日本の大学特有の考えです。世界の他の多くの国の大学の学生はぎりぎりの単位を取り、それを落とさないように努めており、それが普通の考え方なのです。

社会に出てから通用する主体的な学修姿勢をはぐくむ

キャップ制度導入の理由は二つあります。一つは国が定める大学設置基準を守るためです。大学設置基準によれば、1単位は1時間の授業と、予習と復習にその倍の2時間の学習をし、それを15週行うことで与えられるとしています。しかし現状、日本の多くの大学のような1学期あたり20数単位の履修数では到底自学自習の時間は取れません。これを是正したいと思ったのが一番の理由です。

もう一つの理由は主体的な学生の輩出です。現在多くの大学生は、学部を卒業しても自分の専攻とは関係ない職場に就職しています。その中で、大学教育に求められるものを考えたとき、必要となるのは、どんな仕事に就いたとしても通用する「自ら考えたり判断する力」を身につけさせることです。それを身につけさせるには主体的に勉強する習慣をつけていくしかありません。そこで、一つの科目に集中し、自学自習できる環境を大学が用意するべきなのです。

もちろん時間を確保しても、実際に学生が勉強しなければ意味がありません。そこで本学は、一つの授業を受けたらすぐ次の時間に授業を取れないような仕組みを作っています。授業と授業の間に空き時間を作り、そこで勉強をしてもらいます。授業も予習・復習を前提とした内容にしています。また学生の勉強をチェックできるよう、教員の授業の負担も減らしています。週に教員が受け持つ授業数を「2単位の科目5つまで」という制限を設けており、これを2015年までに全教員に徹底するつもりです。

学生の学修時間とGPAが向上
今後は4学期制も視野に

1学期16単位上限のキャップは今年度の4月に導入したばかりですが、学生を対象にアンケートを実施したところ、学生の学修時間は増加していることがわかりました。また学生のGPAの平均も上がっており、今のところ目に見える効果が出ています。

今後まだ課題もあります。現状の制度では3〜4年生になっても1学期ごとに16単位ほどの単位数を履修しないと卒業することができず、就職活動や教育実習との両立を考えなくてはなりません。そこで、今後は土曜日の授業開講や、朝早い時間、夜遅い時間開始の授業を開講する可能性もあります。また4学期制の導入も視野に入れています。教育実習には5週間と長い期間が必要で、その間は他の授業に出ることができませんが、1学期をさらに二つに分ければ、教育実習のために授業に出られない科目を前半で履修し終え、後半を教育実習に充てることができるのです。もし4学期制を導入する場合には「1〜2年生は2学期制で3〜4年は4学期制」など様々なパターンも視野に入れ、学生が勉強しやすい環境を作っていきたいと考えています。