【これからの日本を変えるこの分野】東京農業大学 応用生物科学部|大学Times

大学Times Vol.11(2013年12月発行)

【これからの日本を変えるこの分野 東京農業大学 応用生物科学部】時代が求める「食の安全・安心」と「食の機能・健康」を追究 食品安全健康学科の学びとは・・・

少子高齢化が進む現代、ますます健康志向は強まり、サプリメントや特定保健用食品(トクホ)への関心は高まっている。しかしながら、“健康と食”の有効なバランス、また、その裏に潜む危険性などの認識はまだ低い。このニーズに応え、東京農業大学では日本で初の「食品の安全と機能性」を学ぶ学科を来春開設する。その注目の学問について取材した。

「食の機能性」に偏ることなく、「食の安全性」との両面からの研究を

食の安全性と機能性を
体内のメカニズムから検証

農学系総合大学、東京農業大学の応用生物科学部に2014年4月「食品安全健康学科」が新設される。この学科が誕生する背景とその学びの特徴を同大学、応用生物科学部栄養科学科の上原万里子教授に伺った。

昨今の健康ブームのなかで私たちは食生活の重要性やさまざまな機能性食品・健康食品の情報を耳にするようになった。殊に少子高齢化が進む現代において、人々の健康志向はさらに強くなり、またサプリメントや特定保健用食品(トクホ)への関心は高まるばかりである。食に機能性を求めるようになったのは今から約30年前で、日本において機能性食品と名付けられ、海外ではファンクショナルフードと呼ばれ研究されてきた。しかし機能性ばかりが注目され、食の安全性が二の次になっていると上原教授はいう。今後は、食のグローバル化により機能性と安全性の両面から食を検証していく必要がある。

食の安全性といえば、食中毒が頭に浮かぶがその予防についての研究は進められてきた。一方食品の機能性因子という観点からの危険性の研究についてはまだ十分ではなかったという。食品安全健康学科では、有効とされる食品を過剰摂取することで逆にリスクと化す可能性や、農薬、BSE(牛海綿状脳症)、遺伝子組換え食品、放射線などのあらゆる危険性や毒性について正しい知識を身に付ける。また実験を通じて、人体のどこにどのような影響をどの程度及ぼすのか、機能性であればどのように有効かなど、そのメカニズムについて、客観的に食の因子との相関を検証するという。

東京農業大学 応用生物科学部

“食のグローバル化”時代
求められる確かな知識

東京農業大学 応用生物科学部

現在の日本の食品の半分以上は、世界から輸入したものである。食のグローバル化は、大豆や肉のように現物そのものの輸入もあるが、菓子などの加工品に使用する原材料も輸入に頼っており、この潮流はますます広がりをみせ、多様化していくものと思われる。

この点において同学科では、解析を中心にした科学的検証のみならず、輸入食品の流通に対する知識やリスクマネジメント論についても学ぶ。むろん、食品は輸入ばかりではなく、輸出される場合もあることから、海外での食品の安全と品質に対する基準を認識しなくてはならない。

食品安全健康学科で在学中に取得できる国際基準の食品衛生管理システム「HACCP」管理者資格は、今後海外展開を図る日本企業にとって、「食の安全・安心」を説明するために必要な管理者資格であるといえる。また食の「安全・安心」だけでなく、「機能と健康」の面でも知識と技術の習得を目指すため、食品メーカーにとどまらず、食品流通企業や行政・公的研究機関などで食品衛生管理を担うといった、幅広い場での活躍が期待される。

情報が錯綜する現代こそ
正しい食の安全性について発信できる リーダーに

東京農業大学 応用生物科学部

メタボリックシンドロームや生活習慣病が食生活の改善で快方につながることは知られているが、有効といわれている食品因子やサプリメントであっても、摂取量によってリスクにつながったり、また逆に毒性があると伝えられていた因子が、構造を少し変えることで薬の効果をもたらすこともあるということが、近年わかってきているそうだ。こういった知識を正しく理解し、情報過多の現代において、本当に役立つ情報を発信できる力を蓄えてほしいと上原教授は期待している。

食品安全健康学科ではまず1年次に生物学と化学の基礎をしっかり学び、2年次から専門科目が課せられる。この学問は「食の安全・安心」だけでなく、食品中の因子や機能がもたらす生体への影響についても深く探究する。食を科学的に検証し、これからの食をリードする人材の育成を目指している。

食卓がおいしく、かつ安全が保証され、さらに健康的な食品の情報を提供してくれる“新しい食のエキスパート”が一人でも多く養成されることを期待したい。

日本のココが変わる

上原万里子 農学博士

各個人の遺伝的背景に応じた食品の提供を

病気になったら治すのはお医者さんですが、その前に食事で予防できることがあります。バランスのとれた食の5大栄養素の摂取プラスアルファ―として、科学的根拠に裏付けられた病気のリスクを低減する機能性食品の有効利用です。現在では、糖尿病にかかりやすい、骨粗しょう症になりやすい、血圧が高めになるといった遺伝的背景を知ることができます。今後は各個人の遺伝的背景を考慮した栄養素の摂取や安全性が担保された機能性食品の提供をしていけるようになると思います。

上原万里子 農学博士

東京農業大学 教授 応用生物科学部栄養科学科 学科長