【特集】獣医系大学の現状とこれから 実践的な獣医師を養成するため平成28年より獣医学共用試験を開始|大学Times

【特集】獣医系大学の現状とこれから 実践的な獣医師を養成するため平成28年より獣医学共用試験を開始 監修 北里大学獣医学部獣医学科 井 伸二教授

実践的な獣医師養成のために、現在の見学型から参加型臨床実習が平成28年より実施されることになった。そのために、臨床実習生の知識・技能・態度など学習レベルを一定水準以上に保つ獣医学共用試験が導入される。

獣医学共用試験の実施により
見学型から参加型実習が可能に

獣医学共用試験とは、獣医系大学の学生が参加型臨床実習を始める前に受ける試験のことで、獣医学教育を受けている学生が共通で利用する評価試験である。共に用いることから共用試験と呼ばれ、参加臨床実習を実施する学生の質の確保と保証の前提として医学・歯学では平成17年度から、薬学では平成22年度から実施されている。

獣医学教育の充実・改善の取組において、社会の要請に応えうる実践的な獣医師を養成するためには、臨床・公衆衛生・衛生分野の「参加型実習」の実施が必要であるとして、全国獣医学関係大学代表者協議会では獣医学共用試験調査委員会を設けて調査検討し、医学・歯学・薬学の手法を参考として「獣医学共用試験」の開発を進めるべきと答申。さらに平成23年文科省の「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」によって、「共用試験の導入に向けた検討」が具体的方策として提言され、全国協議会は共用試験委員会など6つの実務委員会を設置。平成28年度の本格実施に向けて準備を開始した。

これまで、獣医系大学で行われてきた臨床実習は「見学型」に制限されていた。なぜなら、無免許の学生が実習で診断をする行為は、獣医師法第17条「獣医師でなければ、飼育動物の診察を業務としてはならない」という内容に抵触すると考えられていたためである。しかし、平成22年に農林水産省から法的解釈を見直した見解が発表され、「事前に学生の評価を行う」「指導教員の指導・監督・監視下で行う」などの諸条件を満たすことで「参加型」の臨床実習が可能となった。

2つの獣医学共用試験により
学生の知識・技能・態度を評価

獣医師の資格がない学生が臨床実習で動物(患畜)に接する場合、必要不可欠な知識・技能・態度が備わっていることを動物所有者(飼育者)に示し、診療に参加することに同意してもらうことが必要である。また、学生の知識・技能・態度のレベルを全国的にも一定水準以上に保つことも重要である。そこで、獣医学共用試験では実習に臨む獣医系大学の学生に必要な最小限の知識・技能・態度の到達レベルを公平かつ厳正に評価し、その質を動物所有者(飼育者)と社会に保証する。

全国16獣医系大学が共通で実施する獣医学共用試験は、コンピュータを用いて知識が評価されるvetCBT(veterinary Computer-zbased Testing)と、獣医臨床における診察技能・態度が評価されるvetOSCE(veterinary Objective Structured Clinical Examination)で構成され、合格した学生のみが参加型臨床実習を受けられる。vetCBT試験では、獣医学モデル・コア・カリキュラムの中で、5年次からの臨床実習に必要な獣医学の基礎・応用・臨床分野の知識について講義科目の一般目標と到達目標を明示。vetOSCE試験では、実習前に基本的獣医学知識・技能・動物所有者との基本的なコミュニケーション能力を備えていることが必要であるとの認識に立ち、基本的な臨床能力の確実な修得を目指す。

平成25年度より段階的に
トライアル試験を開催

現在、獣医学共用試験員会が中心となり、獣医臨床教育における「診療行為に参加する学生の事前評価について社会的信頼を得る仕組み」として、平成28年の本格実施に向けて獣医学共用試験の準備を進めている。平成25年度および26年度からvetCBTおよびvetOSCEのトライアル試験を数校の参加により開始し、平成27年度には全大学が参加するトライアル試験を実施して、次年度からの本格実施に備える計画である。

なお、獣医学共用試験は4年生後期および5年前期終了時の2回を計画。各大学は、参加型臨床実習の開講時期に合わせてどちらかを選択できる。さらに、平成28年に獣医学共用試験を実施するために、平成25年度以降の獣医系大学の入学生に対して、学生便覧、シラバスなどを通して同試験の実施を説明していく。

獣医学共用試験実施までのロードマップ