【インタビュー】東海地方の大学の教育力 名古屋工業大学 高木繁教授|大学Times

大学Times Vol.9(2013年6月発行)

【特集】大学の教育力特集 学部・学科名が同様でも内容や教育成果はさまざま。その教育力で大学を選ぶ時代

東海地方の大学の教育力 東海地区の大手製造業への就職が主流 近隣大学との連携で工学系の高度専門職業人を養成

日本を代表する工業地帯である東海地方には、トヨタ自動車やデンソーなど、日本のモノづくりを牽引する企業が数多く点在する。そこで、この地方に点在する大学の工学部では学び・就職についてどのような特色があるのか、また、東海圏内にある大学間でどのような連携・共同研究がなされているのか、名古屋工業大学の高木繁教授に話をうかがった。

―近年の工学部の就職状況を教えてください。

過去3年間の就職先ベストテン

近年、工学部卒の就職状況は好転しつつあります。平成23年度の名工大の求人倍率は工学部で20.7倍、大学院博士前期課程は10.5倍になっています。さらに平成20〜22年の過去3年間における就職先トップ3を見ると、名工大、名古屋大学工学部ともほとんど東海圏に本社のある企業になっています(右表参照)。

名工大の場合、多くの学生がトヨタ関連に就職しています。大学院でも「自動車工学」という授業も置かれているので、それも強く影響しているのではないかと思います。

なお、名工大では約3分の2が大学院に進み、院の卒業生のほとんどは就職先において技術職や専門職として採用されています。一方、学部卒では中小企業は別として、大企業では一般職でしか採用されず、また、公務員試験においても国家公務員1種を目指すのであれば、修士でないと難しい傾向にあります。しかし、これらの状況は名工大に限ったことではありません。大企業では技術開発のために専門の研究所や部署を設けているところが多く、技術開発レベルは年々高まっているため、研究開発職は大学院修了者のみを採用する企業が増えているからです。

また、最近の傾向として女子の就職も変わってきています。かつては女性の技術職の採用をしていなかったトヨタ自動車でも、ここ数年女性を採用するようになりました。

―大学院に進学するとどんなことを学ぶのですか?

大学院では研究が主な学びになります。学部と大学院の研究の違いは、学部は卒業研究であっても教授などから言われたことしかできないのに対して、大学院では自分で計画して研究をしたり、ある研究のプロジェクトリーダーとして、自らプロジェクトを進めていく能力が育まれます。そのため、就職でも「総合職」として採用され、企画や開発段階から任される仕事を担うことができるのだと思います。

しかし、大学院に進学するとしても受験勉強をしなければならず、現在は大学4年生の前期にほとんど研究ができない状態になっています。そのために、会社としても学部生を技術者としては採用しにくいということも言われます。そこで、名工大では「6年一貫教育」を模索しています。つまり、大学進学時に大学院に無試験で入れるコースや学部を作ることで、大学時代にしっかり研究できる時間を確保し、さらに大学院での学びの一部を学部のときに履修できるようにしていくことで、優秀な学生は5年で修士の資格が取得できる可能性が考えられます。

―今後はどのような人材育成が必要と考えていますか?

製造業の中心地である東海地方では、トヨタ自動車をはじめ日本を牽引するモノづくり企業が数多く存在しています。そういう地だけあり、どんどん新しい製品を生み出す環境がなくてはいけませんし、力を持った人材が求められるため、専門分野を究めていくと同時に、自ら発見・創造し、行動できる人材を育成することが大学の使命となっています。

近年は、東海圏にある大学の連携が強化されるようになってきました。平成25年度には名古屋市立大学との共同教育課程として、名工大の大学院に共同ナノメディシン科学専攻を新設しました。薬学は医薬品の創成、工学部は材料・デバイスなどの創成に関わる分野で、どちらも「ものづくり」という共通理念があります。そこで、名古屋市立大学と連携しながら、薬・工両方に精通した薬工融合型人材を育成しています。

また、農業に関しても静岡と愛知でかなりの生産高を誇るので、これからは農学の分野への連携も考えていきたいと思います。かつて食品栄養という分野は家政的な学部で学んでいましたが、今では農学部でも学べるようになっています。農学部の農業土木や農業機械の分野をはじめ、食品栄養における栄養分析などでは、工学部のほうが器具や機械が充実している場合が多いため、それを切り口にサポートしながら、一緒にやっていけると考えています。

今後も名工大は東大に次ぐ規模を誇る工学部の単科大学として、専門性を究めつつも、近隣大学・企業との連携・共同研究などを通して広い視野を兼ね揃えた、柔軟な人材の育成に取り組んでいきます。

教育力を高める東海地区の教育連携〜工科系コンソーシアムの取り組み〜

高木 繁氏

【プロフィール】

高木 繁(たかぎ しげる)

1979年、東京大学理学部化学卒業。
1985年、東京大学大学院博士課程理学系研究科化学修了。理学博士。
昭和63年より名古屋工業大学工学部生命・物質工学科教授。
所属学会はアメリカ化学会、日本化学会など