大学准教授×大学院生 大学教育に込めるもの、大学教育で得たもの|大学Times

大学Times Vol.12(2014年3月発行)

大学准教授×大学院生 大学教育に込めるもの、大学教育で得たもの 建築の学びは椅子に座って、設計図面を引くだけではない 実体験を通して「建築」を感じること

子どもの頃から建築家になりたいと夢見て、大学そして、大学院に進学。さまざまな授業を通して得た、学びの方向性、具体性とは。国立大学法人京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科の阪田先生と先生の研究室で学ぶ青野さんに大学進学と研究室での学び、また将来の就職へのアプローチについて語っていただいた。

―青野さんはどのような動機から京都工芸繊維大学を選択されたのですか?

建築のことを幅広く学ぶために

昔から大工さんが家を建てている現場を見ているのが好きだったんです。もともと物を造ることには興味がありました。絵は下手だったんですが、建築のことを幅広く学べる大学を探していました。。オープンキャンパスでこの大学を見学し、自宅から通学できるうえ、国公立ということでも親孝行になるかなということも志望動機にありました。

―難関大学だけに苦手科目の克服など受験対策は大変だったのでは?

志望校への強い思い

ぼくの出身高校は進学校ではなかったので、受験対策の授業が一切なかったんです。なので、先生には申し訳ないと思いつつ、前倒しで教科書の内容を自分で終わらせて受験勉強に費やしていました。と、言っても、実際、受験勉強をはじめたのは遅かったんですね。自分は野球部に入っていて最後の大会が終わるまで勉強をやっていませんでしたから。おまけに塾にも通っていませんでした。結局、受験勉強をはじめたのは3年生の10月くらいからです。通信教育でしたが、効率的にかなり集中して打ち込みました。それほど国公立の大学へ進みたかったんです。

工学系なので、理数系が得意かと聞かれれば全く反対でぼくは文系を得意としています。英語が得意だったのが効を奏したと思います。英語は大学院への進学にも必要不可欠ですし、将来の就職にも有利に働くので、英語はどんなに勉強しても損にはならないですよ。

―バイタリティ溢れる青野さんですが、阪田先生から見た彼の最初の印象は?

リーダーに適した人材

彼は今時、珍しく体育会系なんです。学部生の時はラクロス部のキャプテンを務めていまして責任感も強く、全体を見て人を動かせるタイプという印象がありました。プロジェクトを任せても、モチベーションが下がったら手が止まってしまう学生が多い中で、彼の場合はやりきるということを重視していましたね。つい最近の話ですけど、京都市内のとある地域の活性化という課題を出したのですが、地域との産学連携のイベントのリーダーを彼に任せたんです。そこは歴史に培われたコミュニティやルールがとてもしっかりしている。逆に一見の人にとってはなかなかその中に入り込むのが難しいんですよね。でもそこをクリアしないと物事が先に進まないんです。ふつうの学生ならそこで投げ出してしまうのですが、彼の場合はプロジェクトを全部やりきってなおかつ、地域の長の方と驚くほど打ち解けることができて、見事に信頼関係を築き上げてしまったんです。そのくらい、彼には責任感やコミュニケーション能力があって、人をまとめることができます。リーダーに選んだ僕の眼に狂いはなかったんだと思いました。

―阪田先生の研究室を選んだ理由と先生の初印象は?

限りなく建築現場に近い研究室

阪田先生の研究室は現場に出て実践的に建築を学べるということを学部時代に聞いていたのでそこに、魅力を感じて選択のポイントになりました。

ぼくは設計図面を描くだけでなく建築の全体を把握したいという気持ちがあったんです。それが先ほど話題に出ていた実習課題での地域のプロジェクトなどで、色々な経験をさせてもらって、さらにその気持ちが強くなりました。施工現場に行って実際に手伝ってみたいし、施主さんと図面を挟んで理想とする建物を造ってみたいんです。将来的には大工さんに近い、施主さんと顔をつき合わせながら住宅の設計をしていく仕事がしたいんですね。

だからゼネコンの場合だと誰に対して作っているのかがイマイチ不透明になってしまうのではないか、施主さんから遠い存在になってしまうのではないかなと思っていて・・・。なので、今のところ就職先にゼネコンや大企業は視野に入ってないんです。

大学では先生や友人、また実習などでいろいろな人と出会うことができ、刺激を受け、価値観を広げることができました。ですから、これからどんなところに就職したとしても視野を広く持ち、対応できていけるんじゃないかと考えています。

大槻さんの仏像スクラップ

―阪田先生が今後、青野さんにチャレンジしてもらいたいことはありますか?

優れたコミュケーション能力を活かして

彼にはスキルと精神力があるので、修士論文で東北の被災地の沿岸部で進められている、防災集団移転事業に取り組んでもらえればと考えています。これは津波被害に遭いそうな沿岸部の集落を高台のほうに移転させるという計画です。集落のデザインを丸ごとつくり直さなければならない。それを住民の方だけでは、どんな家の建て方をすればいいかとか判りませんよね。そこに研究を兼ねてサポートするようなことを来年から彼にやってもらおうかなと考えています。昔からの住民の方は外部者に心を割って話をするのは難しいところはありますが、彼なら信頼関係を築きながらうまく提案ができるんじゃないかと期待しています。

―最後に阪田先生が実践なさっている人材育成についてお聞かせください

学生自ら、なにかを発見できる環境づくり

設計だけではなく、研究もそうなんですが、椅子に座ってなにかを考えるだけではなくて、それを誰のためにやっているのか、なんのためにやっているということまで含めて、できるだけ実体験を通して建築を感じてほしいですね。本学の学生たちは体験することをためらいません。設計に興味を持って入ってくる学生が多いからでしょうね。「建築の実践の場」=「教育プログラムの場」のという前提で研究を行っていけば、これまで見過ごしていたり気づかなかった大事なことを学生たちが自ら見つけてきてくれると信じてやっています。こちらが少しサポートすれば彼らにできることはたくさんあります。それらに触れられる環境を作ってあげたいなと思っています。

京都工芸繊維大学はそんな意味でも、実験・実習という実学に重きを置いているので、勉強は大変ですが、みんな好きで学んでいるという大学です。好きでやっているからこそ専門分野に対して自信を持てるんじゃないでしょうか。

阪田弘一

【プロフィール】

阪田弘一(さかた こういち)

京都工芸繊維大学准教授
工芸科学研究科/建築造形学部門
1990年 大阪大学 工・建築工学卒業
1992年 大阪大院、修士(工学)修了
2000年
博士(工学)大阪大学「阪神・淡路大震災における避難の実態調査に基づく避難計画に関する研究」
専門 : 都市計画、建築計画

青野凌平

【プロフィール】

青野凌平(あおのりょうへい)

京都府立北嵯峨高等学校 卒業
京都工芸繊維大学 造形工学課程 卒業
京都工芸繊維大学大学院 造形工学専攻
在学中現在、被災地における小規模防災集団移転の研究に取り組んでいる