進化する大学の学生支援 発達障害を持つ学生への入学時・在学時・就職活動における大学の支援とは|大学Times

大学Times Vol.12(2014年3月発行)

進化する大学の学生支援 発達障害を持つ学生への入学時・在学時・就職活動における大学の支援とは

2005年、発達障害者支援法において「大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする」と定められた。これを機に高等教育機関では、発達障者に対する教育的支援制度の整備が求められるようになった。ここでは実際にどのような支援が行われているのかを入学時、在学中、就職活動時の3つの時期に分け探ってみた。 文:さんぽう 教育総合研究センター

発達障害とは

発達障害には自閉症や学習障害、注意欠陥多動性障害などの症状が見られるが、実際には障害ごとの特徴が重なり合い、明確に分けて診断することは困難である(下図参照)。その上、身体的障害ではないため、見た目では障害を抱えていることが認知されづらく理解も得にくい。

発達障害者支援法にて、高等教育機関へ障害者に対する支援を行うよう明示してはいるが、これは具体的な支援策へ導くものではない。実際の支援は個人の症状に合わせて施さなければならず、その内容も多岐に渡るゆえ、適切な教育上の配慮をすることは容易でない。この中で、大学ではどのような支援が行われているのだろうか。

東京経済大学

【入学時における支援】
本人の症状に合わせた支援を

発達障害がある場合、入試の際に「集団の中で試験を受けることが困難」、「問題を読むのに時間がかかる」、「マークシートをうまく塗り潰せない」といった問題が生じやすい。これらを踏まえ、大学入試センター試験では申請があった者に対し、「別室での受験または座席位置の配慮」、「試験時間の延長(通常時間の1.3倍)」、「チェック式の解答」等の特別措置を実施している。申請書の配慮事項は詳細に記されており、症状に見合った支援を選択できる。

各大学ではどうだろうか。「ひらく日本の大学」2013年度調査では、大学入試センターによる特別措置を基に提供する支援を決定する大学が目立つ。しかし、書面でのやり取りに留まらず面談にて直接要望を表明してもらう等、個々の状況をより理解しようとするケースもみられる。さらに、学生生活の疑似体験ができる機会を設ける大学もある。大学が提供できる支援と学生が必要とする支援のすり合わせで、入学後のミスマッチを防ぐ対策だ。

発達障害の性質上、均一の支援だけでは不十分なため、大学は統一された見解を提示できないのが現状である。ゆえに、受験生自らが大学側へ働きかけることも必要であり、大学側は独自の支援基準を明確にすることが今後求められるだろう。

【在学時における支援】
学習面・生活面の双方での支援を

学習面で直面する困難には「講義についていけない」、「ノートが取れない」、「科目履修の管理が困難」といったものがある。多くの大学では、ノートテイカーの採用や録音機器の持ち込み許可、職員による履修登録指導等で対応している。また、個々の学生に応じた配慮文書を教員に配布し、講義での資料の用意や板書の徹底等、講義自体を学生に合わせる例もみられる。

生活面での困難には、「新しい環境にストレスを感じる」、「仲間と馴染めない」等が挙げられる。このような場合、問題の早期解決が望める面談などの短期的な支援と、コミュニケーションセミナー等の講座で学生を啓発する長期的な支援も必要だ。学生本人に得意分野がある場合はチューターとして採用し、他の学生への指導(ピア・サポート)を通して仲間意識の向上を促す大学もある。

ただし、学生に応じた支援を行うには、専門知識を持つ人材で編成されるチームと学内の連携が必須である。この仕組みで表面化しないニーズを引出しつつ、学習面、生活面の双方において支援を行うことが理想である。

【就職時における支援】
学生の希望や特性を活かす支援を

表1:発達障害者の雇用状況(高次脳機能障害等含む)

厚生労働省によると、発達障害者の平成24年度求職件数は約5,600件、就職件数は約1,800件(表1)で、双方とも平成20年度の3倍以上である。しかし、未就職件数もまた増加しており、法定雇用率達成民間企業も42.7%(平成25年6月)と過去最高値を示したものの半数に満たない。現在は雇用率も引き上げられ更なる企業努力が叫ばれてはいるが、大学ではどのような支援を行っているのだろうか。

就労において、学生は一般雇用か障害者雇用かの選択を迫られる。後者は障害者手帳の所持が条件であり、雇用率の対象となる。そのため所持していることが採用を後押ししているのが現実だろう。しかし手帳の取得は学生やその家族の障害認識や障害受容といった心理的側面が大きく影響するため、抵抗を示す場合もある。履歴書等の書類作成補助、面接対策等を個別に行っている事例は多いが、学生の自尊心と特性を重んじた支援もまた必要だ。社会適応力を高めるソーシャルスキルトレーニングと称する独自講座の開設や、職場で直面するだろう問題点を認識するために、就労体験の場を提供することに努める大学がある。

就職は学生本人の適性や希望、能力だけでなく、企業の雇用努力や行政の施策にも影響を受けるだろう。そのため、ハローワークや地域障害者職業センターと連携し、障害者向けの雇用環境を整備することも有効だ。具体的には、地元企業への雇用依頼や採用実績のある企業との情報交換、特例子会社※への求人依頼等である。

上述した支援策の例はほんの一部に過ぎない。重要なのは個々の学生に対しオーダーメイドの支援を提供することだろう。発達障害者支援法において支援制度の整備が求められていることに加え、彼らが学ぶ環境や働く機会を望む限り、支援策の強化は必要不可欠だ。入学から卒業そして社会進出まで、様々な困難に直面するであろう彼らへの支援を可能にする環境作りは、大学にとって急務である。

※障害者雇用率の算定において親会社の一事業所と見なされる、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社