【これから注目の大学】2050年を見据えた「都市型高齢社会」における「生きがい創出」、「健康寿命延伸」、「災害に備えるまちづくり」。地域社会における大学の未来像|大学Times

大学Times Vol.12(2014年3月発行)

「地域志向」の大学を評価する仕組み 大学COC事業の意義と、高校生に与える影響〜杏林大学のCCRC(Center for Comprehensive Regional Collaboration)について〜

文部科学省が平成25年度から取り組む「地(知)の拠点整備事業(COC)」に、杏林大学が申請した「新しい都市型高齢社会における地域と大学の統合知の拠点」が採択された。2016(平成28)年に井の頭キャンパスが開設される三鷹市、また現存する八王子市、そして長年協働する羽村市の三市と、市民と大学とが連携して取り組む、教育・研究資源の有効活用について、リーダーシップを発揮する跡見 裕 学長に話をうかがった。

「グローバル」と「ローカル」は「車の両輪」

杏林大学 跡見 裕(あとみ ゆたか)学長

地域との交流や、貢献活動は随分以前からやってきました。中でも杏林ならではと思われるのは、市内に大学がない羽村市と包括連携協定を結び、大学の保有する「知」、「人的資源」、「人材」を有効活用してもらう活動です。

羽村市へインターンシップで学生が行く、英語教育を外国語学部の学生が行う、保健学部が羽村市民の健康に取り組む、医学部が救急診療所に人を派遣するなどの活動を行ってきた中で、今回の「地(知)の拠点整備事業(COC)」は杏林大学にピッタリのテーマと判断しました。キャンパスが存在する自治体との連携が必要ですので、医学部と保健学部・看護学科がある三鷹市、それ以外の保健学部、外国語学部、総合政策学部の三学部がある八王子市を巻き込んでの連携・交流となります。

杏林は一昨年、文部科学省の「グローバル人材育成推進事業」に採択されまして、「グローバル」と今回のテーマである地方の「ローカル」は「車の両輪」と考え、4学部の教育・研究資源を動員し、大学と地域との包括的な連携体制、杏林CCRC(Center for Comprehensive Regional Collaboration)を推進させました。

都市型高齢社会における「地(知)の循環」

三鷹、八王子、羽村市とも「生きがい創出」「健康寿命延伸」「災害に備えるまちづくり」を共通の問題意識としてテーマに掲げています。特に我々が問題とした大きな切り口は、ある一定程度の人がいて高齢化になるという都市型高齢社会です。実際日本の高齢化率は平均で24〜25%ですが、三鷹はまだ20%少々、八王子、羽村市が21〜22%と、現時点で日本の高齢化率よりも下回っています。ところが35年後の2050年頃、人口が8,500万人になる時代には全ての市町村の人口が減ります。今回のプロジェクトも、今後増えるであろう高齢者の方たちが、どういう形で大学と連携して上手く地域の中で循環するかが重要になります。そこが我々の命題であり、三市を上手く支える胆の部分です。

2016年、50周年にキャンパスを三鷹市に集約

三鷹市への移転はたまたま重なった形です。今回のプロジェクトの大きなポイントとして、例えば羽村や八王子で培った地域との包括連携協定やノウハウを一気に三鷹に集約し、新しい「地(知)の拠点」を作り上げ、それを羽村や八王子にフィードバックするというトライアルのチャンスを得たと思っています。医療・健康・福祉的な医学部、保健学部と、グローバルな見地で地域問題、災害対策を考える外国語学部・総合政策学部もありますので、それらを総合すると極めて良質な「地(知)の拠点」となり、素晴らしい計画や実施案ができると期待しています。

市民から吸い上げた問題点やニーズ

杏林大学のCCRC推進の仕掛けのまず一点目は、「杏林コモンズ」を三市に設置しまして、関連の教員や学生が地域住民の方々との交流を通じて健康や観光交流について考え、ニーズを吸い上げていく仕掛けです。

二点目は、年に2回ほどの会合を持ち、地域の方々から得た情報や問題点を、今度は行政、大学、産業界・経済界から関係者が集まり、地域活性化案や問題点を出していくという「杏林CCRCラウンドテーブル」の設置です。そこで集約された意見を三鷹に設けた「CCRC研究所」へ持ち込み、解決策や方策を提案していくという組織になります。

地域住民の生の声

昨年11月、「地(知)の拠点整備事業」のシンポジウムを2回開催していずれも100名以上に集まっていただきましたが、その場で「杏林が持っているリソースを、どういう形で地域に出すか。また地域の人達が杏林とどう関わっていくか」という、「地(知)の循環」に対する期待の声が届いています。

「地域と大学」が必修科目

2014年(平成26年)4月からすべての学部で「地域と大学」というカリキュラムを必修科目として取り入れました。地域の抱える様々な魅力や問題点、いろいろな事柄を学ぶのですが、それは場所や形を変えてもどこにでも通用すると考えています。身近な地域のことをしっかり勉強することによって、応用範囲や得るものは極めて大きいと思います。

例えば外国人労働者が多い羽村市で「災害に備えるまちづくり」を考えた場合、災害時に問題になる弱者問題があがります。高齢者や体の不自由な方同様、日本に住んでいる外国の方々も弱者だと思うのですが、そうした方に対してどう対応するのかということを、4学部が一体となってグローバルな政策論を展開します。これは極めて杏林に適したテーマではないでしょうか。 

高校生の将来設計を考える

高校生には「グローバル」と「ローカル」、という「車の両輪」のような杏林大学の考え方とアウトカム(成果)を理解いただきたいです。

その地に生まれ育った人が自分の老後や、子や孫たちとの共同生活・地域生活をエンジョイできる方策を考えるのが、地域に根ざした杏林型CCRCです。高校生もそうした自分の将来設計をどう考えるかということを勉強するいい機会だと思います。

未来は開けている

高校生へ伝えたいことは「未来は開けている」ということです。まだ若い高校生ですからそれを確信して努力して欲しいです。元来勉強とは楽しいものではないかもしれませんが、学びの過程を通じて自分の考え方やそれを整理する能力を身につけられることは見逃せません。勉強しようという過程やその思考で養ったものが、自分の生き方に対して極めて大きな道しるべになります。焦らずに生活や学びを通じて多面的な見方を身につけてください。広い意味でそれが教養につながるのです。

地域住民とともに

2016(平成28)年、八王子キャンパスが移転してくるということで三鷹地域の方々は非常に期待しています。それはひしひしと感じます。その期待に十分に応えて地域の方々に杏林の持ついろいろな資源とノウハウを有効に活用していただきたいと思います。是非一緒に「生きがい創出」「健康寿命延伸」「災害に備えるまちづくり」を確立して参りましょう。