グローバル教育は、国際人として求められる幅広い教養と知識に裏付けされた対話力の育成|大学Times

大学Times Vol.16(2015年3月発行)

グローバル教育は、国際人として求められる幅広い教養と知識に裏付けされた対話力の育成

近年グローバル教育の必要性が叫ばれる以前から、国際人育成を教育の根幹とし、国連やNGO、海外に拠点を置く企業で活躍する人材を多く輩出している上智大学と国際基督教大学。2大学の教授に、今求められている真のグローバル人材とは?その育成のための大学の役割とはなにかを伺った。
また、2015年度一般入試に新たに導入される入試制度、国際基督教大学では「総合教養(ATLAS)」、上智大学では「TEAP(アカデミック英語能力判定試験)」の概要と試験の主旨について解説いただいた。

【国際基督教大学(ICU)】
先駆的なリベラルアーツ教育で国際社会の期待に応える

対話を重ね、地球市民に相応しい「個」を創る

国際基督教大学(ICU)教養学部長 伊東 辰彦 教授

本学はキリスト教精神を理念として、独自のリベラルアーツ教育を展開してきた歴史があります。その教育・人材育成は、入学前の自己をいったん解体して再構築するような営みとも言えます。

少人数教育のもと、なぜ?どう思う?と批判的な思考による対話を重ね、知識を深めるとともに自己実現の道を模索していきます。同時に、異なる意見にどう向き合うか、問題を多面的に理解し「解」を導く手法も実践します。このプロセスの体得による「個」の確立なくして、真のグローバル人材の育成はできないでしょう。これまで海外で活動する多くの優れた人材を育ててきましたが、キャンパスの学びや学生生活が、そのままグローバル社会を日常体験するような環境でありたいと考えます。多様な交流を通して刺激を受け自己を高めることで、文字通り豊かな教養を備え信頼される地球市民として巣立っていくことができるのです。

スーパー・グローバル大学等事業(SGU)においては、こうした体制のさらなる充実を図ります。語学教育プログラムの見直しもその一つです。定評ある英語教育に加え、日本語教育にもいっそう注力します。両方の言語が運用できることは対話の基礎的能力であり、また日本の教育制度で学んできた学生も正しい日本語の使い方や自国の文化について理解することは国際人として不可欠でしょう。入学する学生のバックグラウンドが多様化していることに鑑み、学修支援体制もさらに強化していきたいと考えています。

聴く力、学ぶ力を評価するATLAS

2015年度から一般入試に「総合教養(ATLAS)」を導入します。これは、特定のテーマに関する講義をその場で聴き、その内容およびそれに関する論述などの設問に解答するものです。対話では、瞬発的に相手の言いたいことや気持ちを汲み取っていく「聴く」能力が極めて重要です。日本の入試ではとかく知識の量が問われ、学生もどちらかと言えば、読み書きは得意ですが、先生の話や他者の意見を聴いて即座にレスポンスしていくような訓練は疎かになっているような気がします。こうした傾向に一石を投じることができればと願っています。

「ATLAS」の愛称は、広い視野をもち世界を支える人材になってほしいという願いをこめてつけました。昨今の入試改革の影響というより、本学の教育の蓄積や従来行ってきたLARA(リベラルアーツ学習適性)の実績を踏まえ、さらに深化した入試をめざして生まれたものです。

本学はほぼ全員の教員が、一般教育科目を担当しています。初学者や専門外の学生に自らの専門をわかりやすく教えることは簡単ではありません。こうした環境や経験があってこそ、ATLASのような横断的な問題を開発することができるのです。

自由で刺激的なリベラルアーツの学び

高校生の皆さんには、普段の授業や学校生活を大切にし、知識を積み上げて、それらを踏まえていろいろな可能性を見つけていくような学びを続けていってほしいと思います。そこでは、教科の枠にとらわれない横断的な発想も必要です。

本学は理系文系を超えて自由に学べる体制を敷いていますが、そこからなにを掴みとるかは自分の気持ち次第です。本学の卒業生のなかには、音楽学を専攻しながらその後に医師になった方や、理系を志望して入学しながら、経済学を軸に環境問題に取り組む方もいます。リベラルアーツはさまざまな人や知識が出会い、触発し、創造していく自由でライブな学びです。高校の先生方とも対話を続けながら、将来の大学や教育のあり方について、私たち自身と社会に対して問い続けていきたいと思います。