【東京工科大学 デザイン学部】大学での学びを円滑にするためのリメディア教育|大学Times

大学Times Vol.9(2013年6月発行)

【特集】「入学前教育」「初年次教育」特集 次世代の人材育成には高校と大学の連携が必須

進化する大学教育〜デザイン学部の未来〜 【東京工科大学 デザイン学部】大学での学びを円滑にするためのリメディア教育

東京工科大学デザイン学部では美術・デザイン系学部としてはいち早くリメディアル教育を導入。大学入学前に高校までの学びをきちんと理解する目的が強いリメディアル教育だが、東京工科大学デザイン学部のリメディアル教育は大学で学ぶための基礎を養成することで、デザインを考える力や感性を磨き、入学後の学びをスムーズにする効果も期待される。

横断的かつ実践的な学びで実学としてのデザインを習得

東京工科大学デザイン学部では、「実学としてのデザイン」を身につけ、創造性とチャレンジ精神を持ち、社会で活躍できる人材を育成している。

そのために、1・2年次で行われる「感性演習」では、実際に手を動かし、考察する「描く」「つくる」「伝える」「関係づける」を徹底して学習。さらに、2・3年次での「スキル演習」では、感性をイメージ通りに具現化するための表現技法を学ぶ。グラフィックから映像、空間、最新ディジタル技術などの16科目から8科目以上選択履修することができる。さらに、「視覚と伝達」「映像と構成」「空間と演出」という3コースを設置し、3年次にはこの3つの専門分野を横断的に学ぶことで、次世代のクリエイターに必要な総合的な視点や思考力が養成されると同時に、自身の適性をじっくり見据えることができる。3年次最終クォーターから、それぞれのコースに分かれて専門性を高めていくことで、広い視野に立ち社会に貢献する「デザイン思考」を習得できる。

6つのリメディアル課題によりデザインの基礎力を磨く

本学部では8月AO入試と10月AO入試、公募推薦で合格した入学予定者および指定校推薦における入学予定者を対象に、リメディアル教育を実施。昨年は、入学3カ月前から実施し、通信添削の課題を約2週間に1課題のペースで行った。添削を返送する際は、課題ごとに評価シートを作成し、作品に対するコメントを入学予定者ごとに記入。あわせて、参考となる優秀作品を毎回数点選び、そのデータも合わせて返送している。これは他の生徒の優秀作品を観て学んでほしいというだけでなく、全国で頑張っている同期生の存在を感じることが刺激となり、次の課題に取り組むモチベーションの維持につながることを期待するものである。

課題は五感を使って感性を磨き、観察力や創造力といったデザインを学ぶために必要な基本力を養うプログラムを用意し、基礎・応用・展開というステップを踏みながら、入学後、スムーズに授業に取り組めるように構成されている。

リメディアル課題は1〜3課題という大学が多い中、本学部では6課題を用意。「水の写真を描き写す」「アイコンを作る」といった6つの課題は、デザインの世界を簡潔に俯瞰することができるものを設定し、これからデザイン学部の学生になる入学予定者に主体的にデザインへ関わる意識を持ってもらうことを意図して出題されている。

リメディアル課題作品例

丁寧なリメディアル教育により個々の感性・考える力を養成

デザインの世界はアートと違い、完成させた成果物がどういう機能を果たしているのか相手に理解してもらわなければならない。一見華やかに見えるが、実際は徹底した調査や研究、社会や自己との対話など地道な努力が必要であるため、入学予定者が課題を提出する際には、コンセプトも記入し、大学側は単に見た目の表現だけでなく、考え方やアウトプットについて総合的に評価する。

例えば、「こどもの視点から考える」というリメディアル課題では、こどもが自由に遊ぶことができる場所を提案する。この課題は、日常生活の中での観察(調査・研究)や「こども」と「場所」の関係づけなど、社会や自己と対話し考える力が重要であると気づくきっかけとなったのではないか。

入学後すぐに始まる大学の課題に対応できる素地が作られるため、入学直後の「デザイン論」の授業で行われた「こどもの頃の遊びの地図」という課題では例年よりも多くの優秀作品が生まれるなど、大きな効果を上げた。

大学の先駆け的な学びが支持されリメディアル課題の提出率は97%

昨年リメディアル教育の全6課題の提出率は97%を誇る。そして、課題に取り組んだ入学予定者からは「今まで気がつかなかった物の持つ複雑な形態」を知ることができた」、「自分の得意不得意がよくわかり、得意分野はさらに究め、不得意分野は克服していこうと思えるようになった」、「評価シートにほかの人の作品が載っていて、『こんなにすごい作品があるんだ』と毎回とても参考になった」といった前向きな声が寄せられている。リメディアル教育が多くの入学予定者の支持を受け、大学の学びをより具体的に理解し、習得できる場になっているのは間違いない。

リメディアル教育が実社会で活躍する人材の下地をつくる

東京工科大学デザイン学部ではAO・推薦入試とリメディアル教育はセットで考えるべきであるという自論を持つ。なぜなら、AO入試合格者や推薦入試合格者の中には、既存の入試では測れなかった魅力をもつ学生がたくさんいる。一人ひとりの感性を大切にするためには、より丁寧な準備教育が必要であると考えているからである。実際、リメディアル教育を受けた学生からも「リメディアル教育を受けたことで、入学後も課題に対して妥協せず、すべての力を注いで作品制作ができるようになりました」といった好意的な意見が寄せられている。リメディアル教育を受けることで、造形力だけなく、デザインに対する考え方を養うことができ、この学部の学びの特徴である実社会で通用する「考える力」を持ったクリエイティブな学生を育成する下地となっている。