【獣医系学部特集】教員インタビュー 日本獣医生命科学大学|大学Times

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大学Times Vol.44(2022年4月発行)

【獣医系学部特集】教員インタビュー 日本獣医生命科学大学

近年、都市部では動物病院の看板をよく目にするようになった。しかし今日、獣医師の役割は「動物のお医者さん」の域を超え、ウイルス感染症をはじめとした人間の健康対策や、動物虐待抑止、公衆衛生など想像以上に幅広く担っている。日本獣医生命科学大学では、かねてから獣医学の新しい分野に率先して取り組んでいるというが、同大学卒業後、アメリカの大学で先進分野「シェルターメディスン」を長年研究し、帰国後は母校で「動物福祉」の研究と普及に取り組む田中亜紀講師に話を伺った。

日本獣医生命科学大学 獣医学部 講師田中 亜紀(たなか あき)

日本獣医生命科学大学 獣医学部 講師田中 亜紀(たなか あき)

PhD(Epidemiology)
野生動物学研究室
研究キーワード:動物福祉 研究分野:ライフサイエンス/獣医学 日本獣医生命科学大学獣医学部卒業後、2015年3月までカリフォルニア大学 デービス校

動物治療だけではない
人間の健康や地域環境の安全を守る
「ワンヘルス」という考え方

獣医学とは、動物の病気を治すだけではありません。今話題となっているのは「ワンヘルス」という言葉で、動物の健康、人間の健康、環境の健康を一体化し、どれか一つでも欠けてはいけないという概念です。その根底を支えているのが、獣医学です。とても裾野が広い学問だと考えています。

動物の治療だけでなく、たとえば人間にも影響を及ぼす病原体は動物由来であることも多く、環境衛生も含めて地球の生命すべてを網羅しているのです。獣医師の役割は人の健康や地域の安全という意識も必要となり、社会的意義が大きくなっているのです。

動物虐待を発見し治安悪化を未然に防ぐ
社会貢献にも寄与する獣医学

もう一つは、日本には動物の愛護と管理についての法律がありますが、昨年改正され、動物虐待について獣医師は通報義務が課せられたことです。それは何者かにケガを負わされた動物が「かわいそう」という観点だけでなく、その先には動物虐待が人への凶悪犯罪へとエスカレートすることが懸念されるためなのです。これは治安の問題であり、獣医師が犯罪の抑止となって地域の安全を守るために大きな社会貢献の役割を担うことになります。

およそ9割が動物由来の病原体といわれるウイルス感染症の対策も、医学だけでなく獣医学の知識が必要です。このように幅広い領域の職業であり、獣医学は「社会貢献の学問」だということを是非知ってもらいたいです。

動物愛護とは異なる新しい学問
シェルターメディスン(動物福祉)とは

私の専門は「シェルターメディスン」という新しい獣医学の分野です。「家族」のいない動物の福祉を科学的に分析し、エビデンスをもとに動物の状態を総合的に判断し、治療だけでなく環境や飼い方も含めて良くしようと考える学問です。これは「かわいそう」などの感情論を伴う動物愛護とは異なります。治療を行って「ただ生きている」だけではなく、目の前の動物の置かれた苦しみや苦痛からどのように解放するかを調査研究し、科学的に解明するのです。

災害現場での動物避難の課題に取り組み
人と動物の豊かな関係を築く

近年は野良犬や野良猫の数が減少傾向にある一方、毎年のように発生する自然災害で、避難所や仮設住宅での伴侶動物のケアが課題となっています。先進国の中で日本は家庭での動物飼育率が最も低く、欧米の半分以下というデータもあり、ペットに対する認識の違いを実感することがあります。他者の飼う動物への不寛容が動物虐待を招く恐れもあり、獣医師が根拠をもって「一緒でも大丈夫ですよ」と周囲を安心させてケアのできる体制づくりが、これからの獣医師の使命だと認識しています。地球は人間だけのものではありません。災害救助犬は人々のために、その能力で人間の5倍以上活躍するそうです。社会の中に動物がいて当たり前、地球全体の命と健康を守るのは獣医師にしかできない役割ですから、この学問を発展させて社会全体を良い方向へ導いていきたいと考えています。

さらに、私の研究室の学生たちにも日頃から、動物の命を救うだけが獣医師の役割ではなく、動物福祉を守ることを考えて獣医学を学んでほしいと伝えています。

新しい分野を率先して取り入れる学風と
東京の駅近キャンパスの利便性も

私が日獣の学生だったときに、獣医系大学で初めて「野生動物学研究室」ができました。私の専門「シェルターメディスン」も取り入れられ、日獣には新しい分野に率先して取り組む学風があります。獣医学部でありながらキャンパスは私立大学獣医学部唯一の東京都内、しかも駅近で都心とのアクセスが便利なのは利点が大きいと思います。情報が集まりやすく、発信しやすいこと、平素から動物をめぐる社会問題にも遭遇しやすいので実践的な学びに繋がること、特に先進事例はまず東京に集まるので、それらを活かした点が日獣ならではの学びといえるでしょう。

国家資格の強みを活かし
キャリアチェンジや復職も可能

獣医学に興味を持つ動機は何でもいいと思います。間口の広い学問なので、自由な発想でスタートしてください。獣医学部では6年間かけて、自然科学を幅広く学びます。獣医師は企業勤務など可能性のある、職域の広い職業です。さらに国家資格としての強みもあり、獣医師の資格を活かしたキャリアチェンジもしやすく、女性は出産後の復職も容易です。獣医師のニーズは全国的にあり、特に公衆衛生や畜産など食の安全を根底から支える地方公務員の獣医師は不足しています。一生の仕事として取り組める職業です。

「獣医師になりたい」気持ちが大事
個性を生かして志をサポートしたい

日獣では学生の個性を生かしながら「なりたい獣医師」をめざせるよう、その志をサポートしたいと考えています。特に3年生から研究室に入り、卒論制作までの4年間、教員がサポートする体制が整っています。アットホームな雰囲気の中、研究室単位で学生を育てています。獣医保健看護学科の学生も2年生から同じ研究室に入るので、学生のうちからチームワークを学び「チーム獣医療」の練習ができます。興味のある高校生はぜひ、日獣で希望への一歩を踏み出してください。