【連載シリーズ】高等学校インタビュー① 広尾学園小石川中学校・高等学校|大学Times

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大学Times Vol.44(2022年4月発行)

【連載シリーズ】高等学校インタビュー① 広尾学園小石川中学校・高等学校

広尾学園小石川中学校・高等学校
校長 松尾 廣茂(まつお ひろしげ)

「大学タイムズ」はメイン読者である高等学校の進路指導の先生方へ、独自の取材によるさまざまな大学情報をお届けして12年目を迎えました。
今号からは新たに、全国の大学で入試業務を担う皆さまへ「高校の教育現場の今」をお届けします。

第1回は2007年の共学化から特色ある教育で新風を吹き込み、都内屈指の人気校へと急成長した「広尾学園中学校・高等学校」の姉妹校としてこの春2年目を迎えた「広尾学園小石川中学校・高等学校」の松尾廣茂校長を訪ねました。

中学受験は2年連続で志願者数1位
今年度から教員数を増やし新たな学校づくりに着手

111年続いていた村田学園(村田女子高等学校)を共学化及び校名変更し、広尾学園の姉妹校として2021年にスタートした学校です。広尾学園小石川は、広尾学園で成功を得た本科コース、インターナショナルコース、医進・サイエンスコースうち、「本科コース」と「インターナショナルコース」の2つのコースを設置しました。コンパクトでインターナショナル色が強いという特長があります。東京都内は中学校受験に熱が入っており、2021年度開校当時から志願者数3,801名と都内で1番、2年目も更に志願者数が4,047名に増えて1番となりました。2年目は実際に広尾学園小石川の生徒の教育を見ていただいた上での、更なる志願者数の増加と受け止めています。手前味噌ですが、倍率や志願者数の点では人気校への仲間入りをしたのではないかなと思っています。

今年度からは外国人教員を14名、さらに広尾学園での教育に携わった教員18名に他校の進学校で実績を挙げた教員10名が加わり、新たな学校作りに取り組んでおります。

一年で生徒のやる気を呼び起こし
大学受験でも好結果を残す

教職員が一丸となり、たった一年の改革の中で、大学における進路実績が急激に上がりました。今までは商業で名を馳せて伝統的に就職志向の学校でしたが、昨年度はGMARCH、それから早慶上理、国公立といった大学に多くの生徒が入りました。要因の一つは、元々持っている子どもたちのエネルギーにやる気を与え、それに応えて育てられる教員が揃ったからと自負していますし、その点が評価され中学校受験の志願者数をさらに伸ばしたのではないかと受け止めています。

学年の枠を超えて勉強しあう夏期講習
「自ら選んで学ぶ」仕組みが功を奏す

改革のひとつは、広尾学園小石川の1期生から7カテゴリー4タームの講座を先生方が用意して「夏期講習」を実施したことです。生徒たちは自分で選んで受講できるので、たとえば歴史が大好きな中学生が「大学受験の日本史の授業に出たい」や、高校3年生が「もう一回基礎をやりたい」と高校1年生対象の講座を受けることもありました。無学年制を採用し、生徒が自分で考えて自由に講座を受けられるので、学年に関係なくお互いに勉強し合います。村田女子高等学校で入学している生徒と、広尾学園小石川中学校・高等学校で入学している生徒という、制服も入学の仕方も違う子どもたちがこの校舎にいる中で、無学年制の講習が緩和剤になってお互いに高め合う様子は、教員として嬉しく思っております。

生徒たちの夢を実現する環境を第一に
“校舎の外”とも積極的に連携

自分がやろうとしている夢を、さらにバックアップしてくれるような環境が学校に投資する意味だと考え最善を尽くしています。特に能動的な学習をする生徒たちには、“伸びる環境”を作っていきたい。我々の力で及ばないところは校舎の外でも活用していこうと、先ずは近隣の施設と連携協定を結びました。東洋文庫は三菱の3代目当主岩崎久彌が作った東洋学の研究図書館ですが、第二の図書館のように子どもたちが利用することを期待しています。和敬塾は車で10分ぐらいの場所にあり、東大や早稲田大の男子学生が寮として利用しています。寮の学生さんが来校し、放課後、自習室に残っている生徒たちに対して、解らない問題を家庭教師のように聞いて教えることができるのですが、意外にも大学生活や、どんな研究をしているかを聞いていることが多く、その後は子どもたちの意識が変わっているようなのです。「○○大学ではこういう研究をしているから行きたい」とか、中には東大で宇宙飛行士をめざす大学院生の話を聞いて、「自分も宇宙飛行士になりたい」と言った生徒もいました。キャリア教育の一つとして社会で実績を積んだ方が直接子どもたちにお話しするのも魅力的なことですが、年齢の近い大学生に熱き夢を語ってもらうのは、子どもたちにとって刺激的だと感じました。和敬塾は広い敷地に由緒ある建物があり、そこで剣道部や茶道部が活動しています。“本物”に触れ、絶えず子どもたちには刺激を与えていきたいと思います。

広尾学園小石川を“基地”として、生徒の夢を育むためにはいろいろな方にお世話になりながら、放課後は外に出て活動できる環境を整えていきます。将来的には高大接続、色々な縁を持ちながら大学とも連携を取り、「この先生のゼミに入りたい」という想いを持ちながら受験勉強することなども想定しています。

村田学園から広尾学園小石川に変わる
教員研修で受験指導力を強化

教職員の意識改革は一番重点を置きました。教員は、常に自己研鑽しなければなりません。入ってくる子どもたちのレベルが一気に変わる想定のもと、子どもたちの夢を実現していくために、まず私は生え抜きの先生方全員と面談をし、前向きな考え方に心を惹かれました。そして長らく大学受験指導から離れていた先生には、研修を強化しました。自身の大学受験を思い返すように、実際の問題を解き、授業力研修を実施。大人でも意識さえ持っていれば、思い出したかのようにどんどん力が付くのです。子どもたちの授業満足度は非常に高いと思います。保護者も子どもたちも、特に第一期生たちは歴史をつくっていく、この学校に愛校心を持ってやっていこうという意気込みが強く見受けられます。

中高生から国際感覚を育むために
持つべき二つの“心”

「チャレンジする心」を持つことが、国際感覚やグローバル化で一番大切だと考えます。語学が堪能になることだけが国際化ではありません。当然語学が出来れば便利だし、有利に働く部分もありますが、真の国際人とは多角的な視点を持っている人であり、その視点は自分の文化から見た他者だけではなく、他者から見た視点で自分や自国を捉える人ではないでしょうか。広尾学園小石川にはいたるところに世界地図があります。中にはマグネット状で地域ごとに取り外しのできるものもあり、子どもたちが日本を自由に移動して世界のことを色々と議論する様子が見られます。

もう一つは、思い通りにならなくても「くじけない心」、タフさを持つことです。歩みを止めないで真摯に努力を続けると、ある時大きな一歩が出て目標を達成します。しかしもう一方では、方向を変える力も必要なのです。短絡的に結論を出さず、やるべきことをやっていくと、初めに描いた夢が形を変えて違う夢に移るかもしれないし、その夢が実は本当に素晴らしい夢だった、受験勉強とはそういう学びをしているのだと感じます。自分の中に軸を持ち、常に能動的に行動して諦めないのが国際人だと考えています。

海外の大学進学も視野に
グローバルな教育環境を整備

インターナショナルコースには帰国子女などの「アドバンスグループ(AG)」と日本語で授業を行う「スタンダードグループ(SG)」がありますが、朝礼と音楽、技術家庭は全員英語で行っています。 SGは本科コースよりも英語の授業時間数が多く、英語力が格段に伸びる生徒が多いのですが、学校全体が海外文化を学ぶ環境にあるので、本科コースでも自然と英語力が伸びる特長があります。さらに海外大学を受験するノウハウをもった外国人教員が14名おりますので、日本の大学と海外の大学のどちらでも進学できるよう、グローバル教育に力を入れていく所存です。