【グローバル系大学特集】世界基準を身に付け、ニューノーマルに対応せよ!|大学Times

  1. 大学Times
  2. 特集記事一覧
  3. 【グローバル系大学特集】世界基準を身に付け、ニューノーマルに対応せよ!

大学Times Vol.44(2022年4月発行)

【グローバル系大学特集】世界基準を身に付け、ニューノーマルに対応せよ!

ロシアのウクライナ侵攻によって、世界経済が大きな打撃を受けている。エネルギー不安や相次ぐ物価上昇など、私たちの暮らしにも直接影響が及ぶようになった。一国では社会生活も成り立たない今日、自国の利益のみを追求していては問題解決にならないであろう。「新冷戦」そして「ニューノーマル」時代のグローバル人材育成という喫緊の課題に対し、国も支援を行っている。参議院企画調整室(当時)の松井一彦氏が2020年11月に発表した論文「コロナ時代におけるグローバル人材育成―大学等を中心に―」から、今求められるグローバル人材教育と課題について探りたい。
(全文URL:https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2020pdf/20201102072.pdf 抜粋箇所は掲載意図を考慮し本誌編集部が選定、小見出しを加筆)

世界でもアジアでも競争力が低迷の日本
教育への公的支出の少なさが主因と指摘

今日、国際競争の激化や大国間の対立がある中で、日本は様々な課題に直面している。本年(2020年)6月に発表された2020年の「世界競争力ランキング」で日本は34位となり、1997年以来最低の順位となった。分野ごとに見ると、日本は政府や企業の効率性に加え、インフラストラクチャー、中でも教育のインフラが脆弱であるとされた。経済協力開発機構(OECD)の2018年調査が示すように、教育への公的支出が少ないことなどがその主因だろう。また、2020年の「世界デジタル競争力ランキング」では日本は世界27位で、アジアでも7位にとどまっている。ポストコロナの時代を見据え、持続的成長を図るためには、新たな価値の創造、技術革新などを踏まえ、経済・雇用の回復、Society5.0や国際金融都市等の実現のための努力のほか、日本の強みをいかした国際競争力と存在感を高める取組も必要である。こうした取組を効果的に進めるため、これまで行ってきた大学等でのグローバル人材の育成を引き続き国が推進することが重要だろう。(「グローバル人材育成の意義」より)

グローバル人材の構成要素に
「デジタル能力」を加える

図表1 グローバル人材の構成要素

(前略)平成24年6月公表の国の「グローバル人材育成推進会議」審議まとめでは、図表1のとおり、3つの構成要素(要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力 要素Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感 要素Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ)を挙げたが、その中に「日本人としてのアイデンティティ」を加えたことが特徴的である。コロナの時代におけるデジタル化の進行を考慮すれば、これら3つの構成要素に「デジタル能力」を加える方が良いのではないかと思われる。

上に述べた素質・能力のうちいずれに重きを置くかはさておき、これらを備えたグローバル人材育成のため大学等で行うべき取組には外国語教育の強化、双方向の留学生交流(日本人の海外留学、海外からの留学生の受入れ)及び大学の国際化などがある。(「グローバル人材育成とは何か」より)

日本人留学生数は増加するも
海外進出企業からの声で短期傾向を再考へ

総務省は、平成29年7月、グローバル人材育成の推進に関する政策について、総体としてどの程度効果を上げているかなどの総合的な観点から評価を行い、その結果を取りまとめ、必要な改善措置について文部科学省に勧告を行った。(中略)政策効果は一定程度発現しているとされている。(中略)

日本人の海外留学については、図表2のとおり6か月未満の短期留学が約8割を占める中、本政策評価において実施された海外進出企業に対するアンケートによれば、回答企業の約8割が6か月以上の留学期間を理想的としたことを踏まえ、短期留学の政策上の位置付けを明確にした上で、第3期教育振興基本計画に反映させる必要があるとされた。(「文部科学省のグローバル人材育成推進政策に対する評価」より)

日本人留学生数は増加傾向にあり、平成30年度は対前年度比9,845人増の11万5,146人だった。留学期間別に留学生数を見ると、1か月未満が全体の67%を占め、1年以上は18%にすぎない。また、外国人留学生の数についても増加傾向にあり、(中略)日本人留学生数の2.7倍に上っている。(「留学生交流で見るグローバル人材育成の現状」より)

図表2 日本人留学生数の推移(2009年度~2018年度)

グローバル系大学の大多数が留学とオンライン交流のハイブリッドを模索

(前略)文部科学省が「スーパーグローバル大学創成支援事業」及び「大学の世界展開力強化事業」採択50大学に対し行った緊急アンケートによれば、80%の大学がポストコロナを見据えた新たな国際化戦略の策定を課題に挙げ、(中略)大学等のあるべき国際化の方向性について、8割超の大学が「実際の留学」と「オンラインによる交流」とを組み合わせた Blended/Hybrid プログラムへの見直しを模索していると回答した。(中略)これらの新たな取組の実施には解決すべき課題もあるが、コロナの時代におけるグローバル人材育成の推進に寄与するだろう。(「デジタルを活用した新たなグローバル人材育成の可能性」より)

コロナ禍転じてグローバル化の進展に期待

「コロナ終息後、感染症など地球規模の脅威に一致して取り組むべきとの認識が各国の間で共有されれば、グローバル化が進展する分野もあるのではないかと見る識者もいる。(中略)コロナの時代に蓄えられた未知の世界への知的欲求やエネルギーは、その終焉後、グローバル化を加速し、持続可能な開発目標(SDGs)への関心が高まる可能性もある。仮にそうなれば、日本でもそれに対応できる人材が強く求められよう。大学等においてデジタルの活用等により、グローバルに活躍する人材が多数育成されるよう期待したい」(「おわりに」より)

この論文発表から1年半が経過しているが、多くの大学では感染対策のもと対面授業を再開し、オンラインでの授業や留学も実施されている。デジタル機器とインターネットを活用することで世界中が同じ時間を共有し、距離の壁を乗り越えたのはコロナ禍での進歩であろう。さらに、新時代のグローバル人材教育は「語学力」「留学生」がキーワードとなりそうだ。2面からのICUをはじめとした各大学での取り組みを御覧いただきたい。