連載シリーズ 高等学校インタビュー② 宮崎県立高城高等学校|大学Times

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連載シリーズ高等学校インタビュー②
就職・進学どちらでも柔軟なサポートで希望する進路に導く~宮崎県立高城高等学校~

大学Times Vol.46(2022年10月発行)

連載シリーズ 高等学校インタビュー② 宮崎県立高城高等学校

「大学タイムズ」はメイン読者である高等学校の進路指導の先生方へ、独自の取材によるさまざまな大学情報をお届けして12年目を迎えました。2022年春号より、全国の大学で入試業務を担う皆様へ「高等学校の教育現場の今」をお届けする連載を開始し、この度の第2回では、令和4年度より学習指導要領の改訂があった「総合的な探究の時間」の授業で弊社発行の探究ワークブックをいち早く採用し活用してくださっている宮崎県立高城高等学校の進路指導主事・友納 惣一郎先生にお話を伺いました。

宮崎県立高城高等学校
進路指導主事
友納 惣一郎(とものう そういちろう)

生徒と教員の程よい距離感・のどかな環境で高校生のうちから好きな分野を深く学べる

宮崎県立高城高等学校は、1学年に普通科2クラス、生活文化科1クラス、職員40数名という小規模な公立の高等学校です。本校の特色のひとつである生活文化科は、平成29年に生活情報科を改編し、都城地区で唯一「家庭」の分野を専門に学べる学科となりました。学べる内容の特長から女子生徒が多い学科でしたが、最近は男子生徒も増えてきています。のどかな自然に囲まれた環境で、素直でのんびりとした生徒が多いですが、生徒は学びたいことや目標達成のために地道に努力できる芯の強さも持っています。小規模な学校だからこそ教員と生徒の距離が近いので、教員は各生徒の得意なことや苦手なことを把握しやすく、生徒にとっては学業だけでなく生活面についても相談しやすい環境です。

目指す進路に合わせた少人数制の授業
就職・進学どちらにも対応

普通科の生徒は3割が就職、7割が進学を目指しますが、生活文化科に至っては6割の生徒が就職を目指します。生活文化科では、ファッション系、栄養系、保育・幼児教育系、看護・医療系、福祉系の5つのコースから関心が高い分野を選んで勉強していきますが、検定取得に挑戦する意欲の高い生徒が多く、卒業までに保育・被服・フード・情報4つの検定で1級を取得する“4冠王”を成し遂げた生徒もいます。本校は、かつて生活情報科を有していたことからビジネス系の検定取得をサポートする体制も整っているため、普通科の生徒でも簿記検定やビジネス文書検定などを取得する生徒が毎年多くいます。普通科の生徒は分野にとらわれず工業、商業、福祉などさまざまな進路に進んでいますが、柔軟に対応できる人が多いと毎年企業からも期待が寄せられています。また、普段の国語、数学、英語の授業では、個人の理解度や希望する進路に合わせて勉強できるよう、学級の中でさらにクラス分けを行っています。生徒からは、少人数の授業だと質問がしやすいと好評です。

独自の「TKJタイム」では自主性を尊重
制度と環境の両面で誰もが学びやすい環境づくり

本校では6年ほど前から放課後の30分間を「TKJ(TAKAJO)タイム」と名付けて生徒の自主性を尊重した学びの時間を設けています。学力を伸ばしたい1・2年生を対象にした「発展ゼミ」、3年生を対象にした「各種講座」を曜日ごとに開き、資格や検定の勉強、授業で分かりにくかったところの学び直しや進学に向けて発展的な問題に取り組むなど、それぞれの進路実現に向けて有効に活用してもらっています。もちろんこの時間から部活動に励む生徒もいますし、時間の使い方は各生徒に任せています。また、学習環境にもこだわっていて、黒板の周りをスッキリさせて授業に集中しやすい環境を作る「フロント・ゼロ」をはじめ、誰もが学びやすい環境づくりにも力を入れています。そのような意識が学校全体に浸透しているところも本校の良いところです。

進路選択には進路ガイダンスで得た生の情報がポイントに

生徒たちは進路ガイダンスで出会った学校や企業を具体的な目標とすることが多いので、年間でできるだけ多くの学校や企業に接することができるようにしています。進路ガイダンスは、生徒にとって進路選択の手助けに加えて外部の大人とコミュニケーションを取れる貴重な機会でもあり、礼儀作法や質問の仕方など、学校の中だけでは学ぶことが難しいことも身をもって学んでいます。近隣の学校や企業だけでなく関西の方からもお越しいただけることがあり、教員にとっても大切な機会となっています。

また、進路ガイダンスとは別に、「TKJタイム」などを活用して、全校生徒が体育館に集まり専門学校などの模擬授業を受ける機会も設けています。近頃は理学療法と作業療法の違いの解説や、介護関連の体験授業を行いました。その甲斐あってか、仕事の大変さを理解した上で福祉系の中でも特に介護関係の仕事を志望する生徒が増え、人の助けになれることが楽しいと言う生徒も増えているので、情報をインプットする場を作ることは進路選択において重要だと実感しています。

生徒には自分で人生プランを立てられるようになってもらいたい
「総合的な探究の時間」はその準備に活用

本校に通う生徒には、「総合的な探究の時間」を通してライフプランを自分で描けるようになってもらいたいと思っています。そのためには我々教員が生徒の未来を預かっていると自覚して取り組むことも重要だと考えています。とにかく前例がない授業なので、まずやってみることを基本方針として、生徒たちが楽しんで取り組んでくれることを何よりも1番に考えて進めています。大学進学や進学後の研究を見据えた内容のワークブックが多くある中で、株式会社さんぽうの「探究ワークブック」では進学だけでなく就職を希望する生徒たちにとっても自分事としてとらえやすい内容になっていたため導入を決めました。

学習指導要領の改訂時には今の3年生はすでに進路実現に向けて動き出していたので、新しい形の「総合的な探究の時間」に本格的に取り組んでいるのは今の2年生からになります。実生活に即した学びとなるように、まずはこの情報社会で欠かせない情報収集の方法、正しい情報の見極め方や使い方などのいわゆるメディアリテラシーをこの1学期に学びました。これからアイデアの膨らませ方やまとめ方を学びながら実践し、年度末には発表を予定しています。今取り組んでいるのは、生徒たちが関心を持っている業界のリアルな課題を企業の方から聞き、解決するアイデアを出すこと。生徒たちは自分の好きな業界や将来働きたいと考えている業界について探究しているので、楽しそうに取り組んでくれています。

授業の中で失敗・成功どちらもたくさん体験してほしい

この「総合的な探究の時間」に思い切って挑戦することで成功体験を積んで自信をつけてもらうことと同時に、失敗の経験も積んでほしいと思っています。社会に出てから失敗を経験するよりも、授業の中で失敗した方が痛みは少なく済みますし、我々教員もフォローすることができます。人生プランという大きなものを考える予行練習の時間にしてもらえたら嬉しいです。今後は探究するテーマを学校の年間行事や校則、地域連携活動など高校生活の身近なことに広げていくのも面白いかもしれない、と考えています。