【看護・医療系特集】スペシャルインタビュー 日本赤十字社医療センター|大学Times

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看護・医療系特集スペシャルインタビュー
医療現場コミュニケーションの“中枢”
新型コロナ専用病棟看護師の活躍に注目

大学Times Vol.46(2022年10月発行)

【看護・医療系特集】スペシャルインタビュー 日本赤十字社医療センター”

看護・医療系特集

2020年、突如現れ世界中に蔓延した新型コロナウイルス感染症。多くの人が生命の危険と向き合い、社会生活を停滞させても感染拡大抑止の行動制限に協力したことは記憶に新しい。3年弱が経過した今日、当初より未知のウイルスに立ち向かった医療従事者はどのような思いと覚悟で幾多の困難を乗り越えてきたのだろうか。本特集では実際に医療現場の最前線で従事した看護師と臨床検査技師に取材し、“医療従事者の職業観”について探ってみたい。

日本赤十字社医療センター
看護師 栁澤 茉優(やなぎさわ まゆ)

愛知県出身 日本赤十字看護大学看護学部卒業後、日本赤十字社医療センター入職。呼吸器内科、外科、耳鼻科、眼科の混合病棟勤務ののち、2020年担当病棟が新型コロナウイルス感染症専用病棟になり感染症看護の最前線で従事。2022年7月より血液内科病棟勤務。入職6年目。
日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)
地域がん診療連携拠点病院、東京都総合周産期母子医療センター、東京都救命救急センター、東京都地域災害拠点病院など。病床数701、職員1674名うち看護職(看護師・助産師)928名在籍。

人と関わる仕事に興味を持ち看護大学へ進学

高校での進路選択は「人と関わる仕事がしたい」というのが希望でした。小学生で短期入院を経験し、看護師の方にやさしくしてもらった印象が強く残 っていたこともあり、家族とも相談して東京の日本赤十字看護大学を受験しました。看護大学の受験科目は大学毎に異なり特殊な形態をとっているので、過去問題を数年分しっかり解きながら出題傾向を分析し、対策を立てて毎日勉強したことが合格に結び付いたと思います。

大学の授業は教養科目に加え専門科目も大変多く、忙しい4年間でした。看護実習では現場の看護師に指導を受けながら初めて患者さんと関わり、今の実務に直結する学びを体験できました。グループで行動し一緒に学びながら、一人では辛いことも日々のディスカッションで共有し、先生方や相談できる仲間の存在に助けられて乗り越えることができました。

実習と実務の違いは専門職としての責任感

看護師として日本赤十字社医療センターに入職後、先ず感じたのは、“責任感の違い“です。学生の実習は患者さんのケアなど寄り添うことが中心でしたが、投薬や病状を知ることも重要な役割となりました。しかも一人で昼間は最大7名、夜勤では10名以上を看るため優先順位を考えながら時間単位で行動しなければなりません。初めは、目前の業務に取り組むことで精一杯でしたが、毎日少しずつ知識や経験を積み、今では勤務を開始する時点で一日の流れを把握し、優先順位を考えながら動くことができるようになりました。

仕事を一人で抱えない大切さ

医療現場は患者さんが急変することもあるので、時間通りに動けない場面も少なくありません。その時は他の看護師に協力を求めるのですが、一年目はスムーズに依頼することができずに注意を受けることがありました。一人で仕事を抱えて業務が滞ってしまうことで、患者さんや他のスタッフにも迷惑をかけてしまう可能性があるからです。先輩も後輩も遠慮なく、お互いに協力しあうことができるようにするために、日頃のコミュニケーションを大切にしています。

担当病棟が突如「新型コロナ専用病棟」に
業務フローを再構築し院内感染を防ぐ

2020年初頭、新型コロナウイルス感染拡大のニ ュースが始まって間もなく、当センターでは、横浜港停泊クルーズ船でのクラスター感染者を受け入れることになりました。その後、私の担当する病棟が新型コロナ感染症の専用病棟になりました。他の病院では各診療科からの混成チームで特別に対応しているところもあると耳にしましたが、幸いにも当センタ ーでは元々の病棟メンバーで対応することになり「皆でやるしかない、頑張ろう!」とチームワーク良く始めることができました。感染対策を行ううえで、今までの業務フローでは対応しきれないことが次々起こったため、看護師長をはじめ経験豊富な先輩方を中心に、皆で新しい仕事の方法や業務内容などの調整を行い、これまでのルーティーンを変えて業務にあたりました。初めは「何が正解かわからない状態だった感染対策」ですが、院内の感染対策本部とも連携し、一つひとつ確認しながら皆で意見を出し合い、感染が拡大しないように、努めました。

医療現場が逼迫すると毎日が災害現場のようになる

デルタ株の感染拡大時は若い人でも重症化する現実に直面し、ベッドを増やしても満床が続いて毎日が災害現場にいるようでした。精神的にも苦しい時期でしたが、カンファレンス(病棟内の会議)の時間に各々が感じていることなどを話し合って共有したことで、気持ちは楽になりました。また、感染拡大時は、日赤独自の救護員制度(大災害が起こると速やかにチームを編成し救護活動に向かう)によって他の病棟から救護員が来て、業務を支援してくれました。パンデミックという状況下で皆が慣れない仕事を行う中でも、同じ方向を向いて頑張れたことや、帰宅後の家族のいたわりにも日々救われました。

今年7月に異動となり、新型コロナ病棟から離れましたが、もしも次の感染拡大が起きた時は、今度は私が応援に行く側になります。この2年あまりで体得した知識や看護技能を活かし、より良いサポートが行えるようにしたいです。

感染対策はどこまで必要か
長期化するコロナ禍でのジレンマ

コロナ禍が長期化する中、医療現場の最前線で重症化する患者さんの状態を知る看護師として、長い間外部との「感染に対する意識の差」に戸惑うことがありました。

医療者は自分が感染しないことはもちろん、患者さんに感染させないことに非常に気を付けています。これまでの経験から自分は徹底した感染対策が取れるようになりました。その経験を新型コロナ専用病棟以外から支援に来てくれるスタッフに対しても伝え、正しい感染対策が徹底できるよう自発的にサポートし、院内の感染対策に取り組んでいます。また、日常生活においても、感染の機会を減らすため自主的に行動を制限して過ごしています。しかし、社会全体の動きとしては「新しい日常」へと変化し、徐々に行動制限が解除されていく世間と意識の差を感じることもあります。

看護師に興味のある高校生へ

看護師になりたい!という思いから、実際に看護師として働き始めるとそのギャップに気づき、初めは大変に感じることがあるかもしれません。先輩や同期と支えあいながら、まずは一通り仕事を覚えるまで頑張り、苦難を乗り越えることができれば、次第に視野が広がってきます。そのうちに患者さんとの関わりから自分自身の看護観に気が付く時がくると思います。そうすれば忙しさの中にも「楽しさ」や「やりがい」がみつかるでしょう。看護師に興味のある高校生は「こうあるべき」と気負わず、自分らしい働き方を見つけてみてください。